E.T.とぞうきん
1969年生まれ/私の反省記④E.T.とぞうきん
中1の時に初めて友達と2人だけで映画を見に行った時の反省記。
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私は小学生のころ、よく映画やミュージカル、クラシックのコンサートに連れて行ってもらった。
おそらく最初に見た映画は「東映まんがまつり」だったと思う。ガンバの冒険や、フランダースの犬、魔女っ子メグちゃんなど、年に2回ほど楽しんでいた。
漫画以外はあまり映画を理解していなかったかもしれないが、親に連れられて、野生の証明、エレファントマン、キングコング、キタキツネ物語、名前をあげればキリがない。一番好きだったのはメアリーポピンズだったかな。
中1になり、友達と2人で映画に行くことが初めて許された。同じ団地の棟に住んでいたさっちゃんが、私の大事な友達だった。
2人でお正月休みに「E.T.」を渋谷まで見に行った。
席はどこも空いていなく、スクリーンの真ん前に座る事になり、首を思い切り上に向けながらスティーブンスピルバーグの映画を見た。
その当時、カールセーガンが「コスモス」という宇宙のことについて書いたハードブックを出しており、私はそれを夢中になって読んでいた。ブラックホールを思うと頭の中がぐちゃぐちゃになり気分が悪くなった。本気で宇宙を知りたかった。宇宙戦艦ヤマトが大好きだったし、コミケにも通うほどの宇宙オタクだった。
E.T.は最後に宇宙人と、人間との友情と愛が描かれており、私の心に響いた。響きすぎて涙が止まらなかった。E.T.のテーマが壮大で、劇中で流れてくると、その太い川のような曲調がますます私の心の奥のスイッチを押してくる。涙が止まらない。
ふと、隣のさっちゃんを意識すると、ジーッと斜め上を見ている彼女は泣いていない。そう見えた。
私は泣きすぎだ。恥ずかしい、、
いや、いやもしかしたらさっちゃんも泣いているかもしれない。確かめたとて、なんの役にも立たないだろうが、確かめたい。
彼女は泣いているのだろうか。。
E.T.どころではない。
変な事を思いついた。前にテレビドラマで見たように、泣いている人にそっとハンカチを彼女に渡してみよう。あの場面はとってもよかった。人が困っていたら、できることをしてあげるのが友達だ。
渡したハンカチに彼女が反応したら、たぶん涙を拭きたいと思うにちがいない。
私はバックの中にゴソゴソと手を突っ込み、中をまさぐった。あれ?これは、タオルだ。ハンカチじゃないけど、余計にいい!
私「(小声で)さっちゃん、はい。」
さっちゃん「(無言)」
すぐには涙を拭かなかったけれど、一瞬目元を拭ったさっちゃんは、私にそっとタオルを返してこう言った。
「これ、ぞうきんだよ」
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1984年1月5日 人に気を遣うのではなく、まずは自分の持ち物から。。反省。