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注記の王様!セグメント注記について学ぶ。

こんにちは。
今週も大谷翔平選手のご活躍、すごいですね。
特に、2023年7月27日@デトロイトで行われたMLBダブルヘッダーは、エンゼルス6―0タイガース(大谷投手完封)、エンゼルス11―4タイガース(2回に37号2ラン、4回に38号ソロHR)は、確実にMLBの歴史に残ったのではないでしょうか。ちなみに、7月28日のタイガース戦第一打席も大谷選手はHRでしたので、3打席連続HRでした!

確実に、今、全世界のプロ野球選手全員が憧れている選手だと思います。
憧れるの、やめません!

さて、前置きはその辺にして、前回、会計基準を打線にするという試みをしてみたところ、思いの外反響がありましたので、今度は、勝手ながら、有報注記の打順を考えて見ました。
皆様が監督なら、たくさんある注記の中で、どの注記を何番にしますでしょうか。
自分は以下のようになりました。

1番、継続企業の前提に関する注記
2番、重要な会計上の見積り注記
3番、重要な会計方針(会計方針の変更含む)
4番、セグメント情報等の注記
5番、一株注記
6番、重要な後発事象に関する注記
7番、企業結合等関係に関する注記
8番、関連当事者取引の注記
9番、税効果会計に関する注記

注記って多いですね。
なんと、収益認識、金融商品、退職給付、賃貸借不動産、リース、SO、資産除去債務、減損注記、偶発債務注記等が選外となってしまいました。

今日は、自分の中で、注記の王様とも言える、「セグメント注記」、について、解説してみたいと思います。


セグメント注記が重要な理由

セグメント注記を4番(注記の王様)とした理由ですが、
セグメント注記だけは、四半期決算短信、四半期報告書、短信、有報すべてに出てくる注記であることが理由です。

また、決算説明資料や事業報告、業績予想もセグメント業績を中心に説明が組み立てられることが一般的となっています。

つまり、他の注記より、見る機会、情報として利用される機会が圧倒的に多いのですよね。

これまで、新会計基準が増えるたびに注記が増えてきた、という感じがありますが、注記の本来の役割とは、「財務諸表の読者に対して、財務諸表の理解可能性を高めるための情報」、ですよね。

この点では、セグメント注記があると、(連結)財務諸表の理解可能性が大幅に高まる効果があると考えられます。

例えば、連結PLを読む、業績を分析する際にも、連結財務諸表全体で分析するより、セグメント毎に業績の増減を毎四半期、比較したほうが、正確に理解することができます。

そして、それは、企業価値の判断、株価算定にまで、利用することが可能です。

さらに、セグメント会計は、管理会計にも出てきます(原価計算の名著、「原価計算六訂版 岡本清著」にも出てきますよね)。

中期経営計画、年度予算、月次予算の立案、そして、実績との比較(予算管理)、においてもセグメント別に検討できていたほうが、経営の意思決定や業績評価上は有用であると、考えられますし、
セグメント情報は、管理会計と財務会計の架け橋となるような存在でもあるわけです。

セグメント情報がとても重要な感じ、しますよね。

セグメント注記とは

セグメント情報等の開示に関する会計基準

セグメント注記には、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」及び「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」に従って作成されます。国際財務報告基準(IFRS)にもIFRS8号(事業セグメント)という会計基準があります。

セグメント注記の作られ方

以下のとおりです。
Step1事業セグメントを識別します。
Step2事業セグメントを報告セグメントに集約します。
Step3セグメント情報の開示項目を決めます。
Step4セグメント情報を測定します。
一つ一つ説明します。

Step1事業セグメントの識別

事業セグメントとは、セグメント情報等の開示に関する会計基準6項では、以下のように定義がされています。

「事業セグメント」とは、企業の構成単位で、次の要件のすべてに該当するものをいう。
(1)収益を稼得し、費用が発生する事業活動に関わるもの
(2)企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、また、その業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するもの
(3)分離された財務情報を入手できるもの

セグメント情報等の開示に関する会計基準6項

要は、会社には、部門別、製品群別、エリア別、店舗別といったの損益資料とかってあると思うのですが、事業セグメントとは、そのことです。

Step2報告セグメントへの集約

事業セグメントをそのまま注記として報告すると、大きな会社では、何十と何百ものセグメントになってしまったりして、細かすぎてかえって財務諸表の読者に誤解を与えてしまうことがあります。
よって、事業セグメントを報告セグメントに集約します。
ただし、ルールなく、自由に集約してしまうと、財務諸表読者の理解可能性を損ないますので、セグメント情報等の開示に関する会計基準で制限をかけています。

複数の事業セグメントが次の要件のすべてを満たす場合、企業は当該事業セグメントを一つの事業セグメントに集約することができる。
(1)当該事業セグメントを集約することが、セグメント情報を開示する基本原則と整合していること
(2)当該事業セグメントの経済的特徴が概ね類似していること
(3)当該事業セグメントの次のすべての要素が概ね類似していること
 ①製品及びサービスの内容
 ②製品の製造方法又は製造過程、サービスの提供方法
 ③製品及びサービスを販売する市場又は顧客の種類
 ④製品及びサービスの販売方法
 ⑤銀行、保険、公共事業等のような業種に特有の統制環境

セグメント情報等の開示に関する会計基準11項

経営上、セグメント情報の元となる情報はたくさんあるのですよね。
ただし、セグメント情報として利用するには、どうやってまとめるとよく伝わるか、「抽象度を適切な階層まで上げる」という発想が実務上は重要になります。

