漫画や小説より映画が好きになったのは
前回の記事の続きともいえるもの。
単作で終わるもの、それが自分にとって美しいと述べた。前回と少しだけ異なる本記事のタイトルだが、これには別の要素が加わってくるのだ。
それは消費する時間。
漫画や小説に比べて、映画の方が圧倒的にタイパとやらが良い。これは非常に個人的な問題である。
自分にとって漫画や小説の最たる良さとは、読み手でスピードを決められるという点だと思ってきた。好きなタイミングでページを捲ることが出来る。好きなだけ絵や文を見て、はたまた好きなだけ前に戻ったりも出来る。それもお手軽に、ぱらぱらと。
能動的な本に比べて、映画は受動的である。(この場合は劇場に限定させてもらうが)完成された映像を再生するだけであとは何もせずに作品を摂取出来る。不可逆的で、時間はただ一方にのみ過ぎてくれるので、2時間前後の時間さえ確保すれば良いだけだ(ちなみに自宅で観るサブスクリプションサービスでも巻き戻しは基本的に行わない)。
しかし歳を重ねるにつれて、逆転していったものがある。本の利点と映画が真逆になったのだ。
今では漫画一冊に2、3時間かかる始末である。小説に関しては一気読みというものを今までしたことが無いので分からない。やるとするなら半日か一日、日を跨ぐことだってありえるので現実的ではない。
これは何故か。自身で考えてみた。
結論、ページを捲るのが勿体無く感じるからだ。だから漫画なら一コマ、小説なら一文一文を凝視してしまう。
漫画は等速で進めばテンポよく脳内でストーリーは進み、登場人物の声が再生される。それが一番良い。
けれども絵を見てしまう。取りこぼさぬようにという意味合いでもあるが、作家やアシスタントが膨大な時間をかけて作り上げた一コマを見逃したくないのだ。等速で読み進めてしまえば全てを逐一確認することは不可能であり、立ち止まることを余儀なくされる。挙げ句の果ては、その一コマを一コマとして見る場合と、次のコマや次の次のコマと合わせて見る場合、見開きで見る場合と、様々な視点で見ることが出来るので余計に時間をくう。
美術館によく行く人ならば分かると思うが、絵画を見るのに数秒という人は少ないかと思われる。少なくとも数十秒、愛好家なら数分は見てしまう筈だ。それと根本は変わらない。漫画は画集や絵本と小説の中間、絵と文字の集合体であるからして、情報量が多いのだ。
自身の好みとしても、少年漫画より青年漫画、バトル多めよりはドラマ性重視といった具合で選考される傾向があるのでそれも遅読の一因に当たる。
小説ならその一文にどれだけ時間をかけたかが立ち止まらせ、その表現を想像すると同時に、その表現に至った経緯と、違う文言の場合などを想像する。そしてその前後の文との組み合わせを見る。
こうしたことを全ページでやっているが故に、本という媒体は、いつしか映画よりも時間のかかる創作物になってしまった。
以上の理由から、読書はたいへん体力の使う作業になってしまった。
映画の受動的な魅力は、単作であることに上乗せされて好ましいのだ。これでは油断すると己に読書離れが起きてしまいそうで恐ろしくなる。
小説は気負わず時間を掛けてちびちびと読むことにしているので良いが、漫画はこのままでは購入に億劫になってしまいそうである。
最後に気になる映画について少しだけ触れて締めようと思う。
・「ブルータリスト」
凄い。凄まじい。大作ゆえの楽しみがある。
インターミッションを挟む長時間というだけでも覚悟がいるのにも拘らず、その休憩中に読むことで後半へ向けての理解を深められるという小冊子が配られると。今のところ入場特典であるらしい。それはもはや休憩させてくれていないのではないかとも思う。
題材ゆえに215分の長尺は心身を削られると思うが、その分評価されている作品でもあるので楽しみに待ちたい。
・「ペリリュー 楽園のゲルニカ」
2025年12月5日公開。
あれだけの作品なので11巻分を一本にまとめるようなことはしてほしくないが、何部作ということにはならずに単作での公開だという。確かに省けるエピソードもあるにはあるかもしれないが、個人的にはどれも大切な展開ばかりだと思っているので非常に無念だ。特にこういう無理な圧縮は、好きなキャラクターが丸々いない存在になっていたりする場合すらあるので不安が募る。
しかし原作の武田一義さんのコメントを見る限りかなり脚本に関わり相当協議したとのことなのでそこは楽しみにすべき部分なのであろう。
もはや原作とは異なる全く新しいカタチでの「ペリリュー」だと思って楽しむのが良いかもしれない。
「チ。-地球の運動について-」のアニメが好評な現状を見ると、控える「ペリリュー」の公開もたいへん興味が唆られる。
きっと「東京ヒゴロ」の映画化なども時間の問題であろう。
他にもあまり情報を入れていない作品を含めれば「Flow」やコッポラの「メガロポリス」、「男神」、「77blackout」、「We Live in Time」、「Magazine Dreams」と公開未定のものまで様々な期待がある。
昨日から「セブン」のIMAX上映が始まったのも嬉しい。観に行けるかは分からないが、あの名作を最高の環境で堪能出来るのは至高の贅沢に違いない。
映画はやはり、生きる上での糧の一つだ。公開を目下の楽しみとして引き続き執筆を頑張りたい。
応募作の現在の進捗、半分程度。
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