#588 ベテラン世代は使えない存在?年齢の多様性と活気ある職場
竹内義晴の「これからの働き方」――この番組は、これからの働き方、組織作り、地域づくりの実務家、竹内義晴が「楽しく働く」をテーマに、組織づくりやコミュニケーション、マーケティング、キャリアデザイン、複業、テレワーク、ワーケーションなどの視点でゆるゆるとお話をしていく番組です。
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50代は使えない存在なのか?
今日は、「50代は使えない存在か?」という話をしてみたいと思います。なぜこのテーマかというと、先週、そういった話を耳にする機会が何度かあったからです。
1つ目のケースは、大手企業で人材開発を担当している方からの相談でした。その方が話していたのは、「ベテラン世代のキャリアをどう捉えるべきか?」ということでした。
もう1つは、ある地域での今後の方針について話している場面で出た話です。その中で、「どうやって早く退場してもらうか?」といった、ベテラン世代は使えないという意見が出てきたんです。
ベテラン世代への偏見?
その話を聞いて、「確かにそういう面もあるのかもしれない」と思う部分がありました。これまでの一般的な労働環境を振り返ると、50代半ばで役職定年、60歳~65歳で定年・再雇用というのが当たり前の流れでしたよね。
なぜこの流れができたのかを考えると、「年齢を重ねると身体能力や思考力が低下していく」という前提があったのではないでしょうか。つまり、ベテラン世代は若い世代に比べて能力が劣ると見なされていたのかもしれません。
こういった「ベテラン世代に対してどうやって引退させるか?」みたいな話を聞いて、正直モヤモヤしました。
モヤモヤする2つの理由
なぜ、モヤモヤしたのか? それは、次の2つの理由からです。
1つ目は、「ベテラン世代は使えない」という前提そのものが、果たして本当に正しいのか? という疑問です。もちろん、身体能力に関しては年齢とともに衰える部分はあるでしょう。しかし、思考能力や経験値、洞察力に関してはどうでしょうか? それらはむしろ年齢を重ねることで深まるのではないでしょうか。
2つ目の違和感は、そういう意見を言っている方々自身が50代に近い、あるいは同世代であることです。自分のことを棚に上げて、「ベテラン世代は使えない」と言っているのは、少し矛盾しているのではないかと感じました。もし自分自身が「もう使えないから退場してください」と言われたら、どう思うのでしょうか? おそらく嫌な気持ちになるのではないかと思います。
能力の低下は必然か?
もちろん、身体的な能力が低下することは避けられないでしょう。僕自身も、年齢を重ねるにつれて体力の衰えを感じることがあります。しかし、思考力や経験をもとにした判断力に関しては、年齢を重ねてもむしろ成長している部分があると感じます。
実際に、僕が尊敬している80代の方がいます。その方は非常に頭の回転が速く、的確な判断を下せる方です。こうした能力を持っている人が「使えない」と評価されるのは不合理ではないでしょうか。
石山恒貴さんの研究
ここで少し関連する話として、法政大学の石山恒貴さんの著書『定年前後の働き方』について触れたいと思います。
この本には、個人の幸福感に関する興味深いデータが記されています。
石山さんのご著書によると、個人の幸福感は40代後半で一度底を打ち、その後は年齢を重ねるごとに上昇していくといいます。
年齢を重ねると幸福感が上昇する理由
なぜ、年齢を重ねると幸福感が上がるのか? その理由として、周囲を観察していて思うのは……
50代というのは、ある程度社会人経験をしてきて、相応の結果を出してきた。また、プライベートでも子育てがある程度落ち着き、自分の時間を持てるようになった。
このような環境下で、少なくとも僕の周りには「いままでの経験を、後輩や社会のために生かせられないか」と思っている人が結構いる、ということなんです。
そういう人たちのことを、僕は、尊敬はしても「能力が低い」とは全く思わないんですよね。なので、「50代になると能力が下がる」みたいな論調は、ちょっとモヤモヤします。
年齢で一括りにしない働き方を
こういった、ベテラン世代のキャリアを考えているのは、人事なり、ある程度の立場の方だと思います。そこで考えてほしいのは「もし、あなたが、そういった扱いを受けたら嬉しいですか?」という話です。50代以降の「退場のさせ方」みたいな話をされたら、「嬉しいですか?」っていう話。
もちろん、ベテラン世代の一部には「もう働きたくないよ」と。「楽をしたいよ」と考えている方もいるでしょう。しかし、それは個人の価値観の違いであり、そうではない人たちもたくさんいるのではないでしょうか。
ある世代をまるっと一括りにして「ベテラン世代は使えない」とするのは、年齢の多様性という観点に立った時、僕は問題があるんじゃないかと思います。
多様性を尊重したキャリア設計を
これからの時代は、年齢や立場に関係なく、それぞれが自分の能力を発揮できる環境を整えることが大切なのではないかと思いますね。企業や組織がそのような環境を提供できれば、より多様で活気のある職場が実現できるのではないでしょうか。
というわけで、今日は「50代は使えない存在か?」というテーマでお話ししました。今日の話はこれで終わりにします
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