第12回毎月短歌 個人的5選(『毎月短歌の本 2024年 7月号』掲載分)
はじめに
第12回毎月短歌(『毎月短歌の本 2024年7月号』掲載分)の全ての現代語短歌に目を通しましたので、「いう人」として個人的に印象に残った短歌を5首紹介し、感想を付記しておきます。完全に短歌素人の意見ですので、見当違いなところもあると思いますがご了承ください。なお、「いう人」というのは投稿された短歌の中から気に入ったものを発信する人のことを指します。詳しくは下記のWebページを参照してください。
個人的5選
葬式のプレイリストと君が呼ぶ曲が全曲快晴すぎて/あきの つき
この感性はすごいなあ、と素直に感心した歌でした。言われてみたら確かに、自分の葬式に悲しい歌流したくないかもしれないですね。「葬式のプレイリスト」というフレーズも、死を想起させるのにポップさがあって口ずさむと心地よさがあります。
まだしばし生きるつもりで今日もまた一番奥の牛乳を取る/宇井モナミ
日常のちょっとした動作を、上手に生死に絡める言葉の巧みさはさすがの一言。太宰治の『葉』の冒頭、「死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目しまめが織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。」これを思い出しました。ニュアンスはちょっと違うかもしれませんが。
もう咲いた? いや遅れてる 三光年離れたきみとわけあう桜/小仲翠太
テーマ詠「光」より。まず「光」という単語をそうやって使うのか! という意外性があります。「三光年」というのは死者との距離の比喩でしょうか。なんにせよ新鮮さに溢れていて選ばずにはいられない歌でした。
三日月と目を合わせてはいけないようちでは飼ってあげれないでしょ/琴里梨央
どうやったらこんな素敵な歌が思い浮かぶんですか!? 月を家で飼うっていう着想が本当にいいです。それに三日月ってなんかつい見ちゃいますよね。
すりガラス越しの世界が本当であればいいのに輪郭が邪魔/睡密堂(すいみつどう)
連作「麦茶を作れ」より。これも思わず溜息が零れてしまうほど素敵な歌でした。世界はちょっと遠目で、ぼんやりと見えるくらいがちょうどいい。細部が見えない方が綺麗。分かる気がします。
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