大内彩︎加さんの裁判を傍聴して、悪夢で終わらせない為に

2024.10/28
大内彩加さん、谷賢一さんの公開裁判の傍聴に行ってきました。
あの場に居合わせた1人として、私の意見をここに書きたいと思います。

まず、私が今回の傍聴に行った経緯について書きます。
2年前の2022年12/15、大内さんのツイートで初めて谷さんの性加害を知りました。ツイートを見た瞬間頭が真っ白になり、思わず声が出たのを覚えています。

その1年前の2021年5月、私はDULL-COLORED POPの演劇学校(WS)に1ヶ月程通っており、谷さん、大内さんとも顔見知りになっていました。
当時、良くも悪くも演劇しか見えていなかった私は、高校卒業後はこんな劇団に入れたらいいなあなど呑気にWSを楽しんでいました。WS中の劇団の雰囲気はとても温かく、演劇を心から楽しめる空気だったからです。
なので当時大内さんが渦中にいたことにも本当に驚きました。
他人事ではありませんし私もハラスメントを受けた経験があるので、大内さんが戦う姿を見て現実を知ることで少しでも早く大きく、業界のハラスメントへの意識を変えたいと思い裁判傍聴に行きました。

法廷にて

尋問が進むに連れ、谷さんは証言の矛盾が増えていっていました。本人も事件当日の酒量が多い方が不利なのか少ない方が不利になるなのか、記憶を無くしたと貫く方が有利なのかこんがらがっていた印象。
当然傍聴しか出来ないが、立ち上がって問い詰めたくなるほど曖昧な答え。

「仮に下ネタが好きな女性がいて、肩に触れて嫌がられたらその場でも後日もちゃんと謝る」と主張していましたが、それが大内さんに適用されない理由は何?
「今まで女性出演者の身体を触ったことはあるが、大内さんの身体に自分から触ったことはない、でも家に行った時は抱きついた、それがセオリーだから。」
はい????????どこから突っ込めばいいのかもはや分かりませんでした。

"演出家としてどうしても権力が偏りがちであること、それを阻止するのは演出家本人ではなく劇団員であるべき"ということは意見するのに、自身がやったことの自覚を本人は脳内でどう処理していたのか本当に分からない。あまりにも矛盾していて。

キャンセルカルチャーについて言及していたが、それは彼が言える立場にいないと思う。
大内さんの告発を機に、7本ほど予定していた舞台が飛んだと被害者意識を持っているようだったが、ドミノ倒しの如く仕事が無くなるに相応する加害をしたという自覚がないから言えるのではないか。
確かに正義感の暴走とやらで、それぞれが判断するより先に、リスクがある対象を一斉に排除する現代の風潮は社会問題なのかもしれない。でも被告人である彼の口からそんな主張をされたところで、自覚がないんだなあとしか私は思えなかった。

そして被告側弁護人が息をするようにセカンドレイプに値するような発言をすることにも驚きが隠せなかった。どうして被害者にあんな言葉選びや態度で接することが出来るのか。今までの裁判で大内さんはこれに耐え、戦ってきたのか。唖然とした。
大内さん曰く、傍聴に来た9割の人が被告側弁護人の態度について言及していたみたい、そりゃそうだ。

"大内さんのパーソナリティに問題があるから男性と揉めるんじゃないか、女性に相談しなかったのは出し抜いたような気持ちがあったからじゃないか"、こんな的外れなことを本当に法廷で威圧的に言ってくるんですよ???

その他にも、レイプされた時の詳しい体制、何をされてどうなって、どうして相手がゴムを付けている瞬間に家の外に逃げなかったのかとか、聞かれてるんですよ目の前で。私はどうすることも出来ないからただただ悔しくて。
事件について何が起こったのか詳しく聞くのは避けられないことかもしれない、それでさえ辛いのにパーソナリティがなんだとか大内さんにも原因があるみたいな言い方をしていた。なんでそうなるの?悔しくて涙しか出なかった。
あの方がどのくらいこの事件に感情移入しているかは知らないけど、言葉選びは如何なものかと終始イライラした。

私は戯曲研究の授業の為に以前も裁判傍聴に行ったことがあるが(4.5年も前だけど)、今回の裁判ほど精神を削られたものは初めてだった。今までドラマや演劇で見てきた裁判シーンはなんだったのだと、これが現実だと突き付けられた。

