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屋根の12種類のメリットとデメリット
「建築と家具のデザイン」マガジン
屋根の種類
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Image source: PRIME ROOFING
屋根の形を気にしたことはありますか?
家を建てた方なら建てるときに説明されたり、注目したりしたかもしれませんが、それ以外(マンション住まいの方など)の方は、建築関係者でなければ、普段は屋根なんて気にしないかもしれません。しかし一度屋根の種類を知ってしまうと住宅街を歩いているだけで他人の家の屋根の形に興味しんしんになることでしょう。(なるかなー?)
今回は12種類の屋根の形とそれぞれのメリット&デメリットを紹介していきます。そのまえにちらっと4種類の屋根材について触れさせてください。
4種類の屋根材
1. スレート
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画像引用:YUKO(ユーコーナビ)
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画像引用:外壁塗装・屋根塗装
スレート屋根(コロニアル、カラーベストとも)は、スレートとは、セメントを薄い板に加工した屋根材。1枚あたりたたみ1畳ほどの大きさで、住宅の屋根に敷き詰めたあと、釘や接着剤などで固定していきます。スレート屋根は、軽量で地震に強く、耐火性も高いため、日本の住宅の屋根材としてはもっとも普及しています。ただし、水に弱いので水はけが悪い屋根にはあまり向きません。
メリット:
•安い
•色・デザインが豊富
•取り扱い業者が多い
デメリット:
•割れやすい
•メンテナス頻度が高い
2-1. 和瓦
粘土瓦は耐久性が高く、50~100年持つものもあります。粘土瓦には、和瓦(わがわら)と洋瓦(ようがわら)があります。、瓦には粘土の他にセメント瓦があります。セメント瓦は水を吸うと劣化してしまうので、築7~10年ほどで塗装メンテナンスが必要です。
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画像引用:雨漏りレスキュー
和瓦の産地は多く、三州瓦(愛知県西武)、淡路瓦(兵庫県淡路島)、石州瓦(島根県西部)などが有名です。瓦自体が重いので外壁も丈夫にする必要があります。和瓦の重さは1平米あたり40kgほどあり、スレートのやく2倍あります。和瓦には3種類あり、見た目や風合いがことなります。
(1)釉薬瓦(ゆうやくがわら)
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瓦の表面にガラス質の釉薬をかけ、つやのある風合いや豊富な色のバリエーションがあることが特徴の瓦です。
(2)いぶし瓦
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製造の際に、空気を遮断して焼くことで燻したような質感になった瓦がいぶし瓦です。鉛筆の芯のように、光が当たると白っぽくなる薄い灰色。空手のパフォーマンスで使われる瓦割りの瓦も多くがいぶし瓦です。
いぶし瓦は、織田信長の安土城でも使われたと言われています。有名な生産地は兵庫県の淡路島(淡路瓦)。
(3)セメント瓦
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セメント瓦は、その名の通りセメントから出来ており、形は粘土瓦とほとんど同じですが、サイズが少し違います。防水性がなく、経年劣化で粘土瓦よりも割れやすく、コケも生えやすい。しかし粘土瓦より1割ほど安い。
2-2. 洋瓦
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海外で使われている洋瓦。洋瓦には、2種類の形があります。
F型(平板)
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F型(平板)は、最も古くから採用されていた形状で、凹凸が少なく平らなデザインで、フラットな(flat)形状であることからF型と呼ばれています。
S型(平板)
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丸みを帯びた瓦で、オレンジや黄色など明るい色が使用されることが多い。「S型」の呼び名は、スパニッシュ(スペインの)に由来します。凹凸が明瞭で、立体感や高級感のある屋根を演出できます。
大正時代に西洋建築とともに伝わり、改良されたデザインであるため、洋風建築に適しています。
施工の難易度が高く、F形瓦と比べると工期も費用もかかりますが、最高級の屋根に仕上げたいときや、個性のある屋根にリフォームしたいときに最適です。
3. ガルバリウム鋼板
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画像引用:YUKO
ガルバリウム鋼板は、金属の屋根材で、耐久性が高い。金属なので防水性能が高く、豪雪地域等で良く使用されます。見た目はシンプルでさまざまな家のデザインに合わせやすい。初期コストは少々高いですが、長期的に見ればコスパの良い屋根材です。
4. アスファルトシングル
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画像引用:YUKO
アスファルトシングルはシート状の屋根材で、海外で人気です。軽量の薄いシートを張っていくので内部に水が入り込みにくく、雨漏りのリスクが少ない。ただし、強風・暴風に弱く、高台にある家や片流れ屋根などの風を受けやすい屋根には向きません。主な屋根材は移譲です。おまたせしました、では、さっそく屋根の種類をみていきましょう。
1. 切妻屋根(きりづま)
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画像引用:homily
英語ではgable。切妻(きりづま)屋根は、写真のような本を半開きにして伏せたような三角屋根。単純な造りのため、コストが安く雨漏りのリスクも少ない。伊勢神宮や出雲大社のような古い神社本殿に多い。
