貸金庫という別世界をゲットした話
みなさん、コロナ前は通帳や印鑑・実印、証書や、あと人によっては不動産の権利書などはどこに保管されてましたか? 僕は会社デスクの鍵が掛かる引き出しに、こっそり保管していました。自宅は寝に帰るだけだったので、銀行も会社の最寄りの支店。自宅がある駅の銀行には口座すらありません。長年そのスタイルで来ましたが、リモートワーク が主流になって、それらを自宅に持ち帰った時に「僕が突然死んだりした時のために、一度ちゃんと整理をして…そうだ、貸金庫を借りるってどうだろう」と考えました。
そもそも貸金庫って超富裕層や商売をやっている人のためのもので、サラリーマンの貯蓄額に必要なものかと言われたらきっと「NO」です。とは言っても僕にとってはそれが全財産で、失ってしまったら困る大切さに於いては金額の大小は関係ありません。そして…多分これが一番大きな理由なのですが、金融業界出身の父が貸金庫を使っていると聞いていたので、なんとなく借りてみるのも貴重な体験かなと思ったのです。
でも簡単には借りられませんでした。メインバンクの支店が自宅駅近くにあったので、まずはフリーで訪れて貸金庫が借りられるか聞いたところ、受付で「空きがないんです」とお断りをされ、他行さんにもあたってみましたが、徒歩圏内では全て同じ答です。「えー、そんなに競争率の高いものなんだ…」と一旦は諦めました。
そこで終わったと思っていたのですが、その数ヶ月後に転機が訪れました。
12月に少し大きめの金額を動かす事になり、自宅近くのメインバンクさんに行ったところ、手続きのついでに金融商品の売り込みをいただきました。生活能力が低い僕は、何もせずに普通口座にただ入れているため、前から時々勧められていたのですが、いつも「興味ないので結構です」(本当はただ面倒くさいだけ)とお断りしてきました。金融商品を買っていると振込手数料タダとか特典があるのもわかっているのですが、タスクを増やしたくなくて、今回もそれと同じ流れでお断りしました。
お断りした後に雑談で「貸金庫をお借りしたいなと思って少し前にお尋ねしたんですが、空きがないんですね。順番待ちとか申し込めないんですか?」と聞いたところ、行員さんがなんとも微妙な表情に。その後に、言葉を濁しながら遠回しに話してくれた話を僕なりに解釈すると、どうもこういうことだったようです。
・貸金庫は借りたい人が多く、でも数に限りがあるので全員には貸せない
・一度借りた人は亡くなったりする以外は解約しないので回転もしない
・空き待ちの申し込み等は受け付けていない
・ただ満室ではない。若干の余裕はある
・金融商品など多様なお取引があるお客様に限らせていただいている
「あー……なるほど。人気商品だから『特典』的な運用をしているんだ」となんとなく伝わったので、その前にご紹介いただいた金融商品のどれかを買えば借りられますか?と次のボタンを押してみました。すると「担当に空き状況を聞いてみますね」と、扉が開いたのです。結果的に運用の自信がゼロなので、元本割れのない個人向け国債とのバーターで、貸金庫を借りられる事になりました。なんてオトナの世界!
後日、鍵などの用意ができたタイミングでまた銀行に行き、使い方の講習を受けました。
以下の流れで使用することができます。
・貸金庫室の入り口に、カードを入れて暗証番号入力
・貸金庫室が開いたら、中に個室があるので空いている部屋に入る。
・またカードを使って暗証番号入力
・僕用の金庫がバーチカルで降りてくる(かなり待つ)
・鍵を使って開ける
・鍵を掛けて「終了」ボタン
・金庫がバーチカルで去っていく
金庫がずらーーーっと並んでいる部屋のようなものを想像していたのですが全く違いました。
最初の方にも書きましたが、「そもそも金庫を借りるほどお金があるの?」と聞かれれば「NO」なのですが、この体験自体がとても楽しかったです。貸金庫を使うシーンをどこかで書く事があれば、シズル感のある文章/絵コンテになると思います。
※「うちで借りられたとは言わないでくださいね」とお願いされたので、銀行名支店名は記載していません。