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昔在籍していた会社のヤクザみたいな上司の話。

まず僕は「イエスマン」ではない。

間違っていると思ったらどんな人でも立場でもお臆せず伝えるし、正しいと思った事も主張する。

今でこそ伝え方は当然考えるが過去これによって居場所を追いやられた経験もある。

昔いた会社は当時中小企業でこじんまりとしたアットホームな会社だったが在籍して2年目くらいに他の会社に吸収される形で合併する事になった。

それは上場企業だった。

その際、吸収した側の会社役員の一人が丁寧にも一人一人に挨拶回りをしに来た。

この会社は上場企業だったのに末端一人一人に挨拶をしに来るのは中々に凄い事なのだが当時の自分にはそれがよく分からなかった。

いや、正確にはそれ以前に来ていたある社員の態度が非常に高圧的だったせいで僕はかなり苛立っており全員を敵視していた。

そんな事があったので内心穏やかでなくその役員の挨拶の時もトゲのある態度をとっていたし、その更に上の専務まで来た歓迎会に僕は遅刻し(クレーム処理で遅くなっただけ)会場に入ったその瞬間に、50人近くいる全員の前で「イマイぃぃ!!!」とその役員に大声で怒鳴られ会場が一気に静まり返った事もある。

とはいえ緊急業務で遅れた事を他の社員から聞いたのか、端の方で食事をしていた僕に寄ってきてその役員は謝罪をした。

それからだと思う。この人なら信用できると思ったのは。

それ以降も定期的に巡回に来ては全員に声をかけ、またある日は新入社員の入社一日目がやるような仕事を現場で手伝ったり、また実績を作った時は食事に連れて行ってくれた。

そういう組織だったからか非常に活気があったし、何より仁義の人なので当時ネット上で炎上してしまった社員を庇う事もした。原因は単純ミスだったが事実は誇張され悪意を持った拡散がされていた。その事に対し「俺が守るから安心しろ」と全員宛にメールを打ったことに勇気づけられた社員も多かったと思う。

そしてある日、その人が長く見ていた僕らの部門を異動で離れた。それからだった。

組織は徐々に荒れていった。

強引な売り方で利益を上げていた人が評価されるようになり、また気に入らない人の悪い噂を流し人事評価を落とそうと暗躍する人や、意図的に情報を落とさない事で人の足を引っ張るという事をする人も現れ始めた。それを派閥を組んで集団で行う事もあった。

当然その頃には退職者が相次ぎ、この部門は縮小していった。

まぁこういうのは会社でよくある話といえばそうかもしれない。

逆に言えばそういう事をさせない存在でいたその人の力は凄いと思う。だから僕は在籍当時この人を目標にしていた。

しかし、そんな人が先月退職したとの噂を聞いた。定年ではない。

聞く話によると家族が亡くなったとの事で憔悴してしまい痩せ細ってしまったそうだ。溢れ出す熱意とエネルギーを燃料に仕事をしていた様な人だったから、そのエネルギーが切れてしまったのだろう。実際に華々しい学歴があるわけではなく成り上がりで剛腕の人だった。しかし移動後は苦戦しているとも聞いていた。

ちなみに、その会社を冒頭で上場企業“だった”と過去形にしたのは既に上場廃止になっているからだ。

僕が退職後も良い噂は聞かなかったが、この事に今思うのは「組織としての文化や理念が破壊された」事が大きな要因だと想像している。上層からモラルが破壊されてしまっていた。

個の利益「だけ」を追いかける様になり、それは会社ではなく部門、部門ではなく部、部ではなく課、最終的に「一個人」の利益の追求。

利益のベクトルが本来ある姿から逆向きになっていた様に感じる。平たく言えば「自分だけが良ければいい」そんな空気を感じざるを得なかった。

この流れのウネリの中にあって強い人であっても一個人では弱い存在になってしまうよな、そんな風にいま思う。

また互いに元気な姿で再会したいと、僕は密かに思っている。

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