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異端児sewerslvtと彼女が残した功罪(1)

Sewerslvtとは何者?

ただ鬱屈に、かつ過剰なまでにリバーブがかけられたシンセパッドの広い空間の中で延々となり続けるアーメンブレイク… といった言葉づかいで彼女の曲をうまく表現できているでしょうか?様々な内なる心の葛藤を経た「彼」は、ついに自分の女性性を認めトランス女性「sewerslvt(読み方:すーうぁーすらっと)」として名乗りを上げました。彼女の音楽活動はここに始まったものではなく、もともと"Sadboy Sheldon"という名義で主にマッシュアップを作っている人物でした。この時代の作風は必ずしも鬱々としてはしていませんし、いわばミーム音楽のようなものが多く最近ではあまり聴かれていません。しかしながら、2021年に最後のアルバムを出してネットから姿を消すころには彼女の人気は熱狂的なものに膨れ上がっていて、それはインターネット音楽の革新を約束するものであったと同時に、様々な遺恨を残してしまうものでもありました。要するに、彼女にはたくさんのファンがいますが、それだけアンチも多いというわけです。それには彼女が行った数々の問題行動に訳があるのですが、文化圏の違いのせいなのか、あまり日本には伝わってはいないようなので、彼女の本性をここで思い切って「暴いていく」というのがこの記事の主な目的となります、それもまずは彼女の名義そのものから…

”Sewerslvt”とは

直訳すると「下水の売女」みたいな意味になります。slvtというのはslutを婉曲的に表現する彼女の独特な綴りでcu*tのような放送禁止用語や下品な言葉に彼女は決まってuをvにするということをします(例:Pretty Cvnt)。なので読み方はsewerとslutを2単語そのまま続けて読む仕方で間違いありません。では「下水の売女」とは一体どういう意味でしょうか。これには彼女の別名義にヒントがあります…その名も”Jvnko”。ジュンコとはいったい何者なのか。この名前は他でもない古田順子さんの名前に因んで付けられたものです。
古田順子さんとは戦後の未成年犯罪の歴史でも悪名高い「女子高生コンクリート殺害事件」の被害者であり、彼女の受けた被害の内容からまさにsewerslvtという名義は生まれました。間違いなく炎上は避けられないネーミングセンスですが、おそらく名前を付けた本人は順子さんと自身を重ね合わせたつもりだったのでしょう….。彼女の名前のオマージュはこれだけに留まりません。2017年のアルバム"Don't Be Afraid of Dying"では全11曲の名前を縦読みすると"Junko Furuta"になるような工夫をみせます。
通称コンクリ事件は海外でも、主に日本の警察と法システムを問題視するような文脈でやり玉に挙げられる事件の一つですからそれなりに知名度があります。だからこそ、この彼女の非倫理的な行為に非難が集まらないわけがありません。この件に関して、彼女はのちにこう弁解しています。

(二段落目から)
気分を害する人がいるのも十分わかる。だけどそれは私のしたかったことでもあるの。悪趣味な見せ方ね、その苦しみの数々を思い出させるための。(中略)
悲しいけど後悔してることはたくさんある、けどそれはそれ。「ジュンコ」っていう名は生の苦しみとか残酷さよりも、それから立ち上がってそのまま花開くまで立ち続ける….そうやって回復していくことを意味する言葉になったの。

このようにインターネットで一世を風靡したアーティスト名には暗い背後が潜んでいるのがおわかりいただけたかと思います。これから挙げていく予定の数々の行動のせいで、この記事で紹介した件はあまり取沙汰されませんが、もちろんアンチに「sewerslvtの何が嫌い?」と聞いたら挙げられる一つの事件ではあります。



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