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ホームステイ先で、少しだけ気持ちを軽くした洗濯ネット。#ワコールがnoteでコンテスト開催中

これは、ワコール下着価値向上委員会『#下着でプチハッピー』の応募ストーリーです。

空港に着くと、わたしは持っていた画用紙にペンで彼女の名前を書いた。

「Welcome to Australia‼」

オーストラリアの一般家庭に住みたい日本人と、日本人を受け入れたいオーストラリア人のホームステイをマッチングし、その日本人のサポートをする会社を立ち上げたばかりの男友達に頼まれて、日本人女性を空港に迎えに行ったのだ。

ホームステイ先までは、ハイウェイを使っても2時間以上あった。男友達が車を運転してくれたので、彼女とわたしは後部座席に座り、ホームステイの注意点を説明したり、質問に答えたりした。

一通り話終えたところで、わたしはあることを思い出した。

「前回初めてわたしもホームステイをしたんだけれど、そこの家が物をほんとうに大切にしていて、アンティーク家具だけでなく、電化製品も壊れるまで使うから、洗濯機もとっても古くて、それで、服や下着が絡まって、生地やワイヤーがいいだけ伸びてしまって、2ヶ月間の滞在で全滅。」

「ええ⁉ そうなんですか。」

彼女が驚いてしまったので、わたしは、

「たまたまだと思うのよ。たまたまそういう家に当たっちゃっただけだと思うのよ。」

と言って、彼女を一旦落ち着かせた。

「それで、2ヶ月間なにもしていなかったわけじゃなくて、日用品や雑貨が売られているスーパー・デパート・コンビニに行ったんだけど、洗濯ネットがどこにも売られていなくて。そもそも、日本で言うところの100円ショップがなかったのよね。」

「ええー⁉ どうしよう⁉ わたし、洗濯ネットを持ってこなかったです!滞在期間が1年もあるのに。」

「服用も下着用も?」

「はい。」

彼女は半泣き状態になった。

「ジャジャーン!大きい服用、小さい服用、下着用、3種類をプレゼント‼」

わたしはそう言うと、彼女に3種類の洗濯ネットを渡した。すると、彼女の表情はパーッと明るくなったのである。

「いいんですか⁉」

「今回、この会社を利用してくれた特典です!」

「ありがとうございます!ありがとうございます‼」

彼女は何度も何度もお礼を言ってきた。あまりにも彼女がお礼を言うものだから、不安を煽って大袈裟にプレゼントしたような気がして後ろめたさを感じた。日本ではどこにでも売っていて、3枚でたった300円(税別)なのだから。

ホームステイ先に着いて、彼女と男友達とわたしの3人でホストファミリーに挨拶をすると、すぐに男友達とわたしは別れを告げてその場を後にした。

「ところで、洗濯ネットの件だけど。」

車に戻ると男友達が話しかけてきた。

「勝手なことをして、ごめんなさい。」

わたしは謝った。

「いいんだ。むしろありがとう。俺はああいうことになかなか気づかない。ところで、下着用洗濯ネットって、なに?」

「ブラジャー用なの。ブラジャーは胸の下にワイヤーが入っているんだけど、ブラジャー専用の洗濯ネットに入れないままで洗濯機で洗うと、そのワイヤーが曲がってしまうことがあるのよ。そうすると、肋骨にワイヤーが当たってとても痛いから、捨てるしかなくなるの。しかも、彼女のホームステイ先の近くにはショッピングセンターがないから、なかなか下着を買いにも行けないから大変なことだと思うわ。」

「そんな大切な洗濯ネットをタダであげちゃったんだ?」

「困ったときはお互い様よ。」

1週間後、彼女の様子を見に、ホームステイ先に伺った。

「どう?元気にしてましたか。困ったことはないかしら?」

「思っていたよりずっと小さな町で、息抜きができなくて辛いです。」

彼女は青ざめた顔をして、今にも泣きそうだった。男友達も懸念していたことだが、その町というか、家が数十軒集まっただけのコミュニティーはあまりにも小さすぎて、近くにスーパーもコンビニもカフェもなにも無かった。

「でも、慣れですよね!それから、洗濯ネットありがとうございます。洗濯機は最新式だったので、洗濯物が絡まるってことはほとんどないんですけど、ホストファミリーの服や下着と一緒に洗うので、ネットに入れると最初から仕分けができるので助かりました。洗濯ネットを使って大切に洗濯して行けば、1年持つかもしれません。」

「1年もここにいるだけじゃなくて、オーストラリアの交通ルールにも慣れて、車で遠出もしましょうね!」

「はい!是非‼」

2時間ほど話をしたら、彼女も元気を取り戻してきたので、男友達とわたしは帰ることにした。

「やっぱり、女性のお客さんのサポートは、女性スタッフに頼んで良かったよ。『下着のワイヤーが曲がって肋骨が痛い』なんて、男性スタッフはなかなか気づかないし、相談しづらかっただろう。」

車を運転しながら、男友達が話しかけてきた。

「そうね。『ブラジャーを買い直したいから、遠くのショッピングセンターまで行ってください』っていうのも言えなかったでしょうね。」

「たかが下着、されど下着。それで、滞在中の気分も全然違ってくるか。」

「彼女、何とか乗り越えられたら、いいわね。」

「また何かあったら頼むよ。」

「こちらこそ、是非。」

ハイウェイに合流すると、彼は車のスピードを上げた。

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