大内さんは本当に強く気高い。自分が受けた被害なんて思い出すだけでも辛いのに、それを他人に事細かに話し、本人のいる空間で戦わないといけないのだから。
そして大内さんは最後まで苦しみながらも戦い続けていた。

こんな悪夢のような現実をただ傍観、傍聴したからには私は知って終わりにしたくない。
だからこうしてnoteに書いて少しでも多くの人に伝えられることを願います。

ハラスメントについて

この際と言ってはなんですが、女優の端くれの私でも今まで受けたハラスメントがあるので、ここに書きたいと思います。

・処女が聞かれる(高校時代はどこに行っても聞かれる事が当たり前だった)
・恥を捨てる為に下着姿になれと言われる
・いきなり丹田を触られる
・稽古中外に呼び出されて2人きりにされる
・お前を使うメリットは俺が合法的にJKと話せることくらいと言われる
・脚本に出てくる、下ネタを匂わせるようなとんちを現代語で詳しく説明しろと言われる
・ひねくれているのが顔つきに出てると言われる
・向こうが全体に対して下ネタを言う度に顔をチラチラ見られる
・友達になりたいから食事に行こうと何度も誘われる
・ディズニープリンセスに憧れてそうなお前は絶対自分で幸せを掴めないと言われる(憧れているなんて一言も言っていない)
・高校卒業後の一人暮らしの家賃生活費全部出すから留学取り消して劇団に所属しろと言われる

全て10歳以上離れた男性にされたことです。これは数年前のことですが、閉鎖的な稽古場には今でもハラスメントが蔓延っているだろうと私は思います。
未だにフラッシュバックしそうになって、頭を切り替えようと深呼吸します。当時の私は、稽古場に行く道中救急車を見ると、"このまま突っ込んだら運ばれて救急車の中で眠れるかな"と考えていたり、稽古後手足が痺れ過呼吸になったり、授業中自分の為に机があって教師が居て守られた空間にいることに安堵し涙が出たりしていました。相当まいっていたのだと今なら分かります。
そして、自分を傷付けてまでやらないといけないことなどこの世に1つもないのだと、地獄から抜け出した後にやっと気付きました。仕事でも恋愛でも友達でも家族でも、自分が傷付いているのを我慢してまで優先されるべきことなんて誓ってありません。
これが当時から生き抜いた私の信念です。

大内さんのように身体的被害を受けたわけではないですが、ハラスメントによって自分を責めてしまう気持ち、こんなに傷付いている自分がおかしいんじゃないかと誰にも言えなくなる気持ちは経験があります。レイプされた大内さんの心身的な傷は想像も出来ない辛さだろうということくらいは分かるつもりです。

谷さんは、作品に出たいと思ってくれていた大内さん本人も、谷さんの御家族も、関係者も観客も、なにより自分の作品をも裏切ったということを自覚してください。
私は谷さんの演劇が好きでした。

以下は大内さんにも直接お伝えした内容です。

【大内さんの行動は私含め、演劇を仕事にしたい・している女性の希望になっていますし、判決が出れば少しでも業界の在り方が変わってくれると信じています。大内さんはそのくらい大きなことを相手に戦っています。本当にありがとうございます。

私はどんなに死にたくなってもこの死にたささえもお芝居をする時の説得力に変わる日を夢見て今日も生きています。
そのくらいお芝居には絶望を希望に変える力があると思っています。
そんな力が大内さんに支えになっているのなら不幸中の幸いと言いますか、死なない選択をし続けてくれていることが同じ演劇をやっている身として嬉しく思います。

私も微力ながら、大内さんが安心して生きられるように出来ることはやっていきたいです。まだ私に何ができるのか分かりませんが、大内さんが法廷で加害者に立ち向かっているこの状況も、誰かの希望になっていると知っていて下さい。】


殴り書きになってしまって、感情的だったり文章が敬語が混ざったりなんだり駄文でしたが、ここまで読んでくださった方がいれば本当にありがとうございます。

私はこの先決して被害者にも加害者にもなることなく、"アクティブバイスタンダー"として発信していきたいです。

谷さんに、謝ることは無いと言われた時の間近で見た大内さんの表情は決して忘れません。彼女の悔しさや傷が少しでも癒える日が来ることを心から願います。

アクティブ・バイスタンダー (行動する傍観者)とは、ハラスメントや さまざまな暴力や差別が起きとき、 その場に居合わせた第三者が被害を軽減するために、状況に応じてできる行動をする人

https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00379895/3_79895_239085_up_2w6px26x.pdf

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