椎葉ユズル

小説と漫画が好きです。好きなことや思いついたことをつらつらと。メンタル弱めです😵 エブ…

椎葉ユズル

小説と漫画が好きです。好きなことや思いついたことをつらつらと。メンタル弱めです😵 エブリスタ様で小説もどき公開してます。が、ほぼBL(過激表現)ですので苦手な方は避けてお通りください……。お好きな方はぜひ♪ https://estar.jp/users/154915071

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  • 小説を書く。

    毎日短い小説を投稿している分のまとめです。ほぼBLです。

最近の記事

小説を書く。その70【BL小説】

 ずっと、一緒に走っていけると思っていた。  俺もお前も大人になんかならず、いつまでも十八の頃のままで。風を切って思うままにバイクを転がす日々が、いつまでも続くと思っていた。  紫煙を燻らせながら、真っ青な空を見上げる。 「あー……」  俺だけ年食っちまったよ畜生。  手元にある写真の中、笑顔のお前。  お前はいつまでも十八歳で羨ましいぜ。 「まあ、そんなお前の分も、がんがん呑んどいてやるよ」  にひひ、と悪戯っぽく笑って舌を出す。  腰まである髪が肩から落ちて

    • 小説を書く。その69【BL小説】

      「では、再会を祝して」 「乾杯」  細身のグラスをカチリと合わせる。淡黄色の液体が動きに合わせて揺れる。 「ほんとに久しぶりだな。何年ぶりだ?」 「お前の結婚式以来だから……二十年くらいかな」  いつものバーで懐かしい顔に出会った。高校の同級生だった新見。年月が経ってもヤツのイケメンぶりは相変わらずで、印象はまるで変わらない。いや、目尻の皺や肌の張りはさすがに衰えも見えるが、それが返って男を上げてるというか。年齢を重ねて熟練した味を醸し出している。 「そんなに会ってな

      • 小説を書く。その68【BL小説】

         薄明かりの中、ふと目が覚めた。  乱雑に閉められたカーテンの隙間から、街の灯りが細く入り込んでいる。  ぼんやりした頭で今日の出来事を思い起こす。今日はミステリ研の飲み会で……そのまま先輩ん家で飲み直すことになって。  いつも討論になる同期の桐山と、今月の新作ミステリについて、やっぱりぎゃあぎゃあやり合って……寝落ちしたってことかな。  辺りには複数の人の気配が感じられる。何時だろう。夜中には違いないが。  スマホが近くにないか探そうと手を動かしたら、何か温かいものに

        • 小説を書く。その67【BL小説】

           今宵は満月。中秋の名月。 「かんぱーい」 「何度目だよ、お前」  呆れたように返してくるけど、ちゃんとグラスは重ねてくれる。ガラスの当たる涼しげな音が酔った体に心地よく響く。  会社の同期として出会って十年。なんだかんだあって付き合いだして七年。一緒に暮らし始めて五年。  お互いノンケだったのに、まさかこんな関係になるとは。  じっと顔を見ていると、「なんだよ」と額を軽く小突かれた。  月は綺麗だし、気持ちいいし。 「……ずっとこうしてたいな」  ぼそっとつぶ

        小説を書く。その70【BL小説】

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        • 小説を書く。
          70本

        記事

          小説を書く。その66【BL小説】

          「ふわああぁ……」  今日もいい天気だ。俺は前庭に出て、大きく伸びをした。早朝の空気は心地よい。  箒を手に、俺は朝の日課である庭掃除を始めた。  ここ、中高一貫校の男子寮の管理人になってはや半年。早寝早起きにもだいぶ慣れてきた。  脱サラして念願のラーメン屋始めたはいいものの目論見甘く失敗し、借金まみれの俺を拾ってくれたのは、この学校の理事長の息子であり、旧友の西園寺だ。  借金を肩代わりしてくれた上に、寮の管理人という職まで斡旋してくれた。もう感謝してもしきれない。

          小説を書く。その66【BL小説】

          小説を書く。その65【BL小説】

          「あんたのお父さん、実は宇宙人なのよ」 「は?」  唐突に母親からそう告白された。  いやいやいや、マジで?  ていうか、今この時間、俺からかーちゃんにカミングアウトしようとしてたんだけど? ……ゲイだって。  「ちょっと受け入れ体制整えるから待っててね〜って言って、十五年よ、十五年! 今更何よってカンジでしょ!」  どん、と小さい二人用のテーブルを拳で叩く。母一人で俺をここまで育てるのは相当苦労しただろう。ずっと放っとかれて文句のひとつも言いたくなるのも分かる。

          小説を書く。その65【BL小説】

          小説を書く。その64【BL小説】

           華やかな舞踏会。  この国の王侯貴族の子供たちは、十六歳になったら社交界デビューする。  社交界と言っても、小さい頃から顔なじみの面々が揃うだけなので、特に感慨深いものもない。一足先にデビューした姉は、『玉の輿を掴む!』って燃え上がってたけど。 「ねえ、知ってる? アルベルト」 「なに?」  美しい弦楽器の四重奏を背に、不肖の姉がこっそり話しかけてくる。 「今夜ね、帰ってきてるらしいのよ、レオンのやつ」 「ああ……」  噂だけは聞いている。窮屈な貴族社会が嫌になって海

