深掘り・楽典講釈
音大受験に必ずある筆記試験「楽典」
しかし、その内容は、例えば「音楽中学」を受けても「難関音楽大学」を受験しても内容は一緒!?
つまり、中学受験のために勉強している小学生と高校生または浪人生が受ける入学試験の受験科目・内容が同じと言うこと。こんな試験科目、「数学」や「英語」など一般の勉学の世界には存在しない。
なので、出題する方からすれば実は大変難しい。
「楽典」と呼ばれる範囲は実は狭く、音楽を勉強している者ならどこかで必ず触れている内容。なので、普通の問題を出題すれば、一流校では、ほぼ全員が100点を取ってしまうので、試験を実施する意味がなくなってしまう。だからといって、これ以上難しい問題を出題したくてもできない。内容そのものの難易度を上げられないので、仕方なく嫌みな質問方法や解答方法になる。作問の本質から言えば、離れていく。
「楽典」の範囲をもう少し広げて「通論」という音楽領域がある。
これは「楽典」の内容に加えて、「和声」「対位法」などの書法や音楽形式、つまり「楽式」まで範囲を広げている。
こうなると「和声」ひとつとっても、膨大な海原が広がる。そのひとつだけでも、取得には数年かかる内容。また、その学習は受験生に非常に負担がかかる。
なので、簡単に「音楽通論」を出題範囲にするわけにも行かない。
こうした問題を打開するために、かなり前から東京音楽大学では「音楽常識」を楽典の中で出題してきた。
たとえば、「移調楽器」や「邦楽器」など、音楽家の常識として知っておいてもらいたいものを出題している。ただ、そこにはひとつ問題点がある。それは、その楽器専攻の受験生にとっては有利になることで、公平を期す入学試験では最適な出題とは言えない。
最近の東京藝術大学音楽学部の入試では、大きな設問ひとつ分が、これまでの「楽典」とタイトルする書籍には解説がない分野を出題しはじめている。たとえば、はじめは「ドリア旋法」を問う出題された。
こうした新しい分野の出題は、「旋法」などの音楽の歴史的な意味や、「振動比」など音楽の原理そのものについての設問が多い。そして、毎年、その内容は奥が深まっていく。
つまり、最初の年は「旋法を書かせる」問題が。次には、与えられた楽譜の旋法を答える問題になり、さらには楽譜の「finalis」を答える問題と次第に深まっていく。
ここでは「フィナリス(フィナーリス)」という歴史的な用語を知っている必要がある。調査をしてみると、東京芸大附属高校では授業でこの「フィナリス」について触れている。その科目は「音楽史」。
となると、そんなに広く学習しなければならなくなるのか?
そんなことはありません。「音楽史」は出題範囲でないので、聞かれるのはあくまで「楽典」に関わる内容。それでも、範囲は広くなり、一般的な楽典の本では歯が立たない。
そこで、この記述を思いつきました。
まずは、難関音楽大学受験生の「楽典」対策として。
次の役割としては、すでに音楽と関わった仕事をしている方。特に、教えている方に、これまでの知識をブラッシュアップしてもらうため。
さらに、音楽を「聴く」、「演奏する」音楽愛好家のため。実はもっとも音楽に関する知識量が多いのは音楽愛好家の方々です!!
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