#ドクトル樋口001/「生産性」というコトバは捨てちゃえ。
みなさんこんにちは。
『行動臨床マーケ専門 赤坂ビジネスクリニック』院長のドクトル樋口です。
毎回ビジネスでお悩みの患者様を、スッキリスバっと完治するお薬を処方していきますよ。
本日の患者様:日用品メーカー営業部マネージャー(42歳・男性)
「生産性」をいかに高めるか、というのがうちの会社の経営陣の最近の口癖です。どこぞやのビジコンに言われたんだとか。でも、「生産性」と言えば言うほど、現場の活気がなくなっていくというか、会社が強くなるという感じがまるでしないのです。私の気のせいでしょうか。
ドクトル樋口(以下D):それは気のせいではないですね。これね、「生産性」という言葉がよくない。そんな言葉はもう捨てちゃいましょう。
ナース(以下N):先生、マジですか。日本企業の弱点は「生産性」の低さだ、というのはいまや定説ですよ。テレビや雑誌で専門家がOECDのデータなんかを引用して語ってますよね。聞いたことあります?
D:もちろん知ってるよ。書店のビジネス書の棚を見ると、『生産性を上げる仕事術』『生産性を上げないと生き残れない』とか、そんな本ばっかりだ。“働き方改革”の旗印のもと、「生産性」という言葉がまるで印籠のようになっているよね。
N:でしょ? なんでその「生産性」という言葉を捨てなきゃいけないんですか。いい加減なこと言わないでください。
D:私は本気だよ。この『生産性』という言葉はけっこう曲者でね、特に『ホワイトカラーの生産性』と表現されるときに、どうも日本人の中にある種の誤解が生まれるようなんだ。生産性の語源は英語のProductivity。Productの派生語なので、どうしても『工業生産物,製品 』というイメージが付きまとうよね。平たく言えば、二次産業=製造業、工業、工場のイメージ。なので、日本で「生産性」アップという掛け声を上げると、それは高度経済成長時代のトヨタ他の自動車産業、マスプロダクトのオートメーション化による製造効率アップのイメージがどうしても付きまとう。これは例えば、シリコンバレーの研究所やラボにおいて、試行錯誤や創意工夫を繰り返して全く新しい価値や特許技術を生み出すというイメージ……とは全く対極だ。
N:たしかにそういうイメージはありますね。短時間で量をこなす…という感じ?
D:そうそう。いいこと言うじゃないか。効率よく量をこなすイメージが強くて、新しい価値や質の高いものを効果的に生み出すことのイメージは薄いよね。技術が成熟してオートメーションは全てAIやロボットで代替できる時代になると、「生産性」は、新しいものを生み出す、質を高める、変革を促すというようにシフトする。そうなると、日本語の『生産性』という言葉はどうも似つかわしくない。
N:コストダウンや労力削減・時短のイメージが強すぎますね。じゃあ、どうすればいいんですか。
D:本来の「質・価値の向上+新しい価値の創造+そのプロセスの効率化」を表せる言葉に、置き換えちゃえばいい。
N:そんな都合のいい言葉、ありますかね。
D:ちょっと試しにやってみようか。語感はちょっと変だが試しに創造性の語感に少し近い『創出性』や『創発性』という言葉に置き換えてみるのはどうかな。
N:全然違ってきますね、印象が。
D:もうひとつやってみようか。
N:これなら単純な時短やコストカットという感じにはならないですね。
D:まとめてみるとこんな感じかな。
N:なるほど。コトバって大事なんですね、先生。
D:そうなんだよ。コトバは安易に使うと祟るよ(笑)。
N:えー!こわーい。
……ということで、お薬出しておきますねー。お大事に。
ドクトル樋口の赤坂クリニックでは、あなたのビジネスのお悩み、お待ちしてます。どんどんお寄せくださいねー。ではまた次回!