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てんとう虫のブローチ

 父が夢に出てきた。かなり久しぶりだ。

 父はとても元気そうだった。チェックのシャツを着ていて、ベージュのチノパンを履き、いつもの茶色いセルフレームの眼鏡をかけていた。髪は白髪がメインになっていて、生きていたらこんな風だろうな、という感じ。

 私と父は、久しぶりに会って、一緒に何かの講義を受けているようだった。次の講義の教室へ移動するために、階段を下りる。階段は急で、私は父に手すり側を譲った。「最近、階段下りる時に足が痛いねん」と父が言った。私は、お父さんもいい年やもんな~と思いながら、「この階段急やし、段差が大きいもん。私でも足疲れるで」と、励ました。

 次の講義の教室に入り、席につくと、父が「これ、お土産」と箱を渡した。開ける前からその箱には、てんとう虫のブローチが入っていることを私はなぜか知っていた。箱を開くと、思ったとおり、赤いてんとう虫のブローチと、それから小さいギターのブローチが入っていた。私はものすごくうれしくて、「やっぱり! このてんとう虫、絶対くれると思ってたから、欲しかったけど自分で買わへんかってん」と言った。ギターのブローチは、青くて金色の縁取りがあった。

 てんとう虫に加えて、ギターのブローチまでくれるなんて、いかにも父らしい、と夢の中の私は思った。久しぶりに会ったんだし、講義が始まるまでの時間に、父にいろいろ話したいことがある。

 そこで目が覚めた。

 父は、ちょっとした贈り物が好きな人だった。誕生日には必ずちょっとしたプレゼントをくれたし、バレンタインに何もあげていないのにホワイトデーに贈り物をくれたりした。一度、私が父に本を貸した時、"Thank you!"と書かれた付箋と星のキーホルダーをつけて返してくれたこともあった。

 最後まで楽しい夢でよかった。てんとう虫のブローチ、かわいかったな。


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