友だちは世代を超える
最近、うれしかったことは?
ワークショップのアイスブレイクでファシリテーターからよくこんな質問がある。いつも何と答えようか悩むのだが、今ならしばらく使えそうなネタがる。
町にすごい中学2年生がいる。彼女Mさんはこの町の小学校を卒業した後、自分にやりたいことがあったので県内の中高一貫校を受験し、今は電車で1時間かけて通学している。小学生の頃から町の子ども会議に積極的に参加し、私が教育長としてこの町に来た昨年からは、新しい教育大綱の策定のための会議にも参加してくれて、『子どもたちは未来からの留学生』という教育大綱のテーマをそっくりそのまま感じさせるような意見をたくさん述べてくれたりした。
ある時、Mさんが町の交流センター「MiiMo(ミーモ)」に時々ピアノを弾きに来ていることを知った。ストリートピアノ用に設置しているピアノで、いつでも誰でも弾けることになっているが、他人前で弾くのはなかなか勇気のいることだ。会議に参加してくれた時に、一度私の下手なギターとセッションしてくれないかと提案したら快諾してくれた。それが私たちのバンド『未来からの留学生』のはじまりだ。
セッションに選んだのはRADWIMPSの『正解』。彼女のような若者の気持ちを代弁しているような歌詞をMさんも気にいってくれた。彼女の学生生活も忙しく、私の予定ともなかなか合わなかったが、今年の春から数回、二人で音楽を楽しんだ。Mさんの母親も練習風景を見に来てくれて、「こんなふうに弾けるなんて知らなかった…」と娘の姿に感動しておられた。彼女の学校の話などを聴きながらセッションする時間は至福のひと時だった。
秋になり、Mさんは自分の学校の文化祭に私を招待してくれた。彼女が地元の中学校ではなく中高一貫校に進学したのはどこに魅力があったのかを知りたかったこともあり、行ってみることにした。受付からそれぞれの催しまで、すべて生徒が運営しており、教員の影はまったく見えなかった。高校生の指導のもとで中学生も生き生きと自分をいろいろな形で表現していた。
校内をMさんにいろいろ案内してもらって歩いていると、一組の親子と出会った。子どもは小学生の女子だった。父親のほうがMさんに気がついて声をかけてきた。どうやら以前に学校説明会があり、そこでMさんがこの親子に中学生の目線で学校生活を説明したことがあったようだ。父親は横に立っている私に気づきMさんに「あ、お父さん?」と聞いた。
いやいや、間違えるなら「おじいさん?」でしょう。などと思いながら、どう答えてよいか一瞬迷っていると彼女はすかさずこう答えたのだ。
「いえ、友だちです。」
友だち…。
なんとうれしい響きか。世代を大きく超えて、未来からの留学生が私を友だちの一人に加えてくれたと思うとうれしさがこみあげてきた。
という話。
前説が長くなったが、最近うれしかったことは?と聞かれたら、しばらくの間はこのエピソードを語ることにしようと思っている。
さて、私たちのバンド『未来からの留学生』は三宅町文化祭(11月2日)のステージにおいて、『正解』(ほか1曲)を演奏しますので、よかったら遊びにきてください。
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