Law PracticeⅡ民法(5版)15問(12/11論述例修正済)
【前書き】
(1)先週、今週、来週と忘年会(兼諸々、数名単位の少人数に限る)が立て続けに入っていることに加え、刑事系や倒産法等の勉強、並びに、英語学習(実務に出た後、猛烈に必要なことが予期に反して確定)を再開しているため、スピードダウンしてしまっています。
(期待してくださっている方がいるとすれば申し訳ありません。)
(2)今後については、年末年始や、有給日が多くなる1月、完全に有給消化となる2月から修習開始前の3月18日までに、ロープラⅡ全体と、Ⅰ及びⅢの重要問題について一気に仕上げていくつもりです(予定)。
(3)今後取り扱う問題の順番について、ありがたいことにご要望をいただいたので、当該問題を優先的に取り組む予定です。
そのなかでも、R6司法試験に向けて私が(予備校等の予想に準拠して)出題予想をし、重点的に準備していた、第26問(表見受領者に対する弁済)、第31問(連帯債務)、第32問(根保証)、第48問(過失相殺)、第50問(未成年者と監督義務者の責任)、第53問(工作物責任)、第55問(共同不法行為:過失相殺)から着手していきます。
(4)本問を通じて再認識したことは、LawPractice民法Ⅱを独習する上では、法律学の森シリーズ(信山社)を手元に置くことは極めて有用ということです。
とりわけ、新債権総論Ⅰと新契約各論Ⅰは必須と言ってよいと思います。
学生さんや受験生にとっては金銭的負担が重く、また、入手困難となっている点が悩ましいですが、大学やロースクールの図書館等で確保するなどしたいところです。
【雑感】
(5)倒産法についても、民事保全・執行法同様に、実務マニュアルで流れとイメージをつかんだ後に、基本書で理論や体系を学ぶという流れが自分には心地よいです。
多くの方が推奨される『事例でわかるリアル破産処理事件』(永野達也弁護士著/学陽書房)は、噂に違わぬ逸品でした。
(6)X(旧Twitter)を、いわゆる鍵垢にしている理由をたまに聞かれるのですが、当初は誹謗中傷対策でした。
発信内容を正確に理解しないまま、場合によっては曲解されたうえで、根も葉もない誹謗中傷をされてまでXをやる必要はないと思いました。
合格者の大半は、自分自身が受けた恩恵を他人に返したいというマインドで発信しているはずです。
しかし、極一部の受験生が、そのような発信を自分自身に対する「配慮」が足りないとばかりに難癖をつけ、匿名を無敵と誤信し、誹謗中傷を何のためらいもなく感情の赴くままに行います。
結果として、多くの合格者は有益な発信をやめ、信頼できるFFだけの鍵垢に閉じこもってしまいます。
(7)これとの関連で、たまたま、先日、元裁判官の方がNOTEにおいて、まさに大盛況である合格体験記を鵜吞みにすることの危険性や、合格者に指導を仰ぐことへの疑問を論じていらっしゃいました。
賛同できる部分が多々ある(いつも、唯一無二の貴重な記事を執筆されており、大変興味深く読ませていただいています)一方で、試験と受験者のレベルは年々変化しており、直近合格者の知見はやはり有益というべきで、受験知識や受験戦略においては、受験後数年経過している合格者の実務家や予備校講師との比較で、直近合格者に断然、分があると考えています。
予備校講師、弁護士先生といってもピンキリで、指導経験の豊富さが加わった一合格者とひとまずは考えて良いと思いますし(そもそも実務で多忙のため、自己研鑽や、Xに購入ポストした基本書を読む時間を確保出来ていない方も少なくないのでは…)、実務を知らないと民法等を理解できないということは、根拠に乏しい論説にすぎないように思います(研究者はどうなるのでしょうか)。
結局、必要に応じて、直近合格者、プロ講師、実務家を使い分けて、主体的に学べばよく、この点においては執筆者の方とおそらく同旨なのでしょうが、少々誤解を招き得る、強い表現が目立ったのが少し残念でした(『直近合格者』としての賞味期限は、せいぜい1〜2年と短く、その間の少々の『イキり』くらい、法曹の大先輩として大目に見ていただきたいという思いです。想定される反論としては、発信者への批判ではなく、受信者への注意喚起というものでしょうが、実質的に読解する限りにおいて、発信者や指導を志すものに対する釘刺しと理解して良いと思います)。
(8)話は逸れましたが、現状、Xの利用は、主に78期予定者の方(と、特にこれまで絡みがあった方)との交流、情報交換の場として活用しています。
このような用途の場合は、なおさら鍵垢のほうが良いと考えます。
合格者同士の交流は、それ以外の人、具体的には、極限状態でもがいていらっしゃる受験生の方には、必ずしも心地よいものとは言えない(このような心持ちがむしろ自然で、合格者と同じように騒いでいる方が危険)と思われるからです。
【本問について】
(1)第8問、第11問、第42問等と同様に、最重量級の問題でした。