メリット
・コストが安い
・水はけが良く、雨漏りのリスクが少ない
・屋根裏のスペースを広く確保でき換気性が良い
・屋根面積が広いのでソーラーパネルを設置しやすい
デメリット
・「妻側」や「破風板(はふいた)」などが劣化しやすい
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画像引用:YUKO
妻側(つまがわ)は、勾配屋根のかけられた建築物の棟に直角方向に平行材が渡される両側面のこと。単に妻(つま)とも呼びます。これに対して、棟に平行に平行材が渡される両側面を平側(ひらがわ)という。
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File:Gable roof.jpg: WikiwikiyarouFile:Gable roof.svg: *Gable_roof.jpg: Wikiwikiyarouderivative work: Malyszkz (talk)derivative work: Margin1522 - このファイルの派生元:Gable roof.jpg:Gable roof.svg:, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=67579899による
2. 寄棟屋根(よせむね)
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画像引用:外装・屋根専門店
英語では「hip」。寄棟(よせむね)屋根は、切妻屋根同様に採用されることが多い種類の屋根です。この種類の屋根をもつ建物を寄棟造(よせむねづくり)と呼びます。世界的に見られる一般的な住宅屋根のひとつ。頂点に棟(むね)があり、さらに四方に下がる棟があります。全方向に面があるため耐風性が高く外壁への負担も少ないです。
メリット
・耐風性が高い
・全方向の外壁を雨や紫外線から守ることが出来る
デメリット
・屋根裏のスペースが狭く換気が必要
・コストが高い
・一つ一つの屋根の面が狭いためソーラーパネルが設置しづらい
・棟が多いので雨漏りもリスクがある
3. 片流れ屋根(かたながれ)
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画像引用:家づくりBLOG
英語だと“Shed roof”。片流れ屋根は、一枚の屋根が一方向に傾斜している屋根形状のことをいいます。シンプルかつスタイリッシュなデザインに仕上がるため近年増加傾向にあります。平屋の屋根には、片流れ屋根が用いられることが多くあります。理由は、快適な採光が可能になるため。片流れ屋根の平屋は軒先のない方の壁面に高さが出るため、高い位置に窓をつくることができます。高い位置の窓による採光により家の中が明るくなり、快適に過ごせるようになります。
メリット
•デザイン性が高く、個性が出せる
•屋根面積が広いのでソーラーパネルが取付けやすい
•初期費用が安い
•屋根裏に大きなスペースができる
•高い位置に窓を設置できるので、部屋が明るくなる
デメリット
•日照を得られる時間が少ない
•屋根・外壁が劣化しやすい(軒先のない壁面が雨風、紫外線に強くさらされるため)
•雨樋への負担が大きくなる
•雨漏りリスクが高い(屋根からではなく、屋根からではなく「破風板」と「野地板(野地合板)」の境目から、伝い水によって雨漏りが発生しやすい)
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画像引用:kamisei
4. 陸屋根(りくやね・ろくやね)
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画像引用:外壁塗装・屋根塗装
陸屋根(りくやね・ろくやね)は、平屋根(ひらやね)やフラット屋根とも呼ばれ、平らな屋根の形状のことを言います。英語だと“Flat roof”。
メリット
•屋上のスペースを有効的に使える
•掃除やメンテナンス作業が楽
•モダンな印象
デメリット
•排水をきちんとしないと水が溜まる
•定期的な防水メンテナンスが必要
•断熱性が低く、室内温度が上がりやすい
ソーラーパネルを設置する場合、斜めに設置するための架台が必要になり費用がかさむ
5. 方形屋根(ほうぎょう)
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画像引用:homily
英語だと”Pyramid hip roof”。方形(ほうぎょう)屋根は四角錐の形の屋根で寄棟に似ている形です。方形屋根は「かき合い」と呼ばれる屋根の頂部を中心に四方にバランスよく屋根が配置されているため、雨や雪を均等に分散させることができます。四方すべての外壁を屋根がカバーしているため、太陽光や雨水による劣化を防ぐことができます。
メリット
•雨や雪を四方に分散で劣化を防げる
•寄棟よりも棟が少ないので、雨漏りのリスクが低い
デメリット
•頂部が線ではなく点になり、棟板金ではなく板金同士の継ぎ目をふさいでいるシーリング材に頼る形状となり、そのため劣化が進行すれると途端に雨漏りのリスクが高まる。
•正方形の家でないとできない
•コストが高い
ªソーラーパネルの設置が難しい
6. 入母屋屋根(いりもや)
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入母屋(いりもや)屋根は和風造りの家によくみられる形で、2の寄棟(よせむね)屋根の棟木を水平に伸ばし、1の切妻屋根となるような形の屋根。社寺建築にも一般住宅にも多く見られる屋根であり、切妻屋根と寄棟屋根とが結合したとも言える屋根形状です。日本瓦と相性が良く、耐風性や断熱性、通気性が高いのですが、形が複雑なためコスト高です。
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画像引用:外装・屋根専門店
メリット
•耐風性が高い
•断熱性が高い
•通気性が高い
•落ち着きのある雰囲気になる
デメリット
•複雑な構造なのでメンテナンス費用が高くなる
