渡辺徹さん追悼「ラガーよ、私たちはあなたにどれほど勇気づけられたかを知っている」
また、一人の偉大な俳優が旅立たれました。
「太陽にほえろ!」でデビューされた渡辺徹様が先月お亡くなりになりました。
心より、ご冥福をお祈り申し上げます。
私は、俳優・渡辺徹さんのファンなので、哀悼の意味を込め、このブログを書かせて頂きたく存じます。
☀『太陽にほえろ!』でデビュー
私がこのブログを立ち上げてから、既にお二方の「太陽ー!」新人刑事役の俳優さんがお亡くなりになっております。
お二人の時にも追悼のブログを書かせて頂いておりましたが、今回も書かせて頂きたく存じます。
冒頭の写真の新聞記事にもありますように、渡辺さんは七代目新人刑事ラガーこと竹本淳二役でデビューされました。
この「淳」と言う字……この字は奇しくも萩原健一さんが演じた、初代新人刑事マカロニこと早見淳 刑事の「淳」からとっているのは明らかです。二代目の「淳」と言う意味ですね。
それほど渡辺徹さんへの期待が高かったことをうかがい知ることができます。
ちなみに、この竹本淳二 刑事は設定上はひとりっ子の設定です。淳二刑事のお父さんも刑事で、下川辰平さん演じた長さんと同僚だった――との設定です。ラガーのお父さんは殉職した設定で、その背中を追って刑事になった――との設定でした。
劇中では、当初、長さんがラガーを「ジュンぼう」とか呼ぶシーンがあった?ように記憶しております(記憶違いだったらスミマセン)。
☀『太陽にほえろ!』初のピンチ
実は、渡辺徹さんの前任の6代目新人刑事スニーカーこと山下真司さんの時は、「太陽ー!」史上初のピンチと言われていたそうです(ウィキペディアより)。
(これは、宮内淳さんの時にも書かせて頂いた内容の重複となりますが……)
この「太陽ー!」史上初のピンチの原因は、なにもスニーカーが悪かったわけではありません。
裏番組が強すぎたのです。
TBSで『金八先生』(1979年、昭和54年~)が始まったのです。
さらにはテレ朝の『ワールドプロレスリング』(新日本プロレス)では「初代タイガーマスク(佐山聡)」が登場したのです。(1981年、昭和56年~)
どちらも当時の社会現象と言われるほどインパクトがありました。
さらに、悪いことは重なります。この時期にはボスこと石原裕次郎さんが、病気で長期離脱を余儀なくされてしまったのです。
このように、それまで飛ぶ鳥を落とす勢いだった「太陽ー!」に初のピンチがやって来たのでした。
☀救世主ラガー登場
そんな苦しい「太陽ー!」でしたが、渡辺徹さん演じたラガー登場を期に、事態が好転し始めます(ウィキペディアによる)。
ラガーの登場時には、ちょうど「太陽ー!」が放送開始されてから10周年を迎える時期でもありました。ラガー登場を皮切りに、怒濤のメンバーの入れ替に打って出たのです。(以下、敬称略で失礼します)
・スコッチ(沖雅也)殉職
・ロッキー(木之元亮)殉職
・長さん(下川辰平)転勤
・ゴリさん(竜雷太)殉職
かわりに
・ジプシー(三田村邦彦)登場
・ボギー(世良公則)登場
・トシさん(地井武男)登場
以上、これらをかなりの短期のうちに断行したのです。
さらには
三田村邦彦さんの「必殺仕事人」出演の関係で、設定上ジプシーがわずか一年でやむなく転勤。かわりに
・マミー(長谷直美)登場
となりました。マミーは設定上は殉職したロッキーの奥さんの設定です。もともと交通課の婦警さんでしたが、これを期に夫・ロッキーのいた一係に配属――との設定でした。捜査一係ではシンコ(関根恵子)刑事以来、10年ぶり二人目の女性刑事の誕生でした。ファンにはたまらない演出となりました。
☀『太陽にほえろ!』V字回復
ここまで大胆なメンバー入れ替え、大きな新陳代謝が功を奏しました。
裏番組も一時的な勢いはすごかったものの、その後は長く続かず、勢力が衰えてきました。
その頃には「太陽ー!」の捜査一係は、今で言うイケメン俳優陣が顔を揃えていたのです。
ラガーの前から、所属していたドック刑事役の俳優・神田正輝を筆頭に、渡辺徹、三田村邦彦、世良公則(以上、敬称略で失礼します)のイケメン刑事達の時代には、見事にV字回復に成功し、第二期絶頂期とまで呼ばれていたそうです(ウィキペディア)。
その後、視聴率的には安泰が続いた「太陽ー!」でした。
ただし――
渡辺徹さんには大きな変化が訪れることになります。
登場時にはアイドルだった渡辺徹さんでしたが、
