謝り方がわからない
目を覚ましてケータイを開くと、「ごめん、謝り方がわからない」と書かれた未送信のメッセージが表示された。ぼやけた意識でうちこんで、送らず眠ったらしい。そう、謝り方がわからない。
父の命日が近い。毎年誰かが言うのでそれで気が付く。
といっても彼そのものを忘れたわけでない。
むしろよく思い出している方だと思う。わたしは彼の外部メモリーのようなところがあったから、話された全てを覚えている。彼は愛あるメンターであり、迷惑な父であり、か弱い友であり、破天荒な先輩だった。
時々思い出す。そして思い出すことがなくなればたまに夢に現れて、癇癪をおこしたり死んだりする。
The Beatlesに「All My Loving」という曲がある。ポールらしい切なメロディに、初期っぽい元気なビートが組み合わさった曲だ。このナンバーは、ファンの間でジョン・レノンの驚異的なギタープレイが堪能できる一曲としても知られている。
具体的にいうとジョンはコードバッキングを高速三連符でストロークしている。(しかもサラリと)
手の振りがダウンアップを繰り返すので、三連符の頭の手の位置が毎回変わり弾くのが難しい。自分でこれをやろうと思ったんだろうから、ジョンは相当うまい。
父が亡くなる1年ほど前、「だんだん弾けるようになってきた」と言ってそのAll My Lovingの三連符を練習していた。
来月、偶然この曲を人前で弾くことになった。
こんどは自分が三連符を練習している。