サウンド、ビジュアル、そして光のコントローラーとしてのKAGURA ~相対性理論【証明III】での事例~
2017年6月17日に東京・中野サンプラザホールで開催された相対性理論のライブ『証明III』。そのパフォーマンスに新たに取り入れられたオーディオ/ビジュアル・3Dコントローラ「YXMR Ghost ”Objet”」(ヤクシマル・ゴースト・オブジェ)の基幹機能にしくみデザインが開発する新世代楽器「KAGURA」が取り入れられました。「KAGURAって何?」という方はまずは公式サイトをご覧いただけるとうれしいです。簡単に言えばKAGURAは「AR技術を用いて体の動きでパフォーマンスができる楽器」です。
今回のパフォーマンスで用いられたのはあくまでも「YXMR Ghost ”Objet”」で、KAGURAそのものではありません。なので私たちがその詳細に触れることはできません。ただKAGURAの視点から語れる範囲で、今回のパフォーマンスを支えた技術的な側面を少しご紹介しましょう。
まず「YXMR Ghost ”Objet”」(ヤクシマル・ゴースト・オブジェ)とは何か。相対性理論の公式サイトではこのように説明されています。
今回新たに登場した「YXMR Ghost ”Objet”」(ヤクシマル・ゴースト・オブジェ) は、3Dカメラ画像処理によるユーザー・インターフェースを備えた空間操作の次世代音楽ツール「KAGURA」の基幹機能をサウンド、ビジュアル、光の3種の3Dコントローラとして導入し、チューンアップしたやくしまるオリジナル・システム。
相対性理論『証明III』やくしまるえつこオリジナル新装置「YXMR Ghost ”Objet”」(ヤクシマル・ゴースト・オブジェ)登場、衣装写真も公開(相対性理論公式サイト)より
これまで数多くのアーティストとKAGURAはコラボレーションしてきましたが、今回の相対性理論とのコラボレーションはこれまでのものとは少し趣を異にするものでした。
今回KAGURAはサウンド、ビジュアル、そして光を統合してコントロールする「YXMR Ghost ”Objet”」の基幹機能を提供しました。具体的には楽器というより、MIDIをコントロールするアプリケーション(MIDIコントローラー)として採用されたということになります。
サウンド、ビジュアル、そして光を統合的にコントロール
まずはサウンドについて。ステージ上で生み出される音を触るように、やくしまるさんの動きによってエフェクトやフィルターを操作できるようにしました。
単にDAWのパラメータを操作するだけなら、従来のMIDIコントローラーを使えば実現可能です。ただバンドのヴォーカルが下を向いてコントローラーのつまみを操作することはパフォーマンスに適切とは言えません。しかしKAGURAを用いればヴォーカルのパフォーマンスを邪魔することなく、サウンドコントロールを行うことができます。
次にビジュアル。今回初お目見えしたKAGURAのビジュアルエフェクト機能が「YXMR Ghost ”Objet”」に実装されました。ライブレポート写真の中でスクリーンに映るやくしまるさんの姿はKAGURAの操作画面を投影したものです。別の機器を用いてエフェクトをかけたものが投影されているわけではありません。
そして最後に光。今回はKAGURAの出すMIDI信号を舞台照明のコントロールに用いられるDMX信号に変換。やくしまるさんの動きによって照明機器がコントロールされる演出が行われました。照明スタッフの皆さんの演出に加えて、ステージ上でのインタラクションを加えた形での照明演出は、開発スタッフとしてはもちろん、一人の観客としても印象に残るものでした。
以上がサウンドとビジュアル、そして光を統合的にコントロールできる「YXMR Ghost ”Objet”」のバックエンドにあるKAGURAの基幹技術のご紹介でした。
KAGURAとなにかをつなぐ
KAGURAはサンプラーに例えられることも多いのですが、今回の事例はそのイメージを超えるKAGURAの可能性を示すものとなりました。KAGURAは単独で動作するアプリケーションとしてだけではなく、MIDIを通じて手元にある機材やDAWとの組み合わせによってその可能性を拡張することができます。そしてKAGURAがコントロールできるのはサウンドだけはありません。今回の照明のコントロールのように、音以外の要素をKAGURAのインターフェースを使って操ることも可能です。
KAGURAは「なにかをつなぐ」ことで可能性を広げることができます。ぜひKAGURAとMIDI対応の楽器やDAWをつなげてみてください。KAGURAのMIDI連携機能はKAGURA Proの無料体験版でも使うことができます。ユーザーマニュアルもぜひ活用してください。従来のワークショップより実践的な内容を取り扱うセミナーの開催も予定しています。
これまでさまざまなミュージシャンがKAGURAを使ったパフォーマンスを行ってきました。その度に私たちはパフォーマンスが最高のものになるよう、可能な限りのサポートを行ってきました。
ただ今回のパフォーマンスのために相対性理論のメンバーやスタッフの皆さんと取ったコミュニケーションは、サポートというより今後の開発につながるフィードバックという性質が強いものでした。そしてそのフィードバックは今後のKAGURAの開発の方向性を示す大きな道標となっています。現在も楽器としての完成度をさらに高めるために開発は続いています。今回のパフォーマンスで用いられたビジュアルエフェクト機能の一部は、近日中にリリースされるKAGURA Proのアップデートとして提供できる予定です。
『証明III』のライブレポートは多数の写真とともに相対性理論の公式ウェブサイトやCINRA.net、Billboard JAPANなどに掲載されています。ぜひこちらも合わせてご覧ください。
相対性理論公式サイトのライブレポートでは最後にこう締めくくられています。
「YXMR Ghost ”Objet”」は今後もバージョンアップを続けていきます。
KAGURAは今後も引き続き「YXMR Ghost ”Objet”」のサポートを続けていきます。
(KAGURA チーフエンジニア 中茂久也、KAGURA サウンドエンジニア 河野正樹)