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stay gold
そのニュースに目を疑った。
『Hi-STANDARD恒岡章さん死去』
僕のルーツはPUNKと公言していて、そのきっかけがHi-STANDARDだった。当時中学生。バンドが流行っていてとりわけビジュアル系バンドが盛り上がっていた。GLAY、L'Arc〜en〜Ciel、LUNA SEA、ザ イエローモンキー、X JAPAN、hideが僕らの中心だった。当然僕も全部聴いていて特にhideに傾倒していた。なぜハマっていたかその理由は後に知る事になる。
そんな時いつもの様に地元の新星堂でCDを見ていた。そこに並んでいた新譜がHi-STANDARDのMAKING THE ROADだった。どのCDもカッコ良いビジュアルに仕上げてある中でこのポップなアートワークは異質だった。僕はこの名前も聞いた事もないアーティストのCDを手に取りレジに行った。これが人生初めてのジャケ買いだった。当時中学生だった自分にはCDアルバムは高額だったが何故か迷いは一才無かった。
自宅に帰りCDラジカセにセットして爆音で鳴らす。
“そして世界は変わった”
衝撃だった。爆風に吹かれた気分だった。こんな音楽が世の中にあるんだと。
今まで聴いてきた音楽はどことなく世界観が作られており舞台を観ているかの様なイメージを漠然と持っていた。そこにきてこのHi-STANDARDというバンドは世界観なぞ作らず直球でメッセージを力一杯に叩きつける様だった。究極に簡潔だった。
音作りで言えば空間系のエフェクターではなくガッツリ歪み系の一本。そしてシンプルな構成。曲はほぼ3分以内。当時のポップスはTVタイアップの兼ね合いなのか5分前後が基本だった様に思うが、そういう商業のしがらみも関係なく奏でる音楽は当時の僕にとって『自由の象徴』を感じさせたんだと思う。そして何よりも“圧倒的に”カッコよかった。
そこから急カーブを高速で曲がるかの様に「PUNK」に舵を切ることになった。そこからは様々なPUNKを聴いた。popパンク、スカコア、青春パンク。オールドPUNK、グランジ、日本海外年代問わず手当たり次第に聴いた。
すると面白い事に気がついた。PUNKとは“音楽のジャンルじゃない”という事だ。PUNKとは“生き方”の事だった。そしてこれこそが僕がPUNKを好きになった理由だと気がついた。
前述したがhideにハマった理由もコレだった。ガッツリビジュアル系のレジェンドだけど根底にはPUNKの血が流れている。当時のインタビューなど探すと解る事だがThe Clashに影響され中でも2ndのGive 'Em Enough Ropeを愛聴したという。当時にあってデジタルとアナログの二面性をRockに融合させようとする試みや、しがらみや固定概念をブチ壊すzilchの活動などからもPUNKの精神を感じさせた。
ただ、それでもhideは「僕はロックを切り裂いたりぶち壊したりするけど決して足を向けて寝れない」と話した。これは本当に本質だと思う。何にでも当てはまる真理だと思う。敬意は捨てない。誠実である事。人として生きるにこれほど重要なことがあるだろうか。
そして話を戻すとツネさんには一度お会いした事がある。とあるラーメン屋さんだった。
僕は来る事なんて知らなかったから心底驚いたし本人かどうか疑って周りをキョロキョロしてた。普段ならこんな事にならない。仮に有名人に会っても声かけたりもしない。ただ、僕にとってハイスタは紛れも無くヒーローそのものだった。僕の血肉となった音楽を創造し表現した、その人だった。たまらず声をかけて挨拶させて頂いた。もはやどんな風に声を掛けたか覚えていないが
〝恒岡章と申します〟
そう丁寧にお答え頂いた事に人柄の全てが詰まっていた。心の優しさが溢れ出していた。そして僕はシンプルに嬉しかった。
そんなことをふと思い出したのでここに記してみた。
月並みの言葉だけど、心の中で生き続ける。そう思うと心も鎮まる。
どうか安らかにお眠りください。
僕らのヒーロー。
合掌。