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スイカ神、再び(現実逃避)

早いような遅いような、しかし振り返ってみれば霧の遠く向こうにうっすら見える連休であった。支配から開放される心地よさの裏にしとりと切なさが残る。家にいると無駄に色々食べないから体重も減った、か、もしくは怒涛の怠惰生活により筋肉量が加速的に減り、質量の軽い脂肪に成り代わっただけかもしれない。階段の上り下りすら億劫になった僕は、現実世界での生活復帰は果たして可能だろうか。またしても一抹の不安が残る。

鹿田です、よろしくね!
キーを打つという一番筋肉使用率の低そうな行為でさえ、僕の10指は筋肉痛の兆しを見せる。(実際は指だけでなくて、腕やらなにやらの筋肉を動かしてるんだよ、なんて真面目に鹿田に突っ込んでも、鹿田は拗ねるだけなので突っ込まないほうが賢いであるよ)かと言って現世復帰1日前に慌てて筋トレをしたところでなんら意味はないし、かえって全身筋肉痛により地獄の復帰となることは目に見えている。というわけでやはりラスト一日も可能な限り怠惰を貪り快適に過ごしたい。連休の心地よさを搾り取るように過ごしたい。振り返ってみたところで、萎え、なんの魅力も感じさせないくらいに。覚悟せよ連休。

一気に冷え込んだ気温だが湿度はまだ居残り、部屋のドアを締め切ったならふつふつと畳より湯気が染み出でてはジメッとした空気を生産する。低気圧の低圧によりふわりと鹿田の身体も膨張し、同調しだすと部屋中に鹿田空体が充満する。じゅいじゅいじゅいじゅいと蝉ともカエルともとれる奇妙な声を発し、曲がり間違い誰かがその部屋のどれかのドア、或いは窓を開けてしまったなら、そこから空体鹿田はふしゅーーと勢い出て今度は雨と同化する。雨を乗っ取った鹿田は何度も地面に打ちつけられながら丁寧に染み込んでいき、最終的に鹿田地球となる。鹿田地球は夏しか興味が無いのでマントルでマグマをぐつぐつを煮だて、地球全体を熱帯雨林にしてしまうことだろう。どうだ、みんなもベタつき、心地の悪い汗を全身に感じたんではないか。鹿田改めガイアはそうして少しずつ太陽に近づいていく、(本当の夏ってこんなもんじゃないよ、こんな中途半端なもんじゃないと)ブツブツ言いながら。友達の月は呆れた顔で地球となった鹿田のエレベストの山頂をつかんで元の位置に戻そうとするが、もちろん対比的に力の差は歴然でうんともすんともしない。その頃地球上では月が地上に接近するという前代未聞の超常現象に人々が混乱し、色々あった末よくわらんがバタフライ効果の結果、地球はスイカ教によって統一され、みなスイカの寝仏に向かって「こら、なんとかしろアホスイカ神」といって、責任転嫁を図る。スイカ神は口からスイカの種を「プププププププププ、プ」と神聖なる御言葉を快く人々に啓示したが誰もその統一性無く張り付いたスイカの種を見て御言葉だとわかるものはなく、結局地球は常夏の世界になってしまったのである。

ちなみに後日談でスイカ神に対談形式で「あの時スイカ神様は、なんと仰っていたのですか」と、アロハシャツに手ぬぐいの鉢巻をした記者が確認したところ、スイカ神はプププププ…と再び付近の壁にスイカの種を貼り付けてみせた。それをよく見るとひらがなになっており、そこにはちゃんと「わすれた」と書いてあったのである。

やはり神とは思慮深く、我々人間には到底理解できない精神でいらっしゃるとますますスイカ教は栄え、常夏に人々は浮かれて踊り毎日お祭り騒ぎをしては楽しく過ごしましたとさ。

めでたしめでたし。


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