⑫「世界中のサンタが、日本に来てくれますように。」
これはTabioで仕事をしているときに実施した、東日本大震災が起きた2011年のクリスマスギフトの展開の話です。
その年の3月11日、東北大震災が起こりました。宮城県や岩手県にも「靴下屋」の店舗があったこともあり、私は東北自動車道が仮開通した3月20日にレンタルしたプリウスの荷台に支援物資と段ボール箱4つ分の靴下を詰め込んで東京支店の社員と私の二人で仙台に行きました。
テレビで見たような津波で削がれた海岸沿いの名取市。市役所に段ボールに入った靴下を届けた時に、疲れ切った職員の女性がうっすらと笑みを浮かべながら小声で言った「かわいい」の一言。今でも忘れられません。3月下旬、まだまだ宮城県は寒かったので、「靴下で足を温めてあげられたら。」というTabio社員や職人さんの想いが込められていました。
そんな3月~4月を過ごした後、5月に入って、クリスマスキャンペーンの企画打合せを東京のオフィスで行いました。
その際に、「今年のクリスマスは、どういう気分と空気なのか? 共感の連鎖が生まれるクリスマスってどういうものなのだろうか? そもそも、誰と一緒に、どのようなクリスマスをつくっていきたのだろうか?」ということを考えました。そして、たどり着いた結論は、東北大震災で心が動かされて何かした人、何かしたいと思った人と一緒に、東北大震災が起こった2011年のことを一生忘れないでいるためのクリスマスにしていくのが、職人が丁寧に編んでいる靴下を造り続けているTabioらしいのではないか。」という考えに至ったのです。
Tabioのブランディングでご一緒させていただいていた、クリエイティブディレクターの武藤雄一さん(武藤事務所)とアートディレクターの 安田由美子さん(アイルクリエイティブ)を中心としたクリエイティブチームによって生み出されたアウトプットがこちらです。
心ある人のほとんどが似たようなことを心のどこかで思っていたことを、このビジュアルとコピーがストレートに代弁したことで、共感の連鎖が一気に広がりました。「商品を買ってください」「いい商品ですよ」などということは一言も言っていません。それなのに、靴下をその年のクリスマスギフトに買ってくださるお客様が例年の数倍に増えたのでした。
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