映画『Black Crab』に出てくる北欧家具ブランド:「ブルーノ・マットソン」と「アクセル・アイナル・ヨルト」
『建築と家具のデザイン』マガジン
デザインがメインの #しじみnote ですが、建築と家具に関する記事はこちらのマガジンにまとめていきます。
Netflixオリジナル映画『Black Crab』
Netflixオリジナル映画『Black Crab』は、戦争によって引き裂かれた世紀末的な世界を舞台にしたスウェーデンのアクション・スリラー映画です。長く厳しい冬の間、6人の兵士が凍てつく群島を横断し、戦争を終結させるかもしれない謎の荷物を命がけで輸送する極秘任務に就くという内容。この映画の劇中に敵味方を知るために「……という家具だね?」というさぐりを入れるシーンがあります。ここで登場するスウェーデンの家具ブランド2つを今回は紹介していきます(マニアック!)。
ちなみに『Black Crab』のポスター・広告に使われている書体は「FF DIN」
この書体は、FF DIN。
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ブルーノ・マットソン(Bruno Mathsson)
ブルーノ・マットソン(Bruno Mathsson)(1907年–1988年)は、スウェーデンの家具デザイナー、建築家です。機能主義、モダニズム、そしてスウェーデンの古い工芸の伝統に沿った思想のデザイナーでした。モダニズムについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
ブルーノ・マットソン氏は、スウェーデンのスモーランド地方のヴェルナモ(Värnamo)という町で、家具職人の息子として育ちました。
ヴェルナモの位置と風景。
ブルーノ・マットソン氏は、すぐに家具、特に椅子にその機能とデザインに大きな興味を抱くようになりました。1920年代から30年代にかけて、彼は麻のウェビングで曲げ木椅子を作る技術を開発しました。グラスホッパーと呼ばれる最初のモデルは、1931年にヴァルナモ病院で使用されました。
近代美術館(MOMA)の工業デザイン部門のディレクターであったエドガー・カウフマン・ジュニア(Edgar Kaufmann Jr.)氏は、マットソン氏の椅子を収集し、1940年代にいくつかの展覧会に出品しました。カウフマン氏は、ブルーノ・マットソン氏を家具デザインにおいてフィンランドのアルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)と同程度の重要性を持っていると考えました。フランク・ロイド・ライト氏が設計した、カウフマン氏の自宅、落水荘(Fallingwater)にもマットソン氏の椅子がありました。
マットソン氏は建築家としても優れており、1940年代から50年代にかけて約100の建築物を完成させています。ブルーノ・マットソン氏はスウェーデンで初めて床暖房付きの全面ガラス張りの建築物を建てた建築家でした。ガラス張りの家のために、彼は「ブルーノペイン(Bruno Pane)※Paneは「窓ガラス」の意味」と呼ばれる二重、三重の断熱ガラスユニットを開発しました。
ブルーノ・マットソン氏は、アメリカを広く旅行し、ジョージ・フレッド・ケック(George Fred Keck)氏のソーラーハウスに強い影響を受けました。また、1949年3月に完成間近のチャールズ&レイ・イームズ夫妻の「イームズハウス」を訪問したこともマットソン氏に強い影響を与えました。
ブルーノ・マットソン氏の家具
Grasshopper (1931)
Mimat (1932)
The Eva Chair (1935)
ブルーノ・マットソン氏の建築
ブルーノ・マットソン(ブランド・メーカー)のウェブサイト
アクセル・アイナル・ヨルト(Axel Einar Hjorth)
アクセル・アイナル・ヨルト氏(1888–1959)は、スウェーデンの建築家・デザイナーで、オーク、ローズウッド、バーチなどの木材を使った家具を制作しました。アールデコとモダニズムの美学を応用し、ミニマリズムと機能性を重視したヨルト氏の作品は、現代スウェーデン・デザインの初期モデルとなっています。ヨルト氏のデザインは、ピート・モンドリアン氏(Piet Mondrian)やデ・ステイル(画家テオ・ファン・ドゥースブルフを中心とした前衛芸術冊子)、モダニズムなどを彷彿させます。
ヨルト氏は、1888年3月7日、スウェーデンのクロッケ(Krokek)に生まれ、ストックホルム芸術大学の高等美術学校に進学しました。その後、ノルディスカ・コンパニエント社をはじめとする家具メーカーに勤務しました。彼の作品は、ストックホルム国立博物館に収蔵されています。1959年6月21日、スウェーデンのストックホルムで死去。
クロッケ(Krokek)の位置
アクセル・アイナル・ヨルト氏の家具
まとめ
北欧家具といえば、フリッツ・ハンセンやカール・ハンセン&サンなどが有名ですが、それ以外にまで及ぶと日本では、あまり知られていないものが多くなります。しかし世界的には、もししくは建築・家具界では有名なブランドやデザイナーがまだまだいます。そんな存在を映画をきっかけとして知っていくのはなかなか有効な知識の増やし方ではないでしょうか。今回ご紹介したブルーノ・マットソンとアクセル・アイナル・ヨルトは、ともに日本語で検索してもなかなか情報がネット上でも見つかりません。じゃあマニアックかというと……日本ではマニアックでも、世界的にみるとそれほどマニアックではない気がするんです。なので、これを機会に両ブランドを知ると、ちょっとしたアドバンテージ(?)が得られるかもしれません。購入して使うにしろ、評価するにしろ。
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参照
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