ファンからの差し入れを残さず食べ続けた結果……
ご存知のように体重が激増してしまったのです。
今から思えば、はやり、ここから体に大きな負担が掛かっていたのか? と思わざるを得ません。
しかし、当の本人は自らのこの体重変化も笑顔でギャグ、自虐ネタに変えてしまう、その明るさ。これこそが、渡辺徹さんが多くのファンに愛されたゆえんであり、渡辺徹さんの真骨頂だったように思います。
☀『ラガー殉職』~『風の中のあいつ』
渡辺徹さんの真骨頂と言えば、自身が演じたラガー殉職時の「お笑いネタ」があります。有名な話しではありますが……
ラガー殉職を演じたときには、すでにかなり大きく丸くなっていた渡辺さんでした。
ラガー刑事は、設定上はライフルで撃たれて、多量の血しぶきをふきあげて絶命します。撃たれて地面に倒れ込んだとき……
「普通は新人刑事の殉職の時ってさあ、現場のスタッフなんか、みんなが涙流して泣いちゃうわけ。でもオレがライフルで撃たれて、血しぶきあげて倒れた時さあ、現場で爆笑が起きちゃったんだよね! なぜだか分かる? 倒れた瞬間、オレのズボンがビリって、お尻から破けちゃったの。それも穴が開いたレベルではなく、左右真っ二つに!」
以上、バラエティー番組で渡辺徹さんがネタを披露していたのをテレビでみたことがあります(もちろん、上記のトークは私の記憶の範囲ですが)。会場は大爆笑だったし、私も大笑いしたのをおぼえています。たしか、そのバラエティ番組には、野沢直子さんが一緒にいて、話しを盛り上げていたように記憶しています。
「枯れ木に花を咲かせましょうバリに、血しぶきが!」と野沢さんが言えば、
「オーイ! 仮にも『太陽ー!』の刑事だぞ!」と渡辺さんが笑顔でかえしておりました。
ちなみに、「太陽ー!」の新人刑事は、卒業後は別のドラマの主役をやることが結構あります。
渡辺さんもそうでした。奥様の榊原郁恵さんと運命の出会いとなったドラマ「風の中のあいつ」がそれです。
ちなみに、ここにもネタが……これは私自身はみておりません(スミマセン!)が、ウィキペディアで読んだ記事をご紹介させていただきます。
ラガー刑事殉職回の放送された翌日(リアルに翌日だったそうです)が、ドラマ「風の中のあいつ」第一回目の放送だったそうです。
その主人公を演じた渡辺徹さんの登場シーンは、なんとテレビで「太陽ー!」をみているシーンから始まるのです。そうです。ラガー殉職回をです。そのテレビを観ながら主人公の渡辺さんはテレビに向かって叫びます。
「ラガー、死ぬな!」
なんと粋なはからいでしょう。同じ日本テレビだからできる技ですよね。
☀ありがとう、渡辺徹さん
以上、長々と書きつづって参りましたが、今さらながら渡辺徹さんのお人柄に感銘を受ける次第です。
あれだけの大病を背負っていながら、テレビでは微塵もその姿を見せず、常に明るく振る舞い、人々を笑顔にする。人々を幸せにする。
私を含め多くの皆様が、きっと同じように渡辺徹さんから幸せをもらったに違いありません。
今回のブログの表題は、実は「太陽ー!」でのラガー刑事殉職回のサブタイトルをモチーフにしております。
「ラガーよ、俺達はお前がなぜ死んだのかを知っている」
これがサブタイトルでした。ラガー刑事は、とある事件の犯人が反社会的組織・竜神会(りゅうじんかい)である事を突き止めます。しかし、竜神会はヒットマンを組織外から雇い、結果的にラガーを射殺したのです。ヒットマン自体はラガー刑事が相撃ちで仕留めます。ラガーの死を確認したドック(神田正輝)は上司・山さん(露口茂)に涙ながらに電話をします。
「山さん、ラガーが死にました。右胸をライフルの弾が2発貫通しています。ヒットマンの二人はラガーが撃たれながらも、射殺した模様です。しかし、ヒットマンが二人とも死んでいる以上、この事件と竜神会とのつながりを立証することは不可能と思われます……(嗚咽)」
「しかし、ラガーよ、俺達はお前がなぜ死んだのかを知っている。必ず敵はとる。だから安らかに……」と捜査一係の刑事達は皆が胸に叫んだことでしょう。
自らの体調を犠牲にしても、ファンを喜ばせることを第一に考えた渡辺徹さん、まさにラガー刑事と重なるようです。
「渡辺徹さん、私たちはあなたの笑顔に、いつもどれだけ勇気づけられたことでしょう。本当にありがとうございました。どうぞ安らかに……」
改めまして渡辺徹さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。鹿石八千代