自分史的なクリッピング史料
昨日は予報通り、午後遅くから雨が降り始めた。そして今朝もどんよりとした天気。窓から空を覗くとうっすらと日も差しているところも雲の合間から見えるけど、何れにせよもう6月。梅雨が近い。そんな時には活字に浸ることが多い。普段から活字に浸ってはいるけど、多少時間が多く取れるのもこの時期。他の選択肢が排除される傾向にある。映画も好きだから、観に行こうとは思う気持ちもあるけれど、観たい映画があったとしても時間的な拘束やコスパなども考えてしまい、自室で若干の音量でBGMでもかけながら、読書をするというのが、最適なような気がする。それでも積ん読本が多すぎると家族には不評ながら。
2020年11月21日 日経 リーダー 本棚 JT生命誌研究館名誉館長 中村桂子
本質を突く子ども向け
このコラムでは名だたる経営者や政治家など、自身を育てた或いは大げさに言えば感銘を受けた本を紹介していて、これを基に選書の参考にしたことも多い。結構楽しんで読んでいたけど、このコラムは終了してしまった。今回はその中の一つを再読。
中村さんはその著書(岩波新書とか)も読んでいて、著名な方なので、どちらかと言えば実業には余り関係のない、人として或いは親としてこんな本を読んでいたらどうなのかなぁ的な視点で触れることが多い。
まず、座右の書として『あしながおじさん』をあげている。自分も小学生の頃に推薦図書として読んだ記憶があるけど、全く覚えていない。中村さんはその主人公・ジュディは高校生の頃からの友達と言っているから、かなり大きくなってから読まれたのだろうか。「自分が大事と思うことはきちんと語り、周りを明るくしていく。日々の暮らしから、小さな幸せを多く積み上げていく。その生き方が大好きです」とコメントされている。なにせ記憶が覚束ないので、このコメントの重さを感じられないのが残念。
その他の愛読書としてもいくつか挙げている。自分が読んだ本や子育て中に読んだ本に改めて目が向くことが多いと。そして記事では、まず最初にケストナーの『動物会議』と『ふたりのロッテ』について触れている。『動物会議』は終戦後に書かれ、世界中の動物たちに託して平和なあるべき社会の姿を語っていると。役所と役人と書類だんすを必要最低限にする、一番よい待遇を受ける役人は教育者とする・・・とも言っていて、今の大人に読んでほしいとコメントされている。『ふたりのロッテ』は名前だけは知っている。なぜなら「ロッテ」とわかりやすいワードがあったから。離婚した両親のそれぞれに育てられた双子が主人公で、偶然出会ったふたりが、こっそり入れ替わり、家族をまた一つにしていく物語。柔らかく、巧みに楽しく、状況を変えていく、とてもいいやり方が示唆されていると。
そして次には『ちいさいおうち』。中村さんのお子さんが大好きだった本だとか。大きいビルに囲まれてしまったちいさいおうちは最後にはまた自然の中に戻るという内容の様子。これもタイトルはうっすらと覚えているので、目にしたことがあるようなないような。中村さんは科学者らしく、次世代に少しでも社会をよくして繋ぎたいと、そして自分は振り返ると上司や先生に恵まれてきたともして自分にも伝えられることがあるかもしれないとコメントしている。
その他にもコメントされている愛読書をいくつか挙げている。
『永遠平和のために』(カント)。カントが71歳で書いた本は、戦争で人間を機械や道具のように扱うことを痛烈に批判していると。今職場でも過労死などの問題は、人を機械や道具のようにみてしまうからではないかとおっしゃっている。
『ネガティブ・ケイパビリティ』科学者はすぐに答えを求められるけど、コロナにしても地球環境問題にしても分からないことばかり。大事なのは諦めずに考え続けること。この本は答えの出ない状況に耐える力の大切さを教えてくれると。英国の詩人キーツによる概念を作家で精神科医の著者がまとめたもので、多くの人に必要な力だと。2017年発刊の本。継続的な力を持った本では。息子にプレゼントしようかなぁ。まずは自分が読んでからだろうか。
中村さんは生命誌を提唱され、結構有名になったけど、1980年代にその生命誌を考えていたころに読んだ本が『いま自然をどうみるか』。人が自然をどうとらえてきたか。その歴史とこれからを丁寧に語っていると。
小さなものを見続けると、本質的なものが見えてくるともコメントされていて、そうした視座もあるんだなぁと。企業人だとまず大目標から設定させられてミクロに落とし込む作業の方が多かった。小さな視点だと揶揄されることも多かった。なんとダーウィンは生涯をかけてミミズの観察し『ミミズと土』にまとめたとあるから、現代では養老先生的な態度なのだろう。ミミズに聴覚はあるのかなど小さな積み重ねから進化論のような大研究に発展させることができたのかもしれないと。
『可視世界と現実世界』。遺伝子研究でノーベル賞を受賞した著者は、生きものの性質として、予測不能、ありあわせの寄せ集め、たまたまできたものの3つをあげていると。すなわち、完璧な生き物などいない。人間も完璧ではない。同じ生き物の世界にいるからこそ面白いのだと。ある意味で俯瞰してみることになるとは思うけど、簡単に共生とは言えない部分もあったりして、どうしたら動物でくくれるのだろうか、などついつい考えてしまう。
中村さんは東日本大震災の後、想定外のイベントリスクに対して科学者は何ができるだろうかと悩んだとおっしゃっている。何も科学者に限らない。その時に読んだ本が『宮座賢治全集』。火山を人工的に爆発させる「グスコープドリの伝記」など深く考えさせられたと。昨年、『銀河鉄道の父』を読んだけど、宮沢賢治は小学校の教科書で読んだ程度。でもこの全集はいつか死ぬまでには読んでみたいなぁと常々思っているところ。自然、技術、生き方と大きな気づきが得られるようだとも評している。
典型的なサラリーマンだった自分は、定年を迎えた後に、大好きな読書の話をかいつまんでみることも大好き。特に新聞の書評論は欠かさず読んだいる。そして、紙面上で、こうした著名人による書棚という情報を提供してくれるところはとてもありがたいといつも思っている。
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