
知っておきたいデザイナー№3: 映画デザインとロゴの ソール・バス
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
“知っておきたいデザイナー”×7
くまモンを考案したデザイナー、水野学氏は、デザインセンスを向上させるためにすべきことのひとつとして「王道を知る」ということを挙げています。
なれば、デザインというものを知るには、その巨匠たちを知ることは、王道を知ることに繋がり、すなわち「ざっくりとデザインに対してのセンスや知識が底上げされる」、効率の良い近道となるでしょう。ということで、このシリーズでは「とりあえず、この7人は知っておきたいデザイナーたち」を紹介していきます。
一人目は、スティーブ・ジョブズにも怒った巨匠、ポール・ランド氏。二人目は、日本のグラフィックデザインをがっつり底上げした、亀倉雄策氏でした。
3人目として、今回は、ソール・バス氏を紹介します。
ソール・バス

By http://www.logodesignlove.com/all-about-saul-bass; photo by Harrie Verstappen, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=33808329
ソール・バス(Saul Bass)(1920-1996)は、アメリカのグラフィックデザイナー且つオスカー受賞映画監督で、映画のタイトルシーケンス、映画ポスター、企業ロゴのデザインで有名です。ソール・バス氏は、多才で、映画のタイトルバックやポスターで有名ですが、企業ロゴも多く制作されています。日本企業が多く、現在でもスーパーやコンビニで彼が手掛けたロゴを目にすることができます。

彼の40年のキャリアの中で、アルフレッド・ヒッチコック、オットー・プレミンジャー、ビリー・ワイルダー、スタンリー・キューブリック、マーティン・スコセッシなど、ハリウッドの著名な映画監督のためのデザインを制作してきました。プレミンジャー監督の『The Man with the Golden Arm』では、ヘロイン中毒者の腕を切り取ったアニメーションのタイトルシークエンス、ヒッチコック監督の『North by Northwest』では、高層ビルのハイアングル・ショットになるクレジットが上下に走り、『Psycho(サイコ)』ではバラバラなテキストが、一緒に走ったり離れたりしているタイポグラフィが有名で、後世にも大きく影響を及ぼしました。
ソール・バスのサイン(Signature)

魚のバスとかけています。
ソール・バス氏の生涯

1920年5月8日、アメリカ・ニューヨーク州ブロンクスで、東欧系ユダヤ人の移民の両親のもとに生まれます。ブロンクスのジェームズ・モンロー高校を卒業後、マンハッタンのアート・スチューデント・リーグで学び、ブルックリン・カレッジでギョルグ・ケペス(György Kepes)の夜間クラスを受講しました。1938年、ソールはルース・クーパーと結婚し、1942年にロバート、1946年にアンドレアという2人の子供をもうけました。
1940年代(20代)からハリウッドで活躍し、オットー・プレミンジャー監督の『チャンピオン』(1949)、『セールスマンの死』(1951)、『月はどっちに出ている』(1953)などの映画の印刷広告をデザインします。プレミンジャー監督の1954年の映画『カルメン・ジョーンズ』のポスターデザインでも手掛けました。プレミンジャー監督は、バス氏のデザインに感銘を受け、タイトルシークエンスの制作も依頼しました。これが映画のタイトルシークエンスにデザインや演出が取り入れられた始まりと言われています。
映画のタイトルバックとポスター
『カルメン』(1954)
オットー・プレミンジャー監督作品
『黄金の腕』(Man with the Golden Arm)(1955)
オットー・プレミンジャー監督作品

『サイコ』(1960)
アルフレッド・ヒッチコック監督

『北北西に進路をとれ』(NorthWest by North)(1959)
アルフレッド・ヒッチコック監督
『エイリアン』(Alien)(1979)
ソール・バス氏が手掛けた映画『エイリアン』のタイトルシークエンスは、少しずつその姿が表れてくる映画のプロットをなぞるようなタイポグラフィです。美しく、素晴らしく、怖い!
ソール・バスが手掛けたロゴ
映画のデザインで有名なソール・バスですが、映画のみにあらず、現代でも使われ続けている企業のロゴを多く、手掛けています。意外(?)にも、日本企業のロゴを多く含んでいます。
アルコア(1963)


source: Logo Decks
京王百貨店の包装紙(1964)

コンチネンタル航空(1968)

味の素(1973)

紀文食品(1984)

コーセー(1984)

ユナイテッド航空(1974)

ミノルタ(現:コニカミノルタ)(1978)

AT&T(1983)

クリネックス(1961)

ゲフィン・レコード(1981)

ソール・バスの書体
ソール・バス氏は、晩年書体もデザインしています。

source: flickr.com
ソール・バスをもっと深堀りしたい方におすすめの本
時代と作品で読み解く 映画ポスターの歴史
リュミエール兄弟によって映画が誕生したの1895年から2010年代までの映画ポスターの歴史を紹介している本。
まとめ
ポール・ランド氏、亀倉雄策氏と続いて、今回は映画のタイトルシークエンスでも有名なソール・バス氏を紹介しました。ソール・バス氏のデザインには、大いにモダニズムの流れが見て取れます。1950年代前後は、第二次世界大戦の影響が強く、技術革新、産業や経済の急激な拡張を受けたデザインの需要の爆発、幾何学的なシンプルさ、モンドリアンやピカソたちが芸術で広めた抽象概念の具現化の手法などなど、そういったものを「モダニズム」という言葉に強引にくるむと、それの気配をソール・バス氏のデザインや表現に観ることができます。削ぎ落としていくことで、伝えたいことを先鋭化していくには、概念を正確に理解する必要があります。その具体的な好例を、ソール・バス氏から学ぶことができます。英語ですが、ソール・バス氏のバイオグラフィーを3分半にまとめた動画がありますので、ご興味あれば、ご覧ください。
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