見出し画像

【第四回】キーパーソン・バトン あつみゆりかさん

昨今のSNS時代、自己発信も重要になり「自分自身のポートレートが欲しい!」というニーズが高まり、撮影会社である株式会社シキラマにも多数お声が集まるようになって参りました。

そのニーズにお応えするため、ポートレートをはじめご自身のSNSなどでも発信できるように、インタビューを組み込んだ企画でございます。インタビューの最後に次のキーパーソンをご紹介いただき、毎月連載でご紹介させて頂こうと思っております。


4回目となる今回は、SoZo株式会社 代表取締役、あつみゆりかさんにご登場いただきます。
あつみさん、よろしくお願いいたします。

プロフィール
SoZo株式会社
代表取締役 あつみゆりか氏
※会社情報は
こちら


これまでの経歴

古賀
では早速ですが、あつみさんのこれまでのキャリアについて簡単にお話しいただけますか?

あつみ
Web関連の会社、グッドウィルの子会社に新卒で入社しました。そこで1年ちょっと働いていたんですが、結婚して子供を授かり、当時は今ほどワークライフバランスなんて考えられない時代で、仕事を続けるのは難しいと感じて、25歳の夏頃に一度専業主婦になりました。それから28歳の4月まで、約3年間専業主婦をしていました。

その間に2人の子供を産んで、下の子が1歳になったタイミングで保育園に入れることができて、私が27歳の時に夫が立ち上げた会社に復帰しました。企画職として復帰するのですが、正直言って全然うまくいかなくて、私が企画したサイトはぜんぶ不発みたいな感じでした。出産前は営業だったんですが、その頃は何度も社長賞をとったりしていて、自分はもっと仕事ができると思っていたんですけど、20代後半の3年のブランクは予想以上でした。そこからもがき苦しむこと5年ぐらい。

古賀
30代前半は苦労されたんですね。

あつみ
はい。32歳くらいのときに、大人の上質ウェディング『CRAS(クラース)』というウェディングメディアを立ち上げることになり、そこで責任者を任され、少しずつ自分がイメージする仕事の中身とパフォーマンスが合ってきたタイミングでした。

でも、その矢先に3人目の子供を授かり、『CRAS』の責任者を辞退し、出産後は営業のマネージャーとして復帰しました。当時、営業チームが組織としてかなり厳しい状態だったので、立て直して欲しいとマネージャーになったんですが、マネジメントが全然できませんでした。

古賀
それは大変だったでしょうね。

あつみ
はい。でもそこから何とか立て直すことはできたんです。営業も半年で3倍の売上を叩き出せるようになっていましたし、メディアとしても年間2000件の集客を達成するなど、関東エリアでの影響力を高めていきました。でも、不運なことに、そのタイミングで東北大震災が起こったんです。市場の空気が一変し、楽婚やスマ婚といったリーズナブルなウェディングサービスが台頭してきて、もう上質だの高いの嫌だみたいな空気に市場感が変わっちゃったんですね。その結果、上質を追求した『CRAS』の需要が急激に落ち込んでしまったんです。

そんなタイミングで社長である夫が、私とメディアをマイナビに売却する決断をし、スタッフを連れて移籍をしました。マイナビでは初代編集長に抜擢されましたが、編集長って言っても、何でも屋みたいなもので、メディアの構築もやるし、リニューアルの企画もやるし、リスティングの打ち合わせにも出るし、営業同行もかなりやっていました。

マネジメント教育や、組織作り、営業フォーマットの整備など業務も多岐にわたり、本当に基礎を作っていった感覚です。
それでもなかなか予約数は伸びなかったので、今度はサイト全体の数値分析に取り組みました。その結果、契約式場向けに作った『マイナビウエディング徹底活用ガイド』という教科書を作ったことが私の中では大きくステップアップする成功体験でしたね。

ベンチャー時代は、自社のエンジニアも抱えてたから、ある意味朝令暮改が許される環境でした。たとえばシステムの機能改修一つとってもすごい頻繁にできるんですよ。
でも大企業マイナビでやろうとすると、「いや、1年半後ね」となる。「じゃあ予約数どうやって伸ばすの」と八方塞がりになった時に、契約している結婚式場側の入稿内容を最適化するしか伸ばす方法がないんですよ。

イメージは楽天に出店している企業向けのノウハウを教える「楽天大学」っていうのがあるんですが、まさにそれを作ろうって思ったんですね。
結婚式場のマーケティング担当者はほとんどがプランナーと兼務。毎日忙しい顧客対応を抱えながら、メディアの入稿作業を行っています。そうすると反響のあるメディアの優先順位が高くなり、新参メディアだった当時のマイナビのメンテナンスは、どうしてもおろそかになるんですよ。だからこそこっちが主導して反響が出るノウハウを提供して、少ない労力でも結果が出る!という証明をしなくてはいけないと考えたんです。そんなトライをしながらマイナビという会社で3年で基礎を作り、コンバージョン数も移籍したころと比較したら約50倍に成長しました。