•棟から雨漏りするリスクがある
7. 半切妻屋根(はんきりづま)
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画像引用:街の屋根やさん
半切妻屋根とは、切妻屋根の棟を一部切り取った形状で、屋根上部から途中まで寄棟屋根の形状をした屋根です。ています。「はかま腰屋根」や「隅切り屋根」、「ドイツ屋根」とも呼ばれています。英語では「jerkinhead roof」。道路斜線制限や日影規制といった法的な規制を満たしつつ、室内面積を確保することができる屋根の形状です。飾り板をつけるとドイツ風になります。
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画像引用:Yuko-navi
メリット
•室内面積を変えずに建築基準法を満たすことができる場合がある
•ドイツ風な意匠にできる
デメリット
•棟が多いため、雨漏りリスクが高い
8. 差しかけ・招き屋根(さしかけ・まねき)
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画像引用:Yuko-navi
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Image source: houzz
差しかけ屋根、またな招き屋根は屋根が段違いになっている形状の屋根です。英語だと「skillion and lean to roof plan」。屋根と屋根の間に外壁があり、そこに窓を設置して室内に光を取り入れることができます。
メリット
•屋根裏にスペースが作れる
•断熱性・通気性が高い
•耐風性が高い
•太陽光パネルを効率よく設置しやすい
•コストが安い
•部屋を明るくする事が出来る
デメリット
•下側の屋根が雨漏りのリスクが高い
9. 越屋根(こし)
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画像引用:街の屋根やさん
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画像引用:Yuko-navi
越(こし)屋根は切妻屋根の上に切妻屋根が乗っている形状の屋根です。越屋根の立ち上がり部で採光窓がとれ室内に多くの光を取り入れることができます。採光のための作りとして、天窓もありますが天窓は屋根の一部が窓になるため経年劣化によってコーキング部が劣化し雨漏りしやすくなったり、補修するときに使われていた天窓がすでに生産がされていない場合もあったりします。
越屋根に使われる屋根材は、瓦、トタン、ガルバリウム鋼板など。
メリット
•採光
•断熱性・通気性が高い
デメリット
•形状が複雑なぶんコストが高い
•メンテナス似技術が必要
•つなぎ目が多い分雨漏りリスクが高い
10. バタフライ屋根
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画像引用:武藤圭太郎建築設計事務所
バタフライ屋根は、その名の通り蝶の羽が広がったような形で、屋根の端から真ん中に向かって低くなる形状の屋根です。英語でも「Butterfly roof」。中央がへこんでいるので、雪下ろしの必要がない「無落雪(むらくせき)屋根」とも呼ばれます。中央に雨や雪が溜まるため排水処理が必要です。
メリット
•モダンなデザインに仕上げられる
•雪下ろしの手間がなくなる
•ソーラーパネルの設置ができる
デメリット
•排水処理をきちんとしないと雨漏りする
•雪の重さに耐えられる強度にする必要がある
•コストが高い
11. 錣屋根(しころ)
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画像引用:街の屋根やさん
錣(しころ)屋根とは、寄棟屋根の上に切妻屋根が乗った形状の屋根です。一般的な住宅に用いられることはほとんどなく、寺院などによく見られる種類の屋根です。錣(しころ)とは、元来、兜の部位の一部であり、後頭部から首にかけての部位を守る目的で付けられた物。
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画像引用:刀剣ワールド
メリット
•厳かな意匠にできる
デメリット
•コストが高い
•つなぎ目が多い分、雨漏りのリスクが高い
12. 鋸屋根(のこぎり)
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画像引用:ものづくり総合大会
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画像引用:ものづくり総合大会
鋸(のこぎり)屋根は、工場などの大きな建造物に用いられることが多い屋根です。
メリット
•採光
デメリット
•つなぎ目が多い分、雨漏りのリスクが高い
まとめ
屋根なんてどうでも良いと思っている方もいらっしゃると思います。が、屋根の素材や作りに一旦興味をもってみると電車に乗っているあいだも、歩いているあいだも楽しくして仕方がなくなります。たとえばグーグルマップでサテライトモードで街をみてみると様々な街の屋根が丸見えなわけです。以下は東京都渋谷区代々木上原の一部の屋根、オランダのある街の屋根の画像です。
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画像引用:Google maps
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画像引用:Google Maps
いかがでしょう?日本の、とくに東京は屋根の形状がバラエティに富む一方で、歴史ある建造物の保全が強いヨーロッパは屋根色や形状、屋根材が統一され気味です。また積雪の多い地域になると形状も屋根材も変わってきます。屋根ひとつで、こんなに楽しめちゃいますので、屋根のデザインはけっこう楽しめる趣味にもなるのではないでしょうか。
参照
https://www.yaneyasan.net/blog/54057.html
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