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緊急事態宣言あけに免許更新した話。

実体験に基づいたフィクションです。

感染者数がふたたび増加傾向にある中、運転免許センターが再開されたとのことで、免許更新に行ってきた。

駅からはバスに乗って、免許センターに着くと、自粛期間中で来られなかった人も含め、大勢の人が詰めかけていた。

6列になって並ぶ視力検査待ちの列は、さながらラジオ体操のように間隔があけられた。

消毒に時間が取られ、列はなかなか進まない。足腰が弱いわけではない自分でさえも、何も支えがないところで直立しているのは辛かったのだから、足腰や体力に自信がない人は尚更だったろう。

「呼ばれるまで座っていてもいいですか。」

しかし、そんなことを言う人は皆無だった。係官にそんなことを言えば、免許証自主返納を勧められると危惧したのかもしれない。

それとは別に私はあることを危惧していた。5年前、私は“眼鏡なし”にチャレンジした。

“眼鏡なし”とは、目が良い方の視力が0.7以上、悪い方の視力が0.3以上あれば、免許証に“眼鏡あり”とは印字されず、眼鏡なしで運転することができる。

悪い方の視力が0.3もなかった私は、コンタクトレンズを準備して、まずは裸眼でそれに挑んだ。

案の定、視力検査で係官に止められた。しかし、係官は意外なことを口にした。

「視野狭窄しようか。」

「シヤキョウサクですか?」
私は驚いてそう答えた。

「あなた、その目で5年間も無事故無違反だったのだから、見えていますよ。」

視野狭窄を調べる特別室に入った私は、緊張していた。そんな検査は生まれて初めてだったからだ。

しかし、片目の視界を簡単にさえぎられて、もう一つの目の端っこに物が動いているのが見えるかどうか確認しただけで、合格してしまった。

片目の視力が0.01、5年以上ペーパードライバーの眼鏡なしのゴールドカードが誕生した。

私は複雑な気持ちになるのと同時に、これからの5年も無事故のために、眼鏡なしでの無運転を決意した瞬間だった。

「次の人!」

私の視力検査の順番がきた。

まず、目が良い方の視力は0.7の基準を軽くクリアした。悪い方は案の定まったく見えなかったため、良い方がいちばん小さい“輪っか”を見れるかどうか聞かれた。

それが見えてしまった自分は、視野狭窄さえも免除されてしまった。

片目の視力が0.01、10年以上のペーパードライバーの眼鏡なしのゴールドカードが誕生した。

帰りのバスを待っていると、同じゴールドカード講習を受けた人たちの車列が見えた。

それは、まさに勇者の行進に見えた。

(実際運転してるのにゴールドカードって、ほんとうに尊敬)

次の5年までに、免許証自主返納をしようかどうか、本気で考えることにした。

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椎良麻喜|物書き(グルテンフリー/小説/エッセイ/写真)
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