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3年ぶりの桜

 2年前の早春、桜が咲くまで父は生きていられるだろうかと思った。ホスピスは父が好きだった京都の山々が見える病室を選んだけど、最期のほうは窓の外を見る元気もなく、結局、父は桜を待たずに亡くなってしまった。それから私たち家族にとって春は少し悲しい季節になった。

 先月、父の三回忌が終わった。

 三回忌もコロナ禍での開催となり、親戚みんなで集まって食事をすることはできなかったけれど、法要にはみんなが集まってくれた。お経の間、赤ちゃんが最初から最後まで大泣きしていたため、私と夫でラグビーボールのように赤ちゃんをパスし合ってあやし続け、法要の間は父のことを思い返す余裕もなかった。無事に法要が終わったあと、泣き疲れた赤ちゃんは夫の抱っこで爆睡。父に会ったことのない赤ちゃんが誰よりも泣いた三回忌となった。

 そして桜が一気に咲いた。

 今年の桜は長もちで、1週間まるまる京都が桜色に染まった。近所の鴨川沿いはもちろん、六角堂、先斗町、桂川とたくさん桜を見に行った。1週間で2回も植物園へ行き、木陰にレジャーシートを広げて1日中桜を眺めた。3年ぶりに桜を見た気分だった。今年の桜が格別にきれいだからか、コロナの自粛ムードが弱まっているせいか、三回忌が終わったからか、赤ちゃんと外出しやすくなったからか、とにかく春が来てこんなにうれしいのは3年ぶり。私も赤ちゃんも1週間で日に焼けた。

 お花見を楽しむ大学生とか、桜吹雪の中を歩く新入生とか、近所の中学校の入学式に出席したお母さん方のコサージュとか、久しぶりに春らしい光景をたくさん見た。今日はピカピカの1年生になった甥っ子から葉書が届いた。かわいい字で「いちねんせいになったよ!」と書いてある。私まで何か新しいことを始めたくなる季節。

 

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