この問題に取り組む過程で、受験期に学んでいなかった問題点(本問の解答には直接関係ない理解及び論点)に数えきれないくらい遭遇し、自身の不勉強を猛烈に恥ずかしく思いました(N回目)。
(2)契約不適合の分野は、債権法改正後、本試験及び予備試験における中心的な出題分野になっています。
引き続きの出題に備え、本問と直接関係ない論点や知識についても別紙にまとめる予定です。
(3)この問題の解説についても、例に漏れず、事例解説(あてはめ、結論)は僅少で、一般的説明が大半となっており、直截的とは言い難いです。
また、石川先生御担当ということで、見過ごす程度に、さらっと触れられている難しい議論もあります。
新契約各論Ⅰ(潮見、信山社)や、契約法(中田、有斐閣)を読み込んでいない人は、スルーしてしまう危険性が高いです。
(4)石川先生の解説を読む限り、表面的には、代金減額請求における、減額の算定方法、算定基準時、566条失権効がメインのように思えます。
しかし、契約不適合の場合における、買主の救済手段の全体像、各々の手段の相関関係、各々の手段の正確な要件検討に関する理解を要求されている良問です。
(5)まずは、追完請求について、これを最初に検討すべき理由を軽く冒頭で論じました。基本事項ですが、しっかり抑えておきたい内容です。
次に、追完請求をするためには、追完可能であることを、民法が前提としていることを確認した上で、412条の2を参照しつつ、第13問同様に、追完不能について、規範を定立した上で、あてはめをすることが求められます。
論証のベースは新契約各論Ⅰの該当箇所ですが、要約だけでなく、何度も何度も読み返し、何度も何度も書き直して最終的に落ち着いたものを記載しました。
[追記]
12/9にあげた論述例が少しわかりにくいので、12/11(22:15)に手直しをしました。
(6)順番が前後しましたが、契約不適合についても、出回っているものに見られる『裸のあてはめ』ではなく、(本問では明らかとは言え、他の問題への対応力を上げるためにも)、規範を定立した上であてはめをすべきでしょう。
具体的には、契約解釈による契約内容の確定と、その内容と現実に引き渡された目的物が合致しているかの、2段階の枠組みを最低限示すべきです。
なお、契約解釈の重要性は、受験業界でも近時主張されています。
山本敬三先生の民法講義シリーズ(総則、契約)が詳しいほか、論述例は、上記『新契約各論Ⅰ』と『契約法』を参照して、規範を定立しました。
問題解決に必要がなかったため、両当事者の意思が不明な場合(補充解釈等)については言及していません。
[追記]
12/9にあげた論述例が、問題文の事実を丁寧に引用していなかったため、12/11に手直しをしました。
(7)代金減額請求については、解説の分量や問題文の事実に鑑みれば、算定方法と算定時期がメインで習得すべき論点であることは間違いないです。
私自身、予備試験受験生の頃、伊藤塾のコンプリート答練で出題されたときに、いずれについても知らずに酷い目にあったことを鮮明に記憶しています。
加えて、566条の解釈、あてはめもメイン論点の一つになります。
澱(おり)のないことではなく、中級ワインであることに気がついたのは、引き渡しから1年半が経過してしまっていることを指摘しつつ、ラベルの貼り間違いという、売主の重過失による不知を指摘すべきでしょう。
以上は比較的把握しやすい論点ですが、代金減額請求は、追完請求に劣後すること、一部解除の性質を持つこと、形成権である以上、もはや他の救済手段を利用できないと解されること、これらを理解しておく必要があります。
なお、新契約各論Ⅰの該当部分を見る限り、代金全額が既払いの場合には、563条の効果として、直接、既払代金額と、減額された代金の差額を請求することが出来るのであって、わざわざ、703条をかませる必要はないと解されます(R6司法試験では、賃料既払いの場合における、賃料減額請求について問われましたが、潮見先生イエローによれば、やはり、703条をかませることを不要と解しているようです)。
(8)損害賠償、解除については,解説の分量からわかる通り、追完請求や代金減額請求との関係に配慮しつつも、軽く触れるだけで良いでしょう。
学習の便宜のために、他の問題でも触れた、追完に代わる損害賠償請求権の法的性質論(根拠条文と追完の催告の要否)についても触れました。
この場合、澱のない特級10本、中級の10本、いずれが対象であるのかを明示しないと、履行に代わる損害賠償請求権と区別できないので注意が必要です。
【発展問題について】
両設問ともに、旧法下における『隠れた瑕疵』の解釈、認定が問題となる事例であると思われ、ゆえに、第15問の発展問題に位置付けられたのだと思料します。
ただし、設問1は、信義則上の説明義務違反を論じればよく、これに関しては第4問を参照していただければ良いと思います。
設問2は、買主Xが事情を知っていた、あるいは、解決されると軽信したことを、どのように法的に意味づけるかについて悩みました。
現時点での見解を論述しましたが、後日変更するかもしれません。