その時に、気が付いたんです。これって1メディアの問題ではないなと。結婚式場の担当者が、ブライダル専門のマーケティングを学ぶ場所がそもそもないからこうなってるんだな、と。

ブライダル業界の広告出稿料って他業界と比較してもPLにおける構成比は非常に高いんです。その原因はメディアのせいもあるけれど、一方で結婚式場側にマーケティングの専門家がいないことが根本の課題なんです。多くの結婚式場ではマーケティング担当を「入力担当」と呼んでいました。つまり頭脳ではなく、労働力としてみてるんです。そんな状況を変革したいとブライダル業界初のマーケティングスクールを作りたいと考えるようになって、起業を決意しました。

今のお仕事

古賀
それがSoZo株式会社の設立のきっかけだったんですね。
会社設立はいつ頃ですか?

あつみ
2015年の12月に設立し、実際の活動は2016年の初めからスタートしました。来年で10年目に突入します。

古賀
マイナビウエディングの時の成功体験によって、起業できるって思ったことが独立された理由なんでしょうか。

あつみ
もちろんそれもあります。それと、大企業が単純に合わなかったんですね。企業は当たり前ですが、所属する組織が繁栄することがビジネスとしての正解になっていくじゃないですか。でもベンチャー育ちの私は、青臭いかもしれませんが「世の中こう変えてやろうぜ!」みたいな旗印に燃えて、仕事してきたんですよ。マイナビ時代は管理職ということもあって、社内向けの仕事をする時間もどんどん多くなってました。それが苦しかったんです。

またマイナビの中では新しく課長になる人を自主的に集めて、課長研修を勝手に開いていました。多くの企業では、本当に現場で使える研修が不足しています。
それを提供するっていうことは私にとってすごい喜びだなと思ったんです。自分自身が専業主婦から這い上がってきたっていうところもあるから、これは人生のテーマだなという風に考えるようになりました。

古賀
結婚式場へのノウハウ提供と、マイナビの中での研修を通して、学ぶ機会を作ることが、ご自身の人生のテーマだと気づかれたんですね。

あつみ
そうです。ビジネスパーソンの中には学ぶ意欲がある人でも、適切な場がなくて困っている人ってすごく多いと思うんです。ブライダル業界では、ブライダル専門のマーケティングに関する教科書がなかったっていうことが、学びにくさに繋がっていたんですよね。実は、これは氷山の一角で、世の中にはそういった学びにくい分野がたくさんあるんだろうなと考えました。大手研修会社では網羅しないニッチだけど、困っている。そんな分野を見つけて学習コンテンツとして提供することを会社のミッションに掲げたんです。うちの会社では『人の学びを科学する』というキャッチフレーズを掲げていますが、まさにそれです。


古賀
会社設立からこれまでの歩みを、簡単にお話しいただけますか?

あつみ
まず最初に取り組んだのは、ブライダル業界向けにマーケティングを学ぶ場所を作ることでした。最初は通学型のスクールを立ち上げたんですけど、あまりうまくいかなくて。人材の選定が難しかったり、学んでもすぐに会社自体を辞めてしまったりと、なかなか多くの人に継続的に参加してもらうのが難しかったんです。それで、eラーニングにシフトすることにしました。実はコロナが流行する2年くらい前からeラーニングに取り組んでいて、それが大手企業にも導入され始めていたんです。ブライダル業界って全国に事業者が散らばっているので、オンラインでの学びがちょうどフィットしましたね。

それと、コンサルティング業務も順調に伸びていたんですが、コロナの影響でブライダル業界が完全に止まってしまい、このままでは会社が立ち行かなくなってしまう、という危機を迎えました。

その時に、今までのノウハウを他の業界にも応用できないかと考えて、SDGsの研修事業に注目したんです。競合のサービスを調べてみると多くのカリキュラムで『ウミガメが絶滅します』みたいなビジネスと直接関係がない内容が溢れていて、ビジネス現場で働く人たちにはピンとこないのでは?と感じたんです。それで、ビジネスとSDGsを結びつける教科書を作るべきだと考えました。大手企業は、コロナ禍でも動きがある。ブライダル業界一本で教育ビジネスをやってきた会社をもっと大きな市場で勝負するチャンスだと考えて、eラーニングの開発に取り組みました。今では1万8000人の方に利用されていて、さらにドコモgaccoとの提携も決まったんです。

古賀
それは言っても大丈夫な内容ですか?

