【脳直】妄想上の女の子②(続)
年上の女の子(続)
女『はぁ〜あ〜…』
おれ『……』
女『はぁ…結局、こんな時間まで終わらなかったわね』
おれ『…申し訳ありません』
女『もう会社出たから敬語使わなくたっていいわよー。でも、まさか終電になるとわねー』
結局、彼女の言葉でやる気(ヤル気?)が出たおれだったが、気合いが実力を凌駕するのはスポーツの場面がほとんどであって、業務の進行にはあまり影響がなかった。
しかも、必要な資料を紛失していたことにいまさらながら気づき、今夜の段階ではこれ以上手がつけられなかった。明朝、関係各部に掛け合い資料を再入手し、再び作業に入らなければならない。もちろん、他部署に負担をかけるのだから、上司である彼女が頭を下げることになる。嫌味のひとつやふたつ、みっつよっつくらい聞かされても文句は言えない。
女『はぁ…明日はまず部長に報告でしょー?○○の課長に謝罪してぇ、げ!‼□□のオバハンのとこも行かなきゃじゃん!?ほんと、なんであたしがこんな目に遭わなきゃならないのーって感じ?きみにわかりますかー?』
おれ『(嫌味の数がハンパない…)はい。本当にすみませんでした』
女『これっきりにしてよねー。ほんとに頼みますよー』
おれ『精進します。ご迷惑おかけしてすみま…ん?』
女(ジーっとおれを見つめる)
おれ『どうしました?』
女『だ•か•ら!もう敬語なしって言ったじゃん!』
おれ『あぁ、つい。で、どした?』
女『な〜んでこんな男好きになっちゃったんだろーって思って』
おれ『(それはおれが聞きたい)…だな』
女『あ、やだ!なに?凹んだ?』
おれ『そんなんじゃないけど…』
ほんとはそんなんでもあった。
どうしてこいつがおれのこと好きなのか、全然わからない。セクハラから救った?いやいや、それを上回るダメさを見せちゃってるだろ。顔?ん〜フツメン。性格?ドネガティブ。モテる要素ゼロって感じだもんなー。
おれがこいつを好きな理由は簡単。
一目惚れがきっかけだけど、良いことも悪いこともはっきりと言うこの性格が気持ちいいからだ。
女『部下としては仕事が遅いし、彼氏としては頼りないし』
おれ『うん』
女『特にタイプって顔でもないし、お金持ちのお坊っちゃまってわけでもないし』
おれ『…うん』
女『好きになりそうな要素探せって方が難しいよねー』
おれ『……うん(やべ、泣きそ)』
女『でも…奥さんになってもいいなって思えた相手はあなたが初めて』
おれ『…へ?』
女『だって、あなたなら、私より長生きして、私が死んじゃうとき看取ってくれそうじゃない?(笑)』
おれ『……おい…』
女『あなたなら、私が死んじゃうとき泣いてくれそうじゃない?(笑)』
おれ『おい!笑うとこじゃないだろ!』
女『ははっ、や〜っぱり怒った〜(笑)普段大きい声なんて出さないのにー』
おれ『当たり前だろ!死ぬとか、簡単に言…うみゅ』
女(人差し指でおれの唇を塞ぐ)
女『あなたが一番、私に死んでほしくない、私のそばにいたいって思ってくれてる。それがわかるから、だからあなたが好きなんだよ?』
おれ『…そんなこと…』
女『当たり前?でもそう思われてるんだって、あたしを安心させてくれたのはあなたが初めて。だからあなたの奥さんにならなってもいいの』
おれ『(やべ、別の意味で泣きそ)…』
女『だから!仕事もしっかりやってくれないと困りますからね!!』
おれ『…う、うん』
女『わかればよろしいっ!…って、こんな話してたらあなたの家の方面、終電なくなっちゃった…』
おれ『え!?あ、ほんとだ…』
女『ちょ、ちょ、ちょっと!時間くらいしっかり見ておきなさいよね!』
おれ『(話してたのほとんどお前じゃ…でも嬉しくて時間忘れてたおれも悪いか)…ごめん』
女『どーするのよ!あー、あたしの方もギリギリ!しょうがない!ウチに泊めてあげなくもないけど!?』
おれ『(さっきまでの可愛い感じはどこへやら)じゃあお言葉に甘えて…』
女『だったらさっさと走る!終電いっちゃうよ!』
おれ『はい!(結局、職場でもプライベートでもおれは敬語だな)』
改札から社内まで全力で走り、なんとか間に合った。彼女の顔が若干赤く染まっているのは、息が上がっているせいだろう。それにしても赤すぎるような気もするが…
女『ねぇ?』
おれ『どした?』
女(超上目遣い&キョロキョロ)『あ、あなたが終電逃すように、あたしがさっき、わ、わざと話し込んだんだとしたら…怒…る?』
おれ『え…?』
女『だ、だって、記念日だし、1人でおウチいたくなかったから…』
おれが彼女を好きな理由。
なんといってもやはり、このツンデレがたまらないからだとは、言わないでおこう。
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