Law PracticeⅡ民法(5版)38問
【雑感】
※本題研究にしか興味がない人は、【本問について】まで飛んでください。
(1)有給消化に入ってから、これまでとは質が異なる忙しさに見舞われ、X等を見る機会も僅少で、今回は雑感をなしにしようとも思いました。
しかし、たまたま、本日あるポストを見かけて、常々思っていたところが表面化したので、自分なりの考えを記すことにしました。
(2)テーマは、定期的に発生し、特に予備試験の論文結果発表後には激しくなりがちな、司法試験合格のボーダーは予備試験の何位相当か、という議論です。
結論として、多くの予備試験経由合格者の認識同様、有益な議論ではないと考えています。
特に、ロースクールで真摯に頑張っているかたや、ロースクール経由の合格者を不快にさせかねない内容ですので、そのような方向での議論は極力控えるべき事柄であると思います。
(3)再三述べているように、また、多くの予備試験経由合格者が指摘しているように、司法試験と予備試験では求められている能力が全く同じというわけでなく、似て非なる側面が多々あります。
それに、予備試験合格までには通算で多量の時間を投資でき、結果として上位合格したとしても、わすが数ヶ月で司法試験の準備をしなければなりません。
どのかたの指摘かを失念しましたが、学部予備合格者、ロー在学予備合格者の司法試験におけるパフォーマンスは、予備試験のそれと強い相関性が見られます。
他方で、それ以外、特に社会人予備合格者(専業に近い学習時間を確保できる場合を除く)は別に考える必要があるという発言がありました。
かかる指摘は賛同できる部分が多いです。
(4)制度としての問題、矛盾はさておき、現状の法曹に対する正規ルートは法科大学院を経由することです。
このような仕組みや制度に素直に従い、相応の犠牲を払い、負担を抱えて途を切り拓かれている方々の実情を知らないまま、この方々を不快にするような言説を軽々とするべきではないです。
私のように、様々な理由でロースクールに通うことが事実上不可能なものにとっては、予備試験という制度の存在そのものが、ただただ、ありがたくて仕方ありませんでした。
(5)そもそもこの議論をすることに何の意味があるのでしょうか。
比較的上位の順位で予備試験に不合格となったかたの自尊心強化と、受験継続への意欲を支え得るかもしれません。
指導者はこの発言により、予備試験受験生という顧客の支持を強めることができるかもしれません(強かなビジネストークであるのか、薄っぺらい義憤にかられてたものであるのかを知る由はありません)。
しかし、逆に言えば、ロースクール経由への転換のきっかけを奪うことや、順位に甘んじて翌年に向けた全身全霊の努力を怠ることにも繋がりかねません。
(6)予備試験合格は依然として難易度が高く、運の要素も含まれます。
しかし、運の要素が含まれるのは、予備試験や各種試験に限りません。
いま、横にいる大切な人との出会いや職場も、あるいは運に導かれたものではないでしょうか。
家庭があり、フルタイムで働きながら、予備試験合格に挑むにあたり、合格までのことだけを考えれば良いわけでないことも実感しています。
修習中の生活収支、弁護士一年目のそれ、就職活動など合格後の様々もひっくるめた、綿密な計画に基づいて受験を志すべきことを(予備校は触れないので)、私を含め、少ないながら存在する経験者が発信するメリットも無くはないとも思います。
(7)以上より、司法試験合格ボーダーは予備試験何位か、という議論をしている時間、そのような言説に熱心に耳を傾ける時間があるのであれば、目の前にある、やるべきことに集中すべきというのが私の結論です。
【本問について】
(1)第29問とセットで抑えるべき問題です。
両者で、共通するところが多く、特に、「相殺への合理的な期待」の中身を具体的に論じることができるか否かが理解力の見せ所ですので、しっかりと研究・準備しておくべきでしょう。
また、469条2項2号は、差押えと相殺について定める511条にはない規定ですので注意が必要です。
(2)第38問に取り組む前に、第36問(譲渡禁止特約)、第37問(集合債権譲渡担保)にも取り組んでおくべきでしょう。
譲渡禁止特約は、条文が入り組んでおり、要件事実も多層となるので一度確認しておくべきでしょう(『紛争類型別』(司法研修所)で取り扱いがある以上、予備試験論文の実務基礎民事、口述試験で出題されても文句は言えません)。
総じて、債権譲渡まわりについては、そろそろ出題されてもおかしくないので、短答対策と併せて、網羅的に抑えておくべきです。
(3)【関連問題】については、例によって、解答筋だけはわかるような、最低限の論述にとどめていますので、参考にしていただく際には、ご注意ください。