          小説を書く。その64【BL小説】

          小説を書く。その63【BL小説】

           俺、鈴木悠里には、同姓同名の友人がいる。  鈴木柚李。最初にヤツに出会ったのは銀行の窓口だった。  大学生になり、銀行口座を作ることになって『鈴木様〜』と呼ばれた際、たまたま隣に座っていたヤツと一緒に立ち上がったとき。  次に会ったのは、学校近くのコンビニ。  三度目の遭遇は住んでいるマンションのポスト前。  短期間でこれだけ会ったら、もう友達になる運命だろって、その場で連絡先交換した。  呼び合うのも同じ発音になってしまうので、漢字の読み方から俺が『ハルサト』、ヤ

          小説を書く。その63【BL小説】

          小説を書く。その62【BL小説】

           ずっと、父のようになりたいと思っていた。父の背中を見て育ち、将来は父の役に立ちたいと思っていた。だからこそ、 『もういい。お前には、失望した』  見捨てられた、と感じた。  父にとって、自分の期待に応えられないような息子は存在する意味もないのだろう。  父に認められることこそ、俺の生きる意味だった。希望だった。俺を取り巻くすべてのものが即座に色褪せ、価値を失っていく。   それならば。  それならば、いっそ。 「――若様」  闇に引きずり込まれそうになっていた俺

          小説を書く。その62【BL小説】

          小説を書く。その61【BL小説】

           あー、飲み過ぎた。  真夏の平日の終電は程よい混み具合で、何駅か過ぎた時点で座ることができた。  座った途端、どっと疲労感が全身に押し寄せる。到着駅までにはまだ時間がかかる。少しだけ、と思いつつ、俺は目を閉じた。  肩にかかる重みで目が覚める。  隣に座る男性が、俺に凭れかかって眠っていた。    不思議と心地悪さはなくて、かえって重みと体温に安心感を覚える。  ふと横に目線を投げると、前髪の隙間から長い睫毛が見えた。    どんな顔をしてるんだろう。  正面からじっ

          小説を書く。その61【BL小説】

          小説を書く。その60【BL小説】

           この世界は、狩るものと狩られるものに分かれている。  それは、生まれたときにすでに決められている。運命をかえることなどできない。  狩るものとして生まれた俺は、仲間とともに今日も狩りに出かけた。いつものように。  逃げる標的を発見し、銃口を構える。群れから一人、遅れている個体に照準を合わせた。  照準器越しに、その顔を見――俺は動けなくなってしまった。  美しかった。今まで狩られるものたちの顔など、はっきり区別したことなどなかったのに。  どうしようもなく胸が震え

          小説を書く。その60【BL小説】

          小説を書く。その59【BL小説】

          「あー……」  疲れた。  部屋に帰り着くなり、ばったりとベッドに倒れ込む。忙しい時期とはいえ、毎日午前様はさすがにキツイ。  床に投げ出した鞄の中から、電子音が鳴った。 『おつかれ。今日も残業?』  彼からのメッセージに、心が躍る。  付き合い始めて一週間。なのに仕事仕事で全然会えてない。 『今帰ってきた〜。なかなか時間できなくてごめん』  急いで返信を打つ。  なんて返ってくるかドキドキしながら画面を見つめていると、電話の呼び出し音。心臓が止まりそうになる。

          小説を書く。その59【BL小説】

          小説を書く。その58【BL小説】

           俺の恋人は、ワガママだ。  ワガママで、そして分かりにくい。  むすっとして無愛想に見えるのに、実はかまってほしいとか。 『もういいよ、自分でやるから』って怒るときは、ホントは俺にやってほしいって意味だとか。  すぐ甘えてくるくせに、気がそがれるとふいっと自分の部屋にこもっちゃったり。  かと言って放っておくと拗ねちゃうし。  でもなんだかんだひっくるめて――。  可愛いんだよなあ。 「……何か言ったか?」  ソファで寛ぐ俺の膝に頭を乗せてゴロンと横になり、見上げ

          小説を書く。その58【BL小説】

          小説を書く。その57【BL小説】

          「お前、いっつも邪魔なんだよ!」 「それはこっちの台詞だ」 「今日は俺が先に穂高と約束してたのっ。お前は一人寂しく帰ってくれ」 「お前、穂高が嫌がってるの分かんねえのか? 鈍い奴だな」 「あーもうっ。二人ともいいかげんにして!」  愛しの穂高の大声に、はっとする。大学の構内で言い争って、いつの間にか注目の的になっていた。 「ごめん、穂高。それもこれも杉原の声がデカすぎるもんで」  さっと穂高の横に立ち、さも自分は被害者であるかのごとく振る舞うヤツにムカッとする。

          小説を書く。その57【BL小説】

          小説を書く。その56【BL小説】

           爆撃が砦を掠めていく。  もうここも長くは持たないだろう。 「……隊長」 「……そろそろだな」  このまま突撃か。籠城か。  判断の時が迫る。  あの方は無事逃げおおせただろうか。我々は、少しは時間稼ぎになっただろうか。  あの方が生きながらえてくだされば、それだけで。    それだけで、我々は……私は。

          小説を書く。その56【BL小説】

          小説を書く。その55【BL小説】

          『気持ち悪い』  そう、はっきりと突き放された。  こいつなら、受け入れてはくれなくても理解はしてくれると思っていた。でもそんな淡い期待は見事に打ち砕かれた。  ――実は俺、ゲイなんだ。  もしこいつが理解を示してくれたなら、続けたい言葉があった。  ――俺、お前のことが――。  すべてを拒絶するかのような冷たい物言いに、俺は口を閉ざすことしかできなかった。  だから、俺が恋愛に対して臆病になってしまうのは仕方ないと思う。  たとえ好意があるように見えたとしても

          小説を書く。その55【BL小説】