Law PracticeⅡ民法(5版)10問
【前置き】
(1)作成の意図等は、以前の問題を参照されたい。ただし、幸運にも司法試験合格という目標を達成し、一応、受験生という立場から脱した現状において、主な目的は、修習や実務に向けた、民法、要件事実の実力底上げということになる。
(2)上記に加え、会社法や労働法、倒産法、それに司法試験以来、放置してある刑事系の勉強もしっかりとやっていくつもりである。
【本問について】
(1)まず、問題文、解説ともに、他の大半の問題と異なり、受験生ファーストで、Law PracticeⅡ民法(5版)の問題の中でも、最も受験に適している問題の一つのように思える。
(2)この1問と、末尾の【発展問題】で、法定解除の要件論はフルカバーできる。
✳︎効果論は第11問(潮見先生担当)で。
(3)本問を通じた学習のなかで、またもや自分自身の至らなさを痛感した。
まず、541条但書を全然正確に読めてすらいなかった。
具体的には、『その期間を経過した時における』の部分である。
これは、以下に述べる、軽微性と契約目的不達成の関係についての理解に関わる。
(4)改正前民法では、重大な契約違反がある場合にのみ、解除が認められるべきと解されていた(ようだ)。
(5)改正債権法は、(4)を踏まえ、
重大な契約違反
=債務不履行+催告+相当期間経過(催告解除)
or
契約目的不達成(無催告解除、542条1項各号)
の場合に、解除の正当化根拠があるとするものである。
催告解除においては、催告後、相当期間末日の経過時に、これらを全体として考えたときに、重大な契約違反と評価できないと、軽微性による抗弁が認められるということである。
(6)以上を踏まえ、契約目的不達成ではないが、軽微ではないという事情もあり得ることになる(この場合には、無催告解除はできないが、催告解除は可能。ゆえに、催告解除と無催告解除を両方検討する必要が生じるのである)。
重大な契約違反、契約目的不達成、軽微ではない、の各概念の相互関係を正確に理解することに努めるべきである。
(7)【発展問題】については、いわゆる複合契約・複数契約と解除という、典型論点である。
もしかしたら、予備校の論証集は、①密接関連性、②…、③…という、要素に分けた規範定立をしているかもしれない(私は、民法に関しては論証集を使っていないので詳細を知らないが)。
しかし、ここは、判例の規範とあてはめがあるところなので、あてはめ部分は補充しつつ、なるべく判例に忠実に論述した。
703条のあてはめで、『形式的には…正当』という部分を漏らさないようにするのと同様に、『同一当事者間』の認定も落とさないよう、注意を払いたい。
なお、要件事実は、要件事実民法5-1(大江)にどんぴしゃの記述がある。