映画に出てくる照明“ルイス・ポールセン”とその理由
建築と家具のデザイン
建築や家具について記事はこちらのマガジンにまとめています。
映画に出てくる照明“ルイス・ポールセン”
ルイス・ポールセンは、1874年創業のデンマークの照明メーカーです。いわゆる北欧家具というカテゴリーのなかでよく出てくる照明ブランドです。何人かの著名なデザイナーたちがルイス・ポールセンの照明をデザインしてきていますが、なかでも有名なのがアーネ・ヤコブセン氏とポール・ヘニングセン氏がデザインしたもの。
ルイス・ポールセンの有名な照明5つ
何かと「洗練された空間です」という気配を作ることにも選ばれるルイス・ポールセンの照明ですが、なかでも有名な照明を5つご紹介します。みたことある!というものがいくつかあるのではないでしょうか。
PH5
ルイス・ポールセンの製品の名前には、デザイナーのイニシャルが使われていることが多くあります。PHは、ポール・ヘニングセン(Poul Henningsen)氏のデザインを意味しています。ポール・ヘニングセン氏は、デンマークの建築家です。
ポール・ヘニングセン氏がデザインしたPH5は、光源が見えないが、テーブル(に置かれる料理など)を明るく照らすように設計されたペンダントライトです。アニメ『スパイファミリー』にも似た照明がでてきます。
PH スノーボール
こちらもポール・ヘニングセン氏によるデザイン。デザインしたのは1958年。先のPH5とともにデンマーク工芸博物館に展示するも、その後あまり注目されず、1983年になってようやく生産されはじめました。ちょっとマニアックな照明。
PH アーティチョーク
ポール・ヘニングセン氏デザインの照明のなかでもかなり豪華なペンダントライトです。100万円以上します。他の製品と同様、光源が見えず、眩しくないようにデザインされています。羽が72枚もついており、細かく繊細な作り。植物のアーティチョークが名前の由来。存在感がとても強い。
AJテーブル
AJテーブルは、アーネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)氏がデザインしたテーブルランプ。アーネ・ヤコブセン氏はデンマークの建築家であり、家具デザイナー。AJテーブルは1957年にコペンハーゲンのSASロイヤルホテル(現ラディソンコレクション)のためにデザインした照明です。彼がデザインした椅子、EggやSwanのこのホテルのためにデザインしたものです。
照明のほかにはデンマークの家具ブランド、フリッツ・ハンセンのためにデザインしたEggやSwanといった椅子も有名です。
パンテラ
パンテラには、フロアランプとテーブルランプがあり、これらはデザイナーのヴァーナー・パントン(Verner Panton)氏が1971年にデザインしたもの。有機的なフォルムと、鮮やかなカラーヴァリエーションは、パントン氏のデザインの特徴です。パントン氏は、シェードとベース両方が光を反射するリフレクターとして機能するランプを作ろうとして、この照明をデザインしました。
PH テーブル
再び、ポール・ヘニングセン氏によるデザイン。1927年に発表されたテーブルランプで、対数螺旋を使った曲線でデザインしたシェードを3枚組み合わせています。光源を螺旋の起点に置くことで眩しさがなくなり、同時にシェードが効率良く光を反射してテーブル上を明るくするように設計されています。
映画とルイス・ポールセン
アニメ『スパイファミリー』のみならず、さまざまな映画にルイス・ポールセンの照明は登場します。使われる場面はさまざまですが、このように使われる理由は、ルイス・ポールセンの照明が「高級で洗練された意識がその空間を作っている」という記号を持っているからです。ブランドとは、このように機能以上に記号を勝ち得た存在です。ちなみにルイス・ポールセンのロゴには、書体Helveticaが使われています。ではどんな映画にルイス・ポールセンの照明が登場しているのか、見ていきましょう。
『007 No Time to Die』とAJテーブルランプ
Qの自宅のシーンですが、ジェームズ・ボンドの奥に棚に置かれたAJテーブルランプがあります。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』とPHテーブル
マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ氏主演の映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のワンシーン。この映画に出てくるペンとハウスにはイタリアの照明ブランドFLOSの照明やアーネ・ヤコブセン氏の椅子など出てきて家具好きはなかり楽しめます。ちみみにレオナルド・ディカプリオ氏が座っているのは、ル・コルビュジエ氏デザインのLC2。PHランプは、映画『アイアンマン3』、『007』それからドラゴン・タトゥーの女シリーズの『蜘蛛の巣を払う女』などにも出てきます。
映画『ME WITHOUT YOU』とパンテラ
2001年のイギリスの映画には、ヴァーナー・パントン氏デザインのパンテラ・テーブルランプが出てきます。
まとめ
映画に出てくる家具は、監督やプロダクション・デザイナー、アートディレクターたちが作り出そうとする世界観の糸口として観ることができて、とてもおもしろい。映画『蜘蛛の巣を払う女』は映画そのものと同じくらい「まあまあお金に余裕のある、美意識の高いライター」ミカエルの部屋の家具、照明が楽しめます。スウェーデンが舞台なので、自然に北欧家具が登場してきますが、中にはイタリアの照明ブランド、FLOSのものが出てきたりもします。これらの家具や照明の使い方から、ミカエルは、所得に余裕があり、家具にも造詣が深く、センスも良いという、造り手が描こうとしている人物像が見えてきます。こういったペルソナの作り方は、映画の中だけではなく、実生活にもさまざまな場面で見られるし、使えます。