在宅勤務時代。仕事と生活を切り離すために、1Rマンションを買った話
まず最初に。自慢ではないです。
僕は今でも「金銭的には間違った選択」だと思ってます。
コロナ禍で急遽始まった在宅勤務。手探りだった春は、とにかく仕事を進めるだけで手一杯でした。自宅環境は一軒家で、人間は僕とパートナー。そして猫が二匹です。コロナ前は、広告業界勤務者の多くがそうであるように、僕も殆ど寝に帰るだけ。フリーランスで元々自宅での作業も多かったパートナーに広い個室を、寝るだけの僕は一番小さな部屋に荷物だけを置いているという状態で、この部屋にはエアコンも状況的に設置はできないのです。
パートナーとの関係は良好です。突然の在宅勤務はリビングを使わせてもらっていますが、配慮もしてくれるし、「気にしなくていい」と気遣いもあり本当に感謝しています。このまま仕事をリビングで進めていく事も出来なくはないのですが、夏くらいから僕自身が「ちょっとしんどい」と思っていました。リビングで集中するのは難しく、作業は出来ますが企画業務や、込み入った話題の会議や面談などには向いていません。その上猫がいます。猫にはこちらが仕事しているとはわからないので、絡んでくるタイミングをコントロールはできません。その上、自宅と仕事場が同じ場所である事が僕には合っておらず、このまま続けていく事に限界を感じていました。
会社が契約しているシェアオフィスもあるのですが、他社の人も同じ空間に居るとなると、仕事の性質上やはり使いづらい。その上、結構頻繁に「利用者様のコロナ感染について」なんてメールが届きます。元々会社を辞めたら、シェアオフィスか、もしくはマンションを借りるかして、やりたかった事をやる空間をなんとかしないといけないな…とは考えていたので、真剣に検討を始めてみました。
コロナが流行してしまったので、シェアオフィスはあまり無難ではないと考えた僕は、次にワンルームマンションの賃貸と購入を比較しました。この辺りは結構人気のある住宅地でバブル期あたりに建った一人用のマンションが結構あります。1Rだと5〜6万円が相場で、5万円だとしても年に60万円、もし仮に10年借りたら600万円です。
え…それなら、もう既に底値になって価格が大幅に落ちる事がないマンションを買った方が、使わなくなったら貸したり売ったり出来るし、経済的ではないだろうかと考えました。(首都直下型地震などが来て壊れたら大損ですが、その時は仕方ないですね)会社を辞めた時に退職金で買う案も考えていたので、計画の前倒しです。
そこで、今住んでいる駅、左右の駅辺りまでの範囲でネットで検索してみましたが、夏には適した物件が全然ありませんでした。売りに出されている物件はあるにはあるのですが、基本『オーナーチェンジ物件』です。つまり今は賃貸に出していて居住している人がいる状態です。今すぐ購入しても使う事は出来ない物ばかりです。もしくは新耐震基準法以前の物件。「うーん…買うなという天の声だな」と、諦めて自宅で働く事にしました。
諦めたつもりだったのですが、冬になって再び「やっぱりまた耐えられない。このままあと1年この業務をやるのは無理だ」になってしまいました。12月が近づいた頃、年末だから物件が出ているかもしれないと思い、改めてネットで調べてみたところ、空室で売り出されていて価格が手頃な物件が3件もありました。その内の1つが気になったので、資料請求だけはしようとネットで申し込んだところ、1分で不動産屋さんから電話が掛かってきたのには驚きました。
そこからはかなりトントンと話が進んで、全物件見せてもらったのですが、結局最初に気になったところを年末に契約しました。本当に昭和時代の1Rで、実家を出て最初に借りた部屋のようです。「懐かしいな」「初心に戻ったな」という気持ちになりました。大規模修繕も終わったばかりで積立金も安いし、売りに出すにあたって前オーナーである別の不動産屋がリフォームもしてくれていたのでキレイです。カーペットはツライので自分でフローリングにしなくてはならない事以外は特に気になるマイナスポイントもありません。自宅から徒歩15分で駅を挟んだ反対側、つまり駅を通るので、途中で珈琲や食糧などの買い物なども出来ます。
不動産屋の担当氏は「最初に話を聞いた時には、買う気50%くらいかと思ったんですが、意外にもすんなり迷わずに買っちゃいましたね」と言ってましたが、確かにそうかもしれません。「もう耐えられない」が二度目だったし、会社を辞めた後にも場所が必要な事は在宅勤務で明白になりました。でも「バカな事してるよな」と自覚しているので、高揚感もないのですが。
リタイアした先輩や、フリーランスや起業した元同僚たちがよく言うのは「会社員の毎月一定額の収入があるというのはすごい事で、それが無くなると『お金』を考えてしまう事が増えた」とか「常に安い方を買う」「定期がなくなると交通費ですら惜しい」などなど。それを思い出した時に、会社を辞めてからでは、僕もお金の心配が先に立って、きっと買えないだろうと思ったのです。それにいつまで生きるかわからないので、先のお金の心配をするよりも、生きたいように生きようとも考えました。どうにもならなくなったら、また何かして稼げばいいんです。
今週末にやっとフローリングのリフォームをしてもらえるので、来週から入れることになりました。あと1年は会社の仕事をやるための部屋ですが、無事に卒業できたら、広告とは違うことをやりたいと思っています。広告のクリエーターも「作品づくり」を生業にはしていますが、それはあくまで「クライアントさんのための作品」で「自分が作りたいもの」とはイコールではないのです。辞めた後は僕自身が作りたいものだけを作るという期間にしたいと思っているので、その部屋を「アトリエ」と呼んでいます。
作品づくりにスッと気持ちが入って行かれるのに適した、快適なアトリエにしたいなと思っています。さて、この選択が良い方向に転がってくれるといいな。