#512 デジタル化では、DXにならない理由
竹内義晴の「これからの働き方」――この番組は、これからの働き方、組織作り、地域づくりの実務家、竹内義晴が「楽しく働く」をテーマに、組織づくりやコミュニケーション、マーケティング、キャリアデザイン、複業、テレワーク、ワーケーションなどの視点でゆるゆるとお話をしていく番組です。
音声はこちら。
いま、DXについてお話をしています。
昨日は、DXとは何か? デジタル化との違いについてお話をしました。
今日は「デジタル化では、DXにならない理由」について、お話をしていきたいと思います。
DXは「変革」、デジタル化は「置き換え」
昨日もお話しした通り、「DX」は、デジタルの力を使って業務だったり、あるいはビジネスそのものを「変革していく」こと。トランスフォームしていくことだというお話をしました。
そして、「デジタル化」は、今までやっていた業務——たとえば、アナログの業務とか、口頭でやり取りとか、紙でのやり取りとか――を、デジタルに「置き換えること」だという話をしました。
今日の話は「デジタル化では、DX にならない理由」についてです。もっとも、ここまでの話で、すでに答えは出ているかもしれませんね。
デジタル化は、いままで行っていたことの、デジタルへの「置き換え」です。一方、 DXは「変革」すること。「変化」「変容」させることです。
DXは、「そもそもの部分を変えていく」ことですから、単に「デジタルに置き換えただけでは、DXにはならない」ということなんです。
「そもそも」を変化させるために必要なこと
では、「そもそもの部分を変革する、変化させていく」ためには、何が必要なのか? それは、いま行っている業務を、そもそものところから見直したり、あるいは、「そもそも、この業務って何のためにやっているんでしたっけ?」(必要ないなら、やめる)みたいなところから見ていく必要があるということ。
つまり、単にデジタルに置き換えただけでは何も変わらないので、DXをするためには、より本質的なところを見ていく必要がある。
そのためには、「これ、いままでは何気なくやっていたけれど、これって本当にいるんですかね?」みたいな議論をしたり、モヤモヤしているところをみんなで出し合ったり。そういったところから入っていくことによってはじめて、変容・変革が起きるということなんです。
「変革」は降ってこない
「変革」っていうと、なんだか突飛な、いままで何にもないところから「急にアイデアが降ってきて……」みたいなことも、もちろん変革なのかもしれません。
ただ、きっとこれをお読みのみなさんも、いままでの経験がそうだったように、アイデアって、そんなに急に降ってくるわけではないですよね?
「これ、なんでやっているんだろう?」「なんか、意味ないと思うんだけど」みたいなところに「変革の種」はあります。
ですから、実際に自分が感じたり、モヤモヤしてること。そういったことを言語化していくことの方が、やみくもに「アイデア、降ってこないかなー」「変革の種、降ってこないかなー」って期待しているよりも、断然いい……ということなんですよね。
デジタル化することによって、DXをする場合
昨日の話では、「デジタル化をすることによって、今まで見えていなかったものが見えてきて、その結果、DXになる」みたいな話もしました。
たとえば、いままでなにげなくやっていった作業について、作業のやり方を細かくログにとっていく。データ化していく。そうした取り組みの中で、「この作業、なんでこんなに時間がかかっているんだろう?」「ここだけ、なんで人によるばらつきがあるんだろう?」のように、改善点が見えてくる場合があります。
こうして見えてきたことをきっかけに、「そもそも」の部分に入っていく。このように、データ化、見える化することによって、変革を起こすことができる場合があります。
もし、このような形でDXに取り組むのであれば、単に「置き換える」だけではなく、最初から「もっと作業を効率化しよう」みたいな目的意識を持ったうえで、取り組むことが大切だと思います。
「デジタル化の罠」にはまらぬように
すこし話は変わります。これは、僕自身が心底思っていることなのですが、請求書や領収書のやりとり、めんどくさいな~と思っているんですよね。
「紙で送れ」「ハンコを押して、PDFにしてメールで送れ」みたいなことが結構あって。
PDFにした時点で、確かに「デジタル化」はされているのかもしれません。ですが、印刷して、手で書いて、印鑑を押して、PDFにして、メールで送る。「これって、デジタル化なのかな?」って。「かえって、手間が増えてないか?」って。
確かに、郵便で送るよりも、手間やお金は減っているかもしれません。ですが、デジタル化することで、かえって手間がかかってますよね? こういったところは気をつけたい部分です。PDFにするために、スキャナを用意しなければならない場合もありますし。
DXを考えるんだったら、「そもそも、この印鑑はいるのだろうか?」「そもそも、この書類は何のためのものなのだろうか?」「これ2度と見ないじゃないか?」みたいな、「そもそもの部分」を見ていくことが大切だよね……という話を、今日はしてみました。
というわけで、「デジタル化の罠」には、はまらないようにしたいものですね。
今日の話はこれで終わりにします。