デザイン基本解説 〜デザインの和訳は「意匠」でいいのか?〜
デザインの意味をGoogleで調べてみた。まぁ、間違いではないのだけれど、これは随分と狭い意味でのデザインだなぁと思う。
デザインという言葉を聞いたとき、多くの人は「何か形あるものを設計する」というイメージを持つのだろう。けれど、デザインという言葉はもっと広義な意味を持つ場合がある言葉だ。
形を作らないデザイン
「UXデザイン」という言葉がある。
UXとは、「User Experience」のことであり、サービスや製品を通じて、そのユーザーが「体験する事象」をデザインするということだ。
突然「体験のデザイン」なんて言われると少しイメージしずらいかもしれないが、例えばAmazonをイメージしてみよう。
かくいう私も日頃からAmazonのお世話になっているわけだが、冷静に考えてみると、Anazonは製品を作ってユーザーに販売することを主な収入源としているわけではない。
では、Amazonは何を売っているのか。それは、ありとあらゆる商品を手軽に購入し、家に届けてくれるという「体験」を販売しているのである。
「体験」を設計し販売する。
こうなってくると、デザインはもはや目に見える「形」を作っているのではないことが分かるだろう。
では、デザインという言葉を説明する上で、上記の「設計。図案。意匠。また、製品の機能や美的造形を考慮した意匠計画。」という説明はいささか不十分であるというわけだ。
デザイン=形を作るではない
じゃあデザインって何?
デザインは、確かに「形あるものを設計し、作ること」でもあるのだが、先述の通り、形を作らないデザインも存在する以上、より広義のデザインの定義を用意してやる必要がある。
では、広義のデザインとは何なのか。
これ以上いたずらに結論を先延ばしにするのはよろしくないので、先に本記事の解答を言ってしまおう。
すなわち、デザインとは、問題解決の方法全般を指す言葉である。
これだけ豊かになった世の中でも、人類が抱える全ての問題が解決されたわけではない。
むしろ、現代社会には問題が山積し、その数は減るどころか増える一方であるように見える。
現実はユートピアではないし、現実がユートピアになることはおそらく今後ないのだろう。少なくとも私が棺に収まって彼岸へ渡るまでに、全ての人が、全ての不安・不満から解放された、真の意味での理想郷を見ることは叶わないと思う。
そうした目の前に転がった様々な問題を再定義し、それらを解決するためのアプローチが「デザイン」というプロセスだ。
デザインを見るということ
全てのデザインは何かしらの課題・問題を解決するために生み出されてきた。
それはかつてアインシュタインが人類最大の発明品だと称した「複利」という金融のビジネスモデルから、街の片隅に貼られた、色褪たアドヴァタイズメント1枚に至るまで、全てだ。
デザインを批判的に見るという行為は、そのデザインが生み出されてきた「目的」の部分に焦点を当てる行為であると言っていい。
ふとあなたが駅広告を見かけたとしよう。
そのデザインに「かっこいい」「ダサい」などどんな感情を抱こうが大いに結構だが、
デザインの本質を見るならば、その広告の最終的な見た目や、中に書かれた情報≒「意匠」の部分に触れるだけでは不十分だ。
デザインを見て、評価するには「このデザインはどのような目的で作られたのか?」という部分に目を向けてみることが重要なのである。
例えば、見かけた駅広告がイベント開催を知らせるポスターならば、そのデザインが作られた目的は当然集客のためだ。
イベントの存在を多くの電車を利用する人々に周知させ、楽しさや感動をより多くのユーザーに提供する。そして、その対価として多くの金銭的報酬を得る。そのために、そのグラフィックは生みだされたのである。
デザインを理解するためには、その前提を理解した上で、そこからもう一歩踏み込んでそのデザインについて考えてみるのだ。
「では、このデザインはどんな人に何を伝えたいのか」と。
デザインは、余程のエゴイストか馬鹿か、素人が作ったものでない限り、そのデザインが届く先にいる人のことを意識して作られている。
だから、そのデザインが「そのように作られた」背景には、制作者の無数の意図が交錯しているのだ。
例えば、広告に興味を持ってほしい人の年齢層は?
性別は?
その人はどんなものが好き?
利用シーンの時間帯は?
イベントに来るときのシチュエーションは?
(1人なのか、友人や恋人、或いは家族と一緒なのか?)
そのイベントのどんな部分をアピールしたいのか?
などなど、他にも考えられることはいくらでもある。
制作者の意図を分析してみると、一見ダサいものであるように感じられるデザインであっても、実はそれが自らをターゲットにしていないものであったり、意図して「ダサさ」を演出するためのものであったりすることに気付くことがある。
例えば、親しみやすさや、価格の安さなんかをアピールしたいときにはよくある話だ。
そこまでデザインについて思慮を巡らせて初めて、我々は「デザインを見る」ということができるようになるのだ。
「デザインをはじめる」ということ
というわけで、今回はデザインとは何か、デザインを見るということはどういうことかという基本的な解説記事を書いてみた。
基礎的な内容なので、デザインを生業にする、或いはデザインを学んだ読者にとっては既知の内容だったかもしれない。
ただ、基本的だからこそ大事なことだし、デザイナーは皆これを知っているし、
そして、基本的なことすぎて改めて記事にされることのない内容なのかもなと思い筆を取った。
「これからデザインを触ってみたい」「いつかデザインが出来るようになればいいなと思う」なんて読者には是非知っていてほしい。
そして、デザインとは何かを知った上でデザインに触れてみてほしい。それはとても素敵なことだから。
今後またデザインのお話をすることもあると思うので、よければまた見てね。
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