アルファベットの付いている記号は何だ? “ダイアクリティカルマーク”×18
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
英語以外の言語にときどきついてる、あれは何?……
こちらは、ファッションブランドCelineの以前のロゴ。最初の「E」のうえにちょっとなにか付いています。英語以外の言語には疎いと、だいたい無視して済ませちゃっていませんか?検索するときは無視してもなんとかなります。他にも日本のファッションブランドのコムデギャルソンもフランス語で表記すると「Comme des Garçons」となりますが、最後の小文字の「c」の下部になんかしっぽみたいなのが付いてます。これなんでしょう? ずっと無視してきたかもしれません(わたしがそうでした)が、一回全部知ってみましょう!スッキリすると思います。
ダイアクリティカルマーク
こういったアルファベットに付加的に付いている記号を文字通り「付加記号」という意味で「diacritic」と言います。別名「ダイアクリティカルマーク」(diacritical marks)。実はこれ、日本語にもあります。濁点(だくてん)や半濁点(はんだくてん)もダイアクリティカルマークです。
しかしダイアクリティカルマークは、日本語以外を対象にした呼称で、日本語においては、これらをそのまま濁点、半濁点としています。役割はダイアクリティカルマークと同じです。ダイアクリティカルマークや濁点などの役割は「ちょっと発音かわりまっせ」です。
日本語なら馴染みがあるものの英語以外の言語のダイアクリティカルマークは、正直よくわからないし、入力の仕方だってわからない……ああ、もう見なかったことにしよう……と日本にいるなら思ってしまいます。使う言語圏に関わらなければ、それで何の問題もありません。しかしどうしても気になってしまうが調べるのは面倒、とかとすごくまれに扱わなければならないことがある、という方もいるはず。そんなかたのために、ちゃちゃっとダイアクリティカルマークの種類を紹介していきたいと思います。
ところで以前「ウムラウト」というダイアクリティカルマークは紹介したことがありました。人の顔に見えることがあるという理由で。今回はウムラウト以外も全部紹介していきます。
(1)ウムラウト(Umlaut)
ウムラウト(Umlaut)は、文字の上に小さく書かれていたeの字が起源。ドイツ語やスウェーデン語で使います。中国の拼音(ピンイン)とは、中華人民共和国の定めた、発音の表記法ではüだけが用いられています。
(2)ダブルアキュート(Double acute accent)
ダブルアキュートまたは二重揚音符号(にじゅうようおんふごう)。ハンガリー語で用いられます。ハンガリー語では長音(「ちょうおん」母音を通常の倍にのばしたもの)を表すのにアキュート・アクセント( ´ )を用いるのですが、ウムラウトの付いた文字の長音を表すとき、このダブルアキュートを用います。チルダで代用されることもあります。
(3)トレマ(Trema)
見た目はウムラウトと同じ。フランス語(tréma)、スペイン語(crema, diéresis)、ギリシャ語(διαίρεσις)などで、連続した母音字のどちらかに付けて、発音のルールを変更させるものです。またオランダ語では合字(ごうじ) ijをÿと表記することがあります。
(4)グレイヴ・アクセント(Grave accent)
イタリア語では強勢符号に使用。フランス語では、à, è, ùだけを使用。中国語の拼音での第4声の声調符号にも使用され、ウムラウトと組み合わせた「ǜ」も用いられます。
(5)アキュート・アクセント(Acute accent)
スペイン語、イタリア語で強勢符号に使用。フランス語やときに英語でも「é」だけを使用します。主に借用語(他の言語から別の言語にそのまま取り入れられたもの)の語末が開音節であることを表しています。ハンガリー語では長音符として使用。中国語の拼音での第2声の声調符号にも使用され、ウムラウトと組み合わせた「ǘ」も用いられています。
(6)サーカムフレックス(Circumflex)
フランス語、ポルトガル語、ベトナム語などで使用。人工言語であるエスペラントでは子音字に使用。また、日本語のローマ字表記でも使用されます(※)。
※1947年の(訓令式とヘボン式の両方を解説した)文部省通達ではサーカムフレックスとアポストロフィーを使うとしており、昭和20年代の教育現場(小学校4〜6年生)ではどちらでも良いと教えるように文部省が指導していました。(※1)
(7)セディーユ(Cedilla)
文字の下に小さく書かれていたzの字が起源。フランス語(cédille)やポルトガル語(cedilha)ではçを[s]に用います。ほかトルコ語系の言語でも使用。
COMME des GARÇONS
コムデギャルソンの社名にもセディーユが登場しています。ちなみにロゴでは、アスタリスクを使っています。使用している書体は、Helvetica(ヘルベチカ)。
(8)コンマビロー(Comma below)
セディーユの変種で、親字との間に隙間があります。ルーマニア語で用います。セディーユも同様に用いられ、両者の間に区別はありません(!)。
(9)マクロン(Macron)
もともとはラテン語の学習に用いられたもので、ほとんどの場合長音を表す発音区別符号です。ラトビア語やポリネシアの諸言語などで使用。日本語のローマ字表記でも長音の表示に使用されます。ることが多い。中国語の拼音での第1声の声調符号にも使用され、ウムラウトと組み合わせた「ǖ」も用いられます。
(10)ブレーヴェ(Breve)
もともとはラテン語の学習に用いられたもの。breve(短く)の名のとおり、伝統的には短音記号として使われてきましたが、現代の諸言語では必ずしも短音を表すとは限らない使われて方をしています。ğはトルコ語に、ŭはエスペラントで使用されています。ăはルーマニア語やベトナム語で独特の母音価の表現に使われています。
(11)チルダ(Tilde)
文字の上に小さく書かれていたnの字が起源。スペイン語(tilde) のñは“ニャ行音”、ポルトガル語にはã, õが現れます。母音につく場合は鼻母音を表すのが慣例です。ベトナム語では声調記号として母音字につきます。
(12)オゴネク(Ogonek)
ポーランド語(ogonek)やリトアニア語(nosinė)などで使用。鼻母音や、かつて鼻母音であった母音。
(13)リング(Ring)
文字の上に小さく書かれていたoの字が起源。åはスカンジナビア諸語で「オー」のような音を表す。ůはチェコ語などで使用。
(14)ハーチェク(Haček/Caron)
スラブ系のいくつかの言語やリトアニア語で使用。ǎ, ǐ, ǒ, ǔやウムラウトと組み合わせた「ǚ」は中国語の拼音での第3声の声調符号としても使用されています。
(15)ドット(Dot)
ポーランド語のż、リトアニア語のė、マルタ語のċ, ġ, żなど。ベトナム語では声調記号として母音字の下につきます。
(16)ストローク(Stroke)
øはスウェーデン語を除く北ゲルマン諸言語で用い、öに同等と考えてほぼ差し支えない。łはポーランド語で使用し、[w]に近い音。
(17)ホーン(Horn)
ベトナム語で使用。ヨーロッパ語にあまり現れない音価を表すために創出されたもの。
(18)フック(Hook)
ベトナム語で使用。
まとめ
あらかじめ覚えおくべきダイアクリティカルマークはほとんどありません。ただ「あれなんだろうなー?」とぼやっと思っているよりは「よくわからないがダイアクリティカルマークだ!」とわかっているとかなりスッキリします。いざ使うときにも、調べやすくなります。また逆にウムラウトのように見た目がかわいいあれの正体を知っておこう!という好奇心を満たすかもしれません。わたしは、ハーチェクの「ě」がとても好きです。小さな王様みたいで。
あ!Celineのロゴについていたダイアクリティカルマークは「アキュート・アクセント」でした。
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参照
※1