あつみ
大丈夫です。ドコモgaccoというドコモのユーザー向けに学びを提供するサービスがあり、法人向けサービスとして提携することになりました。また、IT業界向けにも「営業の仕組み化」に関するコンサルティング事業を新たに立ち上げました。例えば急成長した企業って営業スタッフの人数を増やしても、売れるのは結局数人だけってことがよくあるんですよ。私がマイナビでやった営業の型作りを参考にして、そのノウハウを教科書化し、コンサルティングの一環として提供しています。

分野が違っても共通しているのは、どこかにあるノウハウを人が学びやすい形に切り刻んで提供することです。それがうちの会社の強みであり、私たちが掲げていることです。

古賀
なるほど、確かに分解して体系化して、効率的に進めるのが得意ですもんね。

あつみ
そうなんです。そこが私のビジネスの強みです。

古賀
本も出版されるそうですが、どんな本なのでしょうか?

あつみ
読書術の本で『今度こそなりたい自分になる!1冊まるごと「完コピ」読書術』(PHP研究所)というタイトルの本です。

古賀
読書術!どんな内容なんですか?

あつみ
従来の読書術は多読や速読が主流でしたが、この本では1冊から徹底的に学ぶという新しいアプローチを提案しています。実際に私が実践してきた方法なんですが、もともと専業主婦だった私が社会復帰して、営業部長になった時にマネジメントに苦戦しました。その時にもしドラ (もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら/岩崎 夏海 著)をチーム全員で徹底的に学んで完コピしていったんです。その結果、半年で売り上げが3倍になりました。それがこの読書術を編み出すきっかけになったんです。

古賀
どんな人に読んでもらいたいですか?

あつみ
20代から40代の方に特におすすめです。何冊読んでも変われないと感じている人や、本を読みたいけど読みきれない人にピッタリです。現代のビジネスパーソンは忙しいですから。1冊で良いというのはタイパ(=タイムパフォーマンス)としても最高だと思うんですよ。

古賀
最近は本を読むのが苦手な人も多いですからね。たくさん読むより1冊に集中する方がいいのかもしれませんね。

あつみ
そうですね。私は完コピするべき本を『師匠本』と呼んでいます。その本をいかに自分のものにして、実際に行動に移すかが大事なんです。その点にフォーカスして具体的なノウハウを書いているところは他にないんじゃないかと自負しています。

古賀
それは面白そうですね!!

あつみ
ありがとうございます。ぜひ読んで感想を教えてください。


一番記憶に残っている仕事

古賀
これまでのお話を伺っていると、何度かお仕事の中でパラダイムシフトがあったように感じました。特に一番記憶に残る仕事って何かありますか?

あつみ
自分のブランドをどう作るかみたいな話でも大丈夫ですか?

古賀
大丈夫です。

あつみ
それでいうと、スクールの立ち上げと自分の業界での立ち位置作りが大きなポイントでした。私にとっての勝負は、業界誌3誌で連載を取ることでした。いくら教えたいことがあっても、みんなが興味を持ってくれる内容にするためには、自分の権威を高める必要があったんです。そのために連載を取りに行ったり、公の場での活動を積極的に行うことが重要でした。

その結果、業界団体で講師を務める機会も増えましたし、ブライダル業界の中で『ウェブマーケティングならSoZo』というポジションを取れるようになったんです。それが自信になりましたし、その経験があったからこそ、後にSDGsやセールスの型作りといった新しい事業にも挑戦できたんだと思います。私の事業はよく『飛び地』って言われるんですけど、業界が違っても基礎がしっかりしていれば応用が効くという自信があります。

古賀
最初からブランディングを意識していたことが、その後の活動をスムーズに進める助けになったんですね。

あつみ
そうですね。いいものを作るのは当たり前なんですよ。それに加えてブランディングも同時に進めることがポイントだと思います。多くの人は、事業を形にすることで精いっぱいになりがちですが、両輪で進めることでスピードアップできますし、苦しい時期を短くできます。それに、人前で発表する場があると、自分もより真剣になって磨きがかかります。例えば、来週の大きな団体での講演に向けて、どうすれば聞いてくれた人に満足してもらえるかを常に考えているんです。そうすると、自然と自分も高みに引き上げられていくんですよね。やっぱり自分を高みにどんどん連れて行くには両輪なんですよね。


今後について

古賀
それでは、今後2〜3年の間で達成したいことについてお聞かせください。あつみさんは現在、本も書かれているようですし、仕事における目標などがあれば教えてください。

あつみ
もう決めています。これからの10年間は著者として生きていくと決めました。本を書くことをライフワークにしたいんです。

古賀
10年でどのくらい本を書く予定なんですか?

あつみ
まだわかりませんが、1年に1冊は書けたら最高ですね!つまり、10年で10冊を目指していきたいです。