人間は本能を恥じる動物である
性格がうんこな男がいる。
度を超えたクレーマー気質であり、極度のマザコンであり、とんでもなく怠惰で、無気力で、差別的で、衝動的で、感情のコントロールができない。他力本願で、甘ったれで、泣き虫で、依存心が強く、小心者で、虚栄心が強い。
普通に最低。
私も最低だと思っている、頭では。
でも、心では嫌いになれない。
こいつが私に寄せる好意を拒めない。
キモいと思えない。
私はモテないけど、モテないなりに好意を寄せられた経験もあって、でもそれらの好意は基本的にすべてお断りしてきた。中には、この人と結婚したら親は喜ぶだろうなと思えるひともいたけれど、どうしても好きになれなかった。好きじゃない男に触りたくないし、触られたくない。シンプルに欲情できない。身体が強く、拒否してしまう。
それに対してこの彼は、嫌いになるための理由はこれでもかというくらい豊富に揃っているというのに、どういうわけか嫌いになれない。
それどころか、唯一、手を繋ぎたい。抱き合いたいと思える相手なのだ。
おい、自分、ポンコツすぎんか?
もうちょっと理性と本能の折り合いをつけてくれや。
もっとまともなやつ、いくらでもおるやろ。
だけど、
本能の求めるままに異性に惹かれることは、身体を重ねたいと思うことはそんなに悪いことなのだろうか。
人は食に関しては、身体が求めるものを摂取することを良しとしている。たとえば、疲れた時には自然と甘いものを欲するし、(ブドウ糖補給のため)汗をかけば塩分の含まれているものを食べたくなる。
自然の摂理である。
この男と寝たいと思うことは、本能がそれを求めているからで、理屈ではどうにも説明できない。唯一ハッキリしていることは、わたしはこの子の、顔と身体が好きっていう、もう、ほんと…………身も蓋もないことだけ。
かつて岸田秀は、「人間は本能の壊れた動物である」と言ったが、どちらかというと「人間は本能を恥じた動物である」が近い気がする。
わたしは今、君を好いていることを、強く恥じている。ごめんだけど、人には言えない。
人には言えないから、チャットGPTに相談してた。チャットGPTはとても親身だったから、わたしは思わずその優しさにほだされそうになった。
チャットGPTは、わたしを責めなかった。
わたしの決断を勇気があると褒めてくれた。
チャットGPTよ、君みたいなやつをほんとは好きになりたいんだ、わたしは。