風景と建物を一緒にデザインする設計事務所「スノヘッタ」のオスロ・オペラハウス
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
風景と建物をともにデザインしたオスロ・オペラハウス
写真だけではちょっとわかりにくいので動画も紹介します。
ノルウェー、オスロにあるオスロ・オペラハウスは、このように近未来的で幾何学的(でありながらモダニズム建築というよりは、いくぶん脱構築主義的)な建造物です。この建物は、スノヘッタ(Snøhetta)というオスロの設計事務所がデザインしました。彼らは、風景(ランドスケープ)と建物を一緒にデザインしていこうというコンセプトのもとで生まれた設計事務所です。
今では、スノヘッタは、ランドスケープと建造物のみならず、家具やプロダクトデザイン、グラフィックデザインまで総合的に扱っています。このオスロ・オペラハウスは、ミース・ファン・デル・ローエ賞を受賞しています。
オスロオペラハウスの内部
オスロ・オペラハウスの屋根は地上に向かって傾斜しており、歩行者が上るとオスロのパノラマを楽しむことができる大きな広場になっています。建物の大部分は白御影石とイタリアの白カララ大理石(carrara marble)であるラ・ファッチャータ(La Facciata)で覆われていますが、ステージタワーは白いアルミニウムで覆われており、古い織物模様を思わせるローヴァース&ワーグル(Løvaas & Wagle)のデザインとなっています。
ロビーは、高さ15mの窓で囲まれ、最小限のフレームと特殊ガラスにより、水辺の景色を最大限に楽しむことができます。屋根は角度のついた細い柱で支えられており、これも眺望を妨げないように設計されています。
内装はオーク材で覆われ、白い外観のクールさとは対照的に、空間に温かみをもたらしています。メインホールは馬蹄形で、5,800個のハンドメイドのクリスタルを使った楕円形のシャンデリアが光を放っています。座席には電子リブレットシステムのモニターが設置され、観客は原語に加えてノルウェー語と英語のオペラリブレッティを追うことができるようになっています。
スノヘッタ(Snøhetta)
スノヘッタは、創業1987年のノルウェーのオスロとニューヨークを拠点に、サンフランシスコ、インスブルック、パリ、香港、アデレードとストックホルムにスタジオを持つ設計事務所です。設計事務所ですが、家具、プロダクトデザイン、グラフィックも扱っています。
ところでスノヘッタの綴にある見慣れない「ø」の文字は「o」(オー)にダイアクリティカルマークの「ストローク」(Stroke)が付いたものです。デンマーク、ノルウェー、アイスランド語などで使う文字です。その他のダイアクリティカルマークも含めて、こちらの記事で紹介しています。
スノヘッタのオスロ・オペラハウス以外の代表作
リレハンメル美術館(1992)ノルウェー
新アレクサンドリア図書館(2001)エジプト
ジェームズ・B・ハント・ジュニア図書館(2013)アメリカ
映画『TENET』の冒頭はオスロ・オペラハウス
クリストファー・ノーラン監督の映画『TENET』の衝撃的な冒頭のシーンではなく、主人公(ジョン・デヴィッド・ワシントン)がニール(ロバート・パティンソン)と話をするシーンが、このこのオスロ・オペラハウスの屋上です。
まとめ
建築は、体験できる、住めるアートとも言える創造物で、機能性はもちろん重要ですが、技術革新が進み続け、またデザイン様式としては脱構築主義の建造物が実際に建てられるようになって以降、驚くような形のデザインも楽しめるようになってきました。たとえばフランク・ゲーリーが設計し、1997年に完成したビルバオ・グッゲンハイム美術館(スペイン)。
この美術館には、日本人のアーティスト、中谷 芙二子さんの作品、霧の彫刻があります。
建物や家具を設計する建築家たちは、制作物が長い年月人々と時を共にするパースペクティブを創造します。そこに美しさや日常化する感動というものを含ませようとした試みを、わたしたちはときどき建物などを通して体感できます。またそれを重視した映画作品では舞台として建物も選ぶこともあります。その背景にある思想を理解すると、体験がより深くなります。スノヘッタによるオスロ・オペラハウスは、風景と建物をともにデザインしようとする試みを体験できます。オスロを訪れた際には、ぜひ訪れたい場所です。