“アウトレット化”するファッションモール。

オンラインモールがアウトレット化してるなぁ…と感じる。まあ、考えてみるとメルカリも”個人のアウトレット”だ。それがこれだけ受けているということは、なるべくしてそうなったのかな…とも思う。

ファッション業界には『消化率』という言葉がある。聞いたことのない人は何を消化するんだ?と感じるかもしれない。端的に言えば在庫(発注ロット)を消化するのだ。これは異業種の方から見ると不思議な概念だと思う。異業種では商品(品番)の需要曲線はある程度予測されていて、それに合致するようにサプライチェーンをコントロールすれば良いはずだからだ。

しかし、ファッション商品の場合、極端に言えば単品(品番)に適正な需要とか予測される需要というのは存在しない。これがアンダーウェアとかパンストとかであれば、ある程度確実な需要曲線があるだろう。しかし、コモディティ(生活必需商品)ではないファッションウェアは、業界トータルの消費量はある程度予測できるが、何が何着売れるかは実は全く予測できない。消費者側に、買うものが『これじゃなきゃいけない!』理由がないからだ。

そのシーズンにはいって気温の上下動があり、寒さや暑さやそしてその時々の生活シーンやイベントに対応すべく洋服を買う。かつては雑誌で紹介されているトレンドや新着商品が生活者の欲しいを喚起したけど、ベーシック商品が主軸となった昨今だと、別に昨年のキャリー品(持ち越し在庫)とかでも良いかもしれない。アパレルメーカーやセレクトショップも、昨年商品や一昨年商品を値下げしてネットで売ることに抵抗がなくなっている。

ファッションビジネスって、元々Wants(ウォンツ)を生み出すビジネスだった。今の時代で言うところのコト型・体験型・エンタメビジネスに近い世界だった。買うものは『モノでしかない』んだけど、そこに①新しい自分を投影して探索してゆく、外見によって自分とヒトとの関係を再定義してゆく、③自分の帰属をアピールする、③新しい自分をセルフプロデュースする……そんなジャンルだった。
キャリー品だとちょっとダメだった理由はそこにある。今の最新の自分をプロデュースしたかったからだ。あるいは変身願望というものかもしれない。

残念なんだけど、ファッション業界は、そんな服飾によるセルフプロデュースのやり方だったり、変身する魅力を普通の人に啓蒙してこなかった。それを熱心にやった…というかインフルエンサーが登場したのは、美容(コスメ)健康業界だ。
ファッション業界はシーズン期初(AW8~9月、SS2~3月)の商品をそのシーズンの新商品を定価で発売するが、半期末のセールでは最終は60%OFFとかまで値下げ(マークダウン)してその半期のうちに在庫を売り切ろうとする。しかし、そのメカニズムが奏功するのは、①そのシーズンの鮮度の高い(昨年とは決定的に違う)最新のモノを着たい!という顧客がたくさんいること、③それに見合う全く新しい新鮮な商品をアパレル側が提供すること……この二点がそろうことが条件だ。
このマーケティングサイクルをアパレル業界自らが壊してしまったし、斬新なデザインや機能を開発して着用シーンを啓蒙したり楽しみ方を伝授するような努力を怠った。
結果として期末の50%OFFとかは意味がない……元の定価が高すぎる…と見えるようになってしまい、定価販売が縮小した。そんなメカニズムだ。

ファッション業界はこれからどうなってゆくだろうか?このまま沈滞して市場規模が半分になったとしてもおかしくない。しかし、それはそれで一つの文化みたいなものを、生活者は失うことになる。
それを憂う人たちが僕以外にもどこからか現れるだろうか?