⑤小説(ファンタジー)編:エントリー作品のご紹介 #ひかむろ賞愛の漣
こんにちは。ひかりのいしむろ店主のあゆみです。
石と言葉の #ひかむろ賞愛の漣 のエントリー作品のご紹介、第五弾をお送りします。このnoteでは、特にファンタジーな世界で描かれた小説を集めました。
(どこからどこまでファンタジーなのか?は曖昧なものですが、私個人の主観で分けさせていただきました、何卒ご了承ください。m(_ _)m)
詩歌もエッセイも素晴らしく、しかし石と小説の相性って本当に良いですね.... こんなにたくさんのアメジストを作品の中に見ることができるとは思いませんでした。石が登場するものも、しないものも、それぞれきらめきを放っていて。石と言葉のひかむろ賞を実施したことで宝石箱みたいな世界を覗かせていただいたと感じています。
①詩歌編
②お手紙編
③エッセイ(家族系)編
④エッセイ編
⑤小説(ファンタジー)編(このnoteです)
⑥小説(その他)編
↓全てのエントリー作品はこちらから
コンテストの結果については全てご紹介した後に別途発表させていただきます。
それでは、どうぞ!
小説は、千羽はる賞(小説賞)を担当いただいている千羽はるさんと私二人からのご紹介コメントでお送りいたします。
(以下、千羽はる→千、光室あゆみ→あ)
《サンプル作品》ナナハムラサキを追って(千羽はるさん)
鉱物と人の魂を重ね、世界の慈愛と人の慈愛を二人の人物で描かれている、愛の奥行きを感じられる物語でした。
巫女のカラヌは、人ならぬ大きな愛を保持できる、しかし人としての愛情もあり..... "僕"との出会いはきっとカラヌにとっても幸せだったのだろうと感じます。(あ)
僕は、ぞわりと背筋が興奮で粟立つのを感じた。
今、彼女の背中に「世界」が委ねられている。
大いなる自然の望みを、あまねく人々の望みを、彼女はその小さな口から歌にする。
優しい波に守られて(百瀬七海さん)
心の中にある過去に戻れる不思議なところ「cafe 心象風景」。命の重さは愛になり、人を強くさせてくれると教えてくれる物語。(千)
七海さんの贈る、優しい波のタイムトラベル。喜びも悲しみも、変えがたいことも、ゆっくり受容していくプロセスを共に。(あ)
"cafe 心象風景"は、普段はどこにでもある海沿いのカフェだ。
だけど私は、年に何度か、カフェの窓から不思議な風景が見えるようになった。
その日だけは、ご来店されるお客様は、たったひとりだけ。その風景と同じしおりを手にしたお客様だった。
One(おもちさん)
私たちが忘れたもの。地球の呼吸。
この物語は、忘れてしまったものを取り戻させてくれる気がする。(千)
全ての命が石に変わり、一つになる。有機物も無機物も飲み込む悠久の物語。どこかの次元からこの物語を引っ張りだし、言語化されたおもちさん、本当すごい.... MVになってほしい壮大なドラマ性を感じました(あ)
命が次々と石化していく中で、私は恐れを感じなかった。
Time To Heal The Earth(りりかるさん)
地球が癒される時間と、失われた時間の話。
私達は大いなるものと繋がっていた……否、繋がっていることを、教えてくれる物語。(千)
永く地球を見守ってきた海亀ナターシャと、代々続く海の女性たちの美しい物語。アメジストには、高貴な慈愛の炎のエネルギーと、超古代文明アトランティスの記憶を封じられた。この物語を読んで涙するとき、きっと私たちは記憶の中を旅している。(あ)
世界がアメジスト色に包まれる瞬間。
その一瞬は、
遠い昔、失われてしまった「バイオレット・フレーム」が地球を癒やしている時間だと云う。
【短編】そして彼女は今でもそばにいる(七屋糸さん)
誰よりも強い愛を持っていた人の中に生まれたものは、たとえ何があっても、愛した人の胸に、今も輝く。(千)
人生の終わりに背骨の継ぎ目を侵食する鉱石、"鉱石症"。誰が悪いわけでもない、恋愛模様で彩られた男女三人の思いがしみじみと伝わってくる大人のファンタジー。浸ってしまいます...(あ)
「この間の検診で見たら二カラットくらいの大きさになってたし、余命もあと少しだと思うのよね」
「もうすぐ雨が振るわね」と天気の予想でもするように自分の死期を話すので、俺は黙ってコーヒーを啜ることしかできなかった。
種族の違いを超えて(ゆーまるさん)
互いが友と思えば、互いが信じ合えば、そこに互いを想う慈愛が生まれる。(千)
種族間の争い渦中のうさぎと殿カエルが共に旅路を歩む冒険譚。主人公うさぎの殿カエルへの猜疑心が溶けていく様子に静かな感動が広がります(あ)
「何奴!?」
私は話しかけてきたその正体不明な者に刀を向ける。
よく見ると、なんとそいつはカエルであった。
しかもただのカエルではない。幾度となく死闘を繰り広げた、殿カエルであった。
花を葬る(ぴぴぷるさん)
静かに燃え上がる、花の葬送。
静謐で深遠な世界に呑まれ、読み終わってもなお、耳の奥で花が燃える音が聞こえる。ぱちぱちと。(千)
パチリ パチリ。行き場を失った花は、水をかけられ鮮やかに"燃える"。
人は人の記憶の中で生き続けるかぎり死なないと聞くけれど........愛を丁寧に扱うプロフェッショナルな男たちの物語。(あ)
土に花を置き、ジョウロから水をそそぐ。やがて花は色を手放すように燃えはじめる。赤い花は赤い火、青の花は青の火となって、あたりを照らした。
[短編]二月の国(アイウカオさん)
緻密だからこそ美しい風景描写、そして現れる光の世界に、息を呑む。
透明でありながらも光り輝く世界の風景が、余韻のように心に残る(千)
住んでいるのは子どもだけ。透き通ったクオーツェたちと紫色の彼のお話。"2月"から脱出したあともその胸の内には愛がきっと。ラストの世界線に震えます。(あ)
彼はほほえんで言った。
ー僕はね、ここを出て探しに行ってみようと思うんだ。
ーなにを?
ーきみが言っていた、僕らしさが何処にあるのかを。
ミカエルリヒト(月面サナトリウムさん)
とても、美しい物語だった。
文字を読むと、美しいピアノの伴奏が聞こえた気がした。
残るのは、淡い紫の色。それはきっと、涙の色。(千)
"大切な人のことを、忘れてしまう病"。忘れてしまう悲しみと、忘れられない苦しみと...大切に思う気持ちと。やわらかい光と鮮烈な光につつまれた、どこまでもやさしい物語でした。(あ)
「……大切にしている人のことから忘れていくんだ。忘れてしまったことすら、思い出せない病なの」
か細い少女のような声は届き続けている。
「ミシェル。そういう話は聞き飽きた。僕のこと試して遊んでいるんだろう?」
小説(ファンタジー)編は、以上になります。
素晴らしい作品を寄せていただき本当にありがとうございました。
読み逃していた作品がありましたら、ぜひ開いてみてくださいね。
次回で最後の作品まとめになります。
どうぞよろしくお願いします!
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