Law PracticeⅡ民法(5版)7問
【前書き】
他の問題で確認されたく。
あくまで自習用。
前向きな助言、批判、応援は大歓迎です。
本問は、時間、労力を過去最高に費やした、最重要問題のひとつ。
以下,ボリュームあり。
今回は補論も記載しているため。
【本問について①(問題の分析所見)】
重要度 A+
難易度 標準
(1)R5司法試験設問2で出題された論点。
R5司法試験は、本問と異なり、取立債務であり、かつ、通知がない(第7問関連問題は、取立債務で、分離がない)。
R5司法試験に出題されているものの、なお、重要度はA+で、本書掲載56問のなかで、最も重要な問題のひとつだと思う。
(2)例によって、正確な主張反論の組み立てや、論点抽出のために必要となる問題分の事実が足りず、Yの反論も不明なため、論述、BD(ブロックダイアグラム)ともに、こちらでそれら不足する事実を想定、補充して作成している。
(3)この手の問題(いわゆる債権の一生問題)は、論じ方、流れを身につけないと、本番でぐちゃぐちゃになる。
論じ方は、初学者の段階では、模範解答等を参考に真似する他ないが、単なる暗記では少し捻られるだけで崩壊する。
最終的には、深い体系的理解が必要となる分野で、実力差が最も現れる分野である。
【本問について②(答案作成方針等)】
(1)解除を導く根拠を、①413条、②特約・合意、③541条と、明確に分けて論じた。
特に、①と③の区別ができていないという趣旨のR5採点実感を意識した。もっとも、①と③をこのように完全に分けてしまうやり方が正しいという裏付けを明確にすることはできなかった。
✳︎なお、Xの主張については、要件事実民法4(大江)を参考に、『受領遅滞に基づく解除』の要件事実でBDを作成している。
また、契約解釈を重視する改正債権法では、②を常に意識したいと考え、気を配る癖をつけている。
(2)法定解除の根拠条文は、541なのか、542なのか、多少悩んだが、調べた限り、541が正しいようなので、こちらを選んだ。7.8月単体ではなく、契約全体を考えた場合、542条1項5号もありなのではないか。
(3)設問後段は、特定あり、で論述した。
このようなケース(分離しきっていない)の処理について明示している文献はなかった。
解説者(北居氏)は、特定なし、としながら、結論の妥当性からいきなり危険の移転を肯定しており、『ケースで考える債権法改正』で批判されている。
この点については、以下の補講を参照されたい。
以下、補論:(前提知識整理)
[参照]
『ケースで考える債権法改正』5.16.19章
新注釈民法(8)
プラクティス民法債権総論第5版補訂(潮見)
債権各論1(潮見)
債権総論(中田)
契約法(中田)
【受領遅滞中の履行不能】
(1)特定物売買
413の2と567条2項のどちらを適用すべきか。
(ア)どちらも適用可能な場合
法的性質論による
①567条2項特則説→567条2項を優先
②567条2項確認説→どちらでも良い
(イ)適用場面が異なる場合
①一部不能『損傷』
→567条2項のみ
②引渡し以外の協力義務が問題になる場合
→413条の2
③413条の2は、『履行不能』(という評価的概念)を立証しなければならないが、567条は、目的物の滅失・損傷で足り、後者の方が立証は楽(潮見によれば567条2項の存在意義)
(2)種類物売買
(ア)引渡し前の履行不能(受領遅滞なし)
①401条2項説→特定のみで給付移転
②567条1項反対解釈説
→特定のみならず、引渡しまで必要
(イ)受領遅滞の場合の履行不能
①567条特定根拠説
②567条引渡根拠説
→潮見説は、②に立ちながら、引渡しがなくとも、買主の態様たる受領遅滞に危険移転の根拠を認める
✳︎567条の適用において「特定」はマスト
特定していれば、特に同2項は、特定物売買と同じ扱い
✳︎特定していない場合の処理について、ロープラ北居のそれは、なんら解説がないと、『ケースで考える債権法改正』76pで批判されている
←北居説明は、上記潮見説に近いか
【567条追補】
(1)『引渡し』の意義
→実質的支配の移転(縮小解釈)
✳︎ただし、占有改定が一律に含まれないわけではなく、その態様からして実質的支配移転が認められる場合には、占有改定でも『引渡し』にあたる。
(2)567条適用の前提
→契約適合物でなければならない。
(3)そもそも、受領遅滞において、それより前に履行不能になっていてはいけない。
【その他参考文献】