自分史的なクリッピング史料
新聞の地方・地域面の記事もよく読む。やはり地元で頑張っている人や企業が気になったりして。ああ、面白い視点だなぁとか感心する企業紹介も多い。今日はそんな小さな企業の紹介記事から。
2023年9月6日 朝日 元気のひけつ ファミレスの「神器」シェア7割
呼び出しベル製造 パシフィック湘南(茅ヶ崎)
ファミレスでメニューに目を通して次にすることは、呼び出しベルを押すこと。このベルのシェアを7割も占めるのが "パシフィック湘南" という会社。そのベルは「ソネット君」という名前が付されている。そうかあれはソネット君だったのか!と大いなる感想をもった訳ではないけど、やはり自社製品に命名することで、楽しさも沸いてくるんじゃないだろうか。その存在にラベリングするんだなぁと興味も沸いてくる。命名権があるくらいだから、立派な記号の一種であり知的財産だな。以前働いていた会社では、自身が担うプロジェクトを "My Baby" などと呼んでいたっけ。
よく体育館にある器具の名前などがクイズ番組で出されることがあるけど、その名前や命名の由来を知ることなども、"へえ" と共に自分の記憶に(いい意味で)無駄に残っていくのかもしれない。
テーブルの呼び出しベルを押すと電波が発信されて店内にある受信表示機にテーブル番号が表示される。ドリンクバー、ポテトと並び三種の神器と言われるまでに。なんと神器まで昇華している。
最初のうちは本当に売れなかったという苦労話のコメントもある。これを発掘した当時は、顧客への接客は目配り・気配りが当たり前の時代で、お客さんにベルを押させるなんてはばかれるという雰囲気があったと。そこで地道に地方の和食店から営業を始め、1993年にファミレス大手のすかいらーくに採用されると次々に同業他社に導入されていったと。
2003年にはそれまでの微弱電波の無線から、国の認証を受けた特定小電力を採用した自社製品を開発し「ソネット君」と命名。約100㍍先まで届き、混信もしにくくなった開発という一歩前進。これまでの納入実績は累計70万個以上ですごい数。実はこれだけではないのがすごい。同社ではフードコートで注文を待つときに手渡され、商品の準備ができるとブルブルと震えるあの機械も商品ラインアップにある。
このブルブルにも名前が付けられ「ワンタッチコール」というらしい。せっかくだからワンタッチ君でも良かったのではないかとも思うけど。この開発は店側のニーズを汲み取ったもので、店の前面で混んでいる様子があると、それを見て回避するお客さんもありチャンスロスにつながっているというある店主の声。そこで、ポケベルのような発想で、順番を知らせる機器があればいいということで開発。こういうニーズの汲み取り・取り扱いが成長のキッカケになるということも成功物語の中でよく耳にする話だけど、その成功は神に与えられたものなのかもしれない。神は万物に宿るのだから。
コロナ禍で「ソネット君」の売り上げが落ちてしまった際に、ワンタッチコールが病院や薬局などに次々に採用され、会社の窮地をリカバリーしてくれた。本当にもう一人の孝行息子がいたわけだ。決してハイテクとは言えない(失礼ながら)がゆえに模造品も追随してくるなか、顧客との関係性によって看板商品は廃れることはないという話は、まさに7割シェアの矜持だろうか。わかっていてもできない・やらない会社も多いし、どこかでその歪みを放置しまいがち。
えっ?と思うようなアイデアはまだまだ日常に転がっている筈。その中にも未来につながるヒントが転がっていることは期待というかワクワク感を創造する。最近の100均のクオリティなどに接すると本当にナイスと思える商品がてんこ盛りだ。個人的には特にキッチン用具。小洒落ているし、なんと言っても価格。
こうした企業の存在を知ることや企業のストーリーを知ることで、なんだか豊穣な知恵を蓄積していけるような気がする。こういう記事を読んでいると楽しいし、なによりリラックスにもなる。