小説を書く。その60【BL小説】
この世界は、狩るものと狩られるものに分かれている。
それは、生まれたときにすでに決められている。運命をかえることなどできない。
狩るものとして生まれた俺は、仲間とともに今日も狩りに出かけた。いつものように。
逃げる標的を発見し、銃口を構える。群れから一人、遅れている個体に照準を合わせた。
照準器越しに、その顔を見――俺は動けなくなってしまった。
美しかった。今まで狩られるものたちの顔など、はっきり区別したことなどなかったのに。
どうしようもなく胸が震えた。
気づくと、俺は駆け出していた。狩られるものの舞台へと。仲間の困惑した声が背中越しに聞こえる。
何がこんなにも俺を突き動かすのか分からない。ただ、彼だけは助けなければならない。その一心で、俺は走った。
狩るものの地位も、プライドもかなぐり捨てて。
息を切らし、彼の前に立つ。
驚いて目を見開いた彼は、俺をじっと見つめると、やがて――。
「おかえり」
そう言って、微笑んだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?