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脳涼祭

とある仕事の研修後に執筆している。もっと詳しく言うとそのあとの整体の後に執筆している。

心地よい眠気がいつも以上にまとわりつくのを認識ながらもこうしてキーをたたくのは、またさぼりにさぼった結果の執筆欲というガソリンそれだけのためである。

ジーっと木陰でこちらを覗き見るような蝉の声だけが響き何処か蒸し暑さに拍車をかけることもまた鹿田に怠惰を促すが、ま、指の筋肉だけでできる仕事だ、頭からっぽで書く僕のスタイルであるから左程エネルギーは消費しないはず。消費しな過ぎて困った結果にならぬよう体調面は気をつけている分、精神面においては大いに不健康にぶっかぶっかと太るのが僕の常である。

鹿田です、よろしく。

さて肥大させた脳内のミラクル四次元ワールドは、蜩が鳴き響き涼しき夏の夜を演出してくれる。もちろん僕はその端に設置された縁側に座ってビールをもって準備は万端だ。ではいくよ、

乾杯!!
と、空想域でするがすぐ、空想アルコールは僕の体の血脈を巡り、酔ってきた気がしてくる。家に帰れなくなっては困るので空想はやめよう。

鹿田の空想は一年中夏を妄想するその力により徐々に現実にその力を及ぼすようになった。時にここが現か夢かわからなくなるくらいだが、そんなことはどうでもいいことで、空想で酔えるなら空想で飲んでいれば健康診断などに引っかかることなく健康体を維持できるメリットは特大だ。

しかしあの喉越しだけは空想では補えないのである。

しかししかし時代は知らず知らずのうちに進み、進化し、最近では感覚も受信することのできるVR補助機能などもできているらしいから、そのうち、ビールを飲む、ということを本物のビールを飲まずして飲んだと錯覚できるくらいの素敵なハイパービール3VRなんてのもできておかしくない。
のど越しはきっと喉に肩こりなどに使う電気パットをはって再現できるに違いない。ビールの缶の冷たい感触は手袋だろうか。となると口内にも何かしら機械を必要とするのだろか。うむ、想像するとビールを飲むのにかなりの手順を要するように感じるが、否、その一寸先の未来にはきっと、脳に直接働くビール疑似体験機ができるに違いない。どうせ脳にぶっさすのなら、ついでに常夏を感じさせてくれ。うはうはと僕はそうしたら快くその電子の夏の海を受け入れるだろう。

ああ、電子の大海原に僕の脳はぷかりと浮かび、それはそれは心地よく揺蕩うことだろう。

となると極論、僕はいつか体すら必要としなくなるのかもしれない。よくあるSF如く、脳だけ取り出して、培養液に浸され、ずっと常夏の海を漂うのだ。

しかし、そう思いついてはふと、もう一つの不思議な疑問が浮かび上がる。

果たして、今は違うと、誰が証明できるだろうか?

ありえないと感じる直感のバイアスは、僕たちは本当に殆どの真実を知らないことを無視する。子の状況で、普通ありえない、と安堵する普通は、果たして世界のどれ位を把握していて、普通、なんだろうね?無知の知を悟っているとしても、その無知の壮大さに落胆するほどでなくてはいけない。きっと。

僕は以前ps4のVRを経験・体験したことで、確かにそこに人がいる感覚を今でも奇妙に引きずっている。画像は粗いが、目の前に現れたゲームの登場人物に、自然と笑みを返したあの感覚。奇妙で不思議なReality。

直感など、専門の経験則でもない限り不確かなものだと今読んでる【ファスト&スロー】でも語られている。

そうしてふつふつと一度開かれてしまった不可思議と恐怖は、眠れぬ夏の熱帯夜にゆっくりゆっくり天井付近に拡がりながら膨らんでゆき、いつか僕ら全体を支配しては、冷や汗に震える眠れぬ夜ごと丸っと包み込んでしまう。

朝が来てもその太陽が本物かすら怪しくなる。しましクルクルと回る地球の体感に、収集くしていく意識の緊縛は得てしてより強く収縮し、収束し、密度を上げていつしか黒き一点の円となる。

ふつふつと。その脳は未だ震えては「僕は違う」と脳が語る。そのぶくぶくと泡立つ培養液の中で、僕たちは、空っぽの、意識体。

腕と思った、感覚は、脳の、表面。
ラマ・チャン・ドロンっ!

いつも知ったようで、いつまでも知らない。


END




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