小説を書く。その68【BL小説】
薄明かりの中、ふと目が覚めた。
乱雑に閉められたカーテンの隙間から、街の灯りが細く入り込んでいる。
ぼんやりした頭で今日の出来事を思い起こす。今日はミステリ研の飲み会で……そのまま先輩ん家で飲み直すことになって。
いつも討論になる同期の桐山と、今月の新作ミステリについて、やっぱりぎゃあぎゃあやり合って……寝落ちしたってことかな。
辺りには複数の人の気配が感じられる。何時だろう。夜中には違いないが。
スマホが近くにないか探そうと手を動かしたら、何か温かいものに当たった。
「?」
薄闇の中で目を凝らす。
あ。
桐山の寝顔が間近にあった。
いつもの憎たらしい顔がすっかりだらけて、少し幼く見える。
すうすうと規則正しい寝息が、俺の頬に当たってくすぐったい。
……見慣れた顔だけど、こんなに近くで見るのは初めてだな。
闇に慣れてきた視線が、桐山の目元で止まる。
こんなに睫毛長かったかな。鼻も結構高いし。唇の形だって、意外と分厚くて触ったらぷにっとしてそうで……。
知らず知らず、自分の指が伸びているのに気づき、はっとした。
何やってんだ俺。
慌てて指を引っ込めて、ぎゅっと握り込む。
寝よう寝よう、もう。
寝返りをうち、桐山に背を向けて目を瞑る。
だが穏やかな眠りは、なかなか訪れてはくれなかった。
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