![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145432170/rectangle_large_type_2_5516c86d807a3e8c0ec7fd0158516b51.jpg?width=1200)
やきもの(陶芸)の体力戦 3
前回の続き、「焼く」です。
今回は、窯焚きの後半戦。
「窯焚き」の後半戦
せめ~さまし
前回、作品の良しあしを決めるのは、
①温度
②炉内雰囲気
③時間
とお話しました。
前回のお話は「くゆし~あぶり」の窯焚きの前半戦。
ここからは、窯焚きの後半戦。
「せめ~さまし」は、クライマックス~フィナーレです。
窯焚きの時間での呼び方はイロイロありますが、
紫峰窯の呼び方で記載します。
*覚書は今回の記録です
せめ
釉薬をかけない無釉焼き締めの窯焚きは、この「せめ」の過程がクライマックス。
ザ・窯焚き!
皆さんが思い浮かべるイメージそのものです。
「せめ」では、ねらう色を出すために、ひたすら薪をくべゴールに向かって突き進むのみ。
釉薬によっては、酸化か還元かで色がかなり違ったりします。
例えば、織部です。
酸化だと緑、還元だと赤くなりますね。
焼き締めの場合は、土の性質で大きく異なります。
備前の土は、還元をかけて焼くと紫蘇~黒紫蘇色に発色します。
これが備前ならではの色とされています。
酸化気味だと茶色っぽく発色する気がします。
今回ねらうのは黒っぽい色。
薪窯では窯全体が同じになることはないので、還元がかかりやすいところに黒っぽい色にしたい器を配置したつもり…ですが、大丈夫だろうか。
1000℃から強還元状態にします。
この温度になると薪を入れた瞬間に発火し、見る見るうちに黒い燠になって窯の中に落ちていきます。
焚き口を開けた瞬間、見えない熱で顔がひりひりします。
気を付けないと眉がなくなる(笑)
焚口をあける→さっさと薪を放り込む→焚口を閉める
をひたすら繰り返します。
還元状態の窯は、パンパンに炉圧が上昇します。
なので窯のレンガの隙間から炎が立ちます。薪を入れると炎が上がり、ゆっくりと窯内に収まる。それを繰り返していきます。
窯が呼吸をしているようで、見ていてとても楽しいものです。
温度計より、炎の状態をひたすら観察し、薪をくべるタイミングを計ります。
還元状態にすると、温度の上りは悪くなり、なかなか1000℃の大台が遠い。
5~10分間隔でひたすら薪をくべていきいます。
薪は重いし、焚口は暑いし、バックファイヤーがきて危ないし、で薪と一緒に、気力と体力をひたすら燃やします。
せめが窯焚きのクライマックス。
作品に表情をつける大切な時間です。最終的な焼き上がりの質感や色合いに大きな影響を与えますので。
覚書:せめ
・あぶりねらしから一気に1000℃まで温度上昇
・1000℃から強還元
・バカ穴全アケ、ロストルシメ、ダンパ―アケ
・炉圧上昇によって開いた窯口のレンガの前にレンガを積んで空気の入りを遮断
・いつもより温度がするすると上昇
・還元30時間
・還元中に大雨。地面を伝って雨が窯内に入っているよう
・燠を混ぜると下の方が黒っぽ粉になっている
ねらし
せめが終るとねらしです。高温を維持して焚きます。
ねらしの目的は、
①釉を溶かすこと
②作品の強度を上げること
です。
無釉なのに釉?と思ったかもしれません。
無釉というのは、釉薬をかけないことです。
薪窯では、薪をくべるたびに空気の流れが発生し、火の流れができます。
燃えた薪が灰となり、その流れに乗って窯に中を動きます。
流れた灰は、作品にぶつかると表面に載ります。
この灰が溶けたものを自然釉といいます。
自然釉は窯神様の領分。どこにどれだけ乗せたかなんて教えてくれません。
ここは経験がものを言うところですね。
釉は1000℃~1100℃で溶けます。
1000℃でも長く焼けばおそらく溶けます。
溶けたかどうかを教えてくれるのが、色味ネコたちなのです。
還元をやめると酸化状態に戻し、もう一段温度を上昇させます。
ねらしは、作品に安定と、強度を与えます。そのために、高温で一定時間を保持する必要があります。
焼いて締める=焼き締め です。
ただし、土によっては耐火度が違いますので、それを判断しながらの焚きになります。
ねらし時間は強い子を育てる大事な時間。最高温度でキープなので体力がヒシヒシと燃え尽きていくのが分かります。
でも、ここまで来るとゴールが見えているので、疲れよりも変なテンションに。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145432296/picture_pc_49fdafe3dff3befdb4d00e2b053a67b7.png?width=1200)
覚書:ねらし
・酸化に戻す
・バカ穴全シメ、ロストルアケ、ダンパ―アケ
・焚口面のレンガを全撤去したら、温度が下がりすぎる
・焚口面のレンガを下半分までにして様子見
・18時間焼成
・1111~1170℃
・ねらし開始時に色味①、8H後に色味②、6H後に色味③、ねらし終了時に色味④
さまし
ようやく最後。
窯の温度を徐々に下げて作品を冷却していきます。
自然任せて冷却することもありますが、徐冷すると色に変化が出ます。
割れの発生を抑える意味もあります。
覚書:さまし
・今回は金属的な発色をねらうため、900℃まで急冷、その後、ねらし時間の1/3時間温度キープ、その後自然冷却とする
・この研究をみてから、どうしてもやりたかったことの一つ
今回で、やきものの体力戦は終了です。
長々とお付き合いありがとうございました。
いろいろ書きたいことがあるので、細々と書いていきます。
よろしければまたお会いしましょう!