体調悪い老人の声…【日奇「街」九回目】
私の住む街
ジメジメじめじめ。太陽の光が眩しく、その光が白いタイルに反射し、前を見るのすら憚れる。日傘を差しても光が前を阻み、足取りは重くなる。
光の中を歩いていると、隣を小さな子どもが勢いよく走ってきた。走ってくる子どもにぶつからないように、身体を少し横に反らす。そのまま後ろに振り向くと、子どもは交差点に向かっていた。
「ママ信号変わっちゃうよ!」
母親らしき人は、歩く速度を少し上げ、子どもに追いつく。
「急いだらだめよ。車来るから気をつけなさい」
柔らかい母親らしき人の声に、子どもは頬を膨らませながらも、彼女の元をへ戻っていった。
視線を元に戻すと、白いタイルの反射とは違い、鋭く銀色に光る缶を持つおじいさんが少し先の花壇の縁に座っていた。缶にはストロングゼロと書いてある。
喉を鋭く、鈍く震わせ「がーーーっ!!」と声にもならない大きな音を出し、痰を白いタイルは吐き出した。
近くにいた、茶色いハンチング帽を被ったおじさんは、ストロングゼロに話かけ、その場から2人は移動した。
その2人は、近くのコンビニの駐車場へ行き、更に3人の老老男女を仲間に加え、計5組の老人会が誕生した。
炎天下の中、全員タバコに火をつけ、大関、大関、ストゼロ、発泡酒、発泡酒と大宴会が開催された。飼い犬も連れている老婆は、タバコの煙がいかないようにリードを引っ張るが、意図が伝わらず老婆の隣に座っている。
コンビニの正面には幼稚園があり、周りの喧騒を無視するかのように、可愛らしい装飾を施した壁に囲まれている。壁の裏には、太太しい木々が植えてあり、花壇には色とりどりの花が植えてある。その周りだけはゴミが丁寧に取り除かれ、正面にいる邪悪な何かを隔絶するような、神秘的で神聖な場所に感じた。
老人がタバコに火をつけ、昼間から酒をくらう。子どもたちは見てみぬふりをしながら、園内から出てくる。
園内から出てくる親子は、笑顔で話ながら自然と煙から遠ざかる。子どもが持つ赤い風船は、その煙に燻されていた。すると、子どもが通りすがる野良猫を見つけ、手にもつ風船の紐を離してしまう。
あっけにとられる子どもと親。天高く登る風船。響き渡る痰を吐く音。太陽と風船が重なりあい、タバコの煙が風船を包み込む。この街の象徴するように、子どもの鳴き声が聞こえてきた。
混沌の老人と、開闢の子ども。それを見守る仕事なき男。
それが私の住む街です。
メモ抜粋
株価大暴落
ぽちぽちは死語なのか?
2回切り替えられた俺、すごい。
体調悪いって電話で離している老人の声がめっちゃでかい。俺より元気だろ