事業セグメントから報告セグメントへの集約

Step3セグメント情報の開示項目の決定

セグメント情報等の開示に関する会計基準に従って、開示項目が決まります。
なお、セグメント利益は、セグメント営業利益かも知れませんし、セグメント経常利益かも知れません。もしかしたら、セグメント当期純利益かもしれません。
何を開示項目とするかの選択は、企業の最高経営意思決定機関に対して定期的に提供され、業績を評価するための報告の中で使用されている情報と同一の情報が開示項目として採用されます(マネジメント・アプローチという考え方)

Step4セグメント情報の測定

企業の最高経営意思決定機関に対して定期的に提供され、業績を評価するための報告の中で使用されている情報を重視して開示しますので、)連結財務諸表と差異が生じることもあります。
その場合には、差異の調整についても注記で明示します。

まとめ

今回、セグメント注記は、「財務諸表の読者に対して、財務諸表の理解可能性を高めるための情報」として、非常に効果が高いと考えられる注記であり、かつ、企業の最高経営意思決定機関に対して定期的に提供され、業績を評価するための報告の中で使用されている情報と同一の情報が開示項目を公表するという考え方(マネジメント・アプローチという考え方)があるということを学びました。

セグメント注記を作成する上で、準拠が求められる会計基準(セグメント情報等の開示に関する会計基準)の中にも実は、工夫がされています。

なんと、セグメント会計基準は、注記作成の会計基準であるにも関わらず、この基準には基本原則が定められているのです。他の基準では基本原則というのは、ほとんど無いです(収益認識基準でちょっと出てくる)。
では、基本原則に、なんと書いてあるか、紹介しますね。

セグメント情報等の開示は、財務諸表利用者が企業の過去の業績を理解し、将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価できるように、企業が行う様々な事業活動の内容及びこれを行う経営環境に関して適切な情報を提供するものでなければならない。

セグメント情報等の開示に関する会計基準 第4項

本会計基準は、企業又はその特定の事業分野について、その事業活動の内容及びこれを行う経営環境を財務諸表利用者が理解する上で有用な情報を、本会計基準に定める事項に加えて開示することを妨げない。

セグメント情報等の開示に関する会計基準 第5項

なお、IFRS第8号(事業セグメント)でも同様の基本原則があります。
こちらのほうがよりシンプルでわかりやすいです。

企業が従事する事業活動、及び企業が事業を行っている経済環境の性質や財務的な影響を、財務諸表の利用者が評価できるように、企業は情報を開示しなければならない。

国際財務報告基準第8号 事業セグメント 基本原則 第1項

少しニュアンスが違うという点に、お気づきになられましたでしょうか。

ここからは、ものすごく私見なのですが、
なんとなく、ですが、日本の会計基準を採用する企業の方がセグメント注記の情報開示に消極的な企業がある印象があります。

やたら、「当社グループは、〇〇事業を展開する単一セグメントであるため、記載を省略しております。
という記載を見ることがあるわけです。

極めて大きな企業(時価総額10兆円以上あるような日本の資本市場を代表する銘柄企業)でも、単一セグメントであります、
って開示されていたりもして、取締役会や経営会議ではどうやって、業績評価してるの?どうやって予算をたててるの?どうやって予算管理をしているの?と、わけがわからなくなります。

議事録レビューなどして、監査証明を出している、監査法人もこのような、単一セグメントであります、って記載されている注記記載をどう判断しているのかも、はっきり言ってよく分からないです。

IFRS採用企業は、セグメント別の開示はしっかりされている印象なのですが、この日本の会計基準採用企業とIFRS採用企業のセグメント情報に対する開示スタンスに対する差は、基本原則のニュアンスの差によるものではないか、と私は思っています。

セグメント情報なんて、企業側の手間も増えるし、各企業に任せればよいじゃないか、というご意見もあるかもしれません。

しかしながら、海外含む数多くの投資家から、
日本の会計基準を採用している企業は、セグメント注記等を積極的に開示しない傾向にあるから、日本の会計基準を採用している企業には、一定のリスクプレミアムを要求すると投資家から判断されたら、どうなるでしょうか。

それだけは、絶対に避けなければなりません。

なので、結論としては、日本のセグメント会計基準においても、基本原則は、IFRS8号の第1項をそのまま取り込めばよいのではないでしょうか。

はい。最後は、IFRSと日本のセグメント会計基準の基本原則の話になってしまいましたが、以上が、「注記の王様!セグメント注記について学ぶ。」でした。

いかがでしたでしょうか。

なお、最近暑いので、よくアイス「チョコモナカジャンボ」を買って家で食べたりしているわけなのですが、パキッと割る感覚がセグメント注記の作成過程に似てるなぁ、
なんか、割ったりくっつけたりする感覚を説明するような、セグメント注記の作成過程についてnote書きたいなぁと、軽い気持ちで思ったのがきっかけでした。

長文となり、途中ものすごく後悔しました。
実は、1)事例分析とか、2)全社費用について気をなければならない、とか、3)費用配賦計算についてもっと監査したら、とか、4)セグメント予算の効率的な立て方、とか、5)減損会計(グルーピング)とセグメント会計の関係、などなど、まだまだセグメント会計についてもっともっと書きたいことはたくさんあるのですが、長すぎるのも嫌なので、今日はここまでにします。

もしかしたら、今度はパピコをパキッと割ったときに、改めてセグメント会計ネタでnoteを書こうと思うかもしれません(笑)。

いつも、なんとなく見ているセグメント注記に対する見方が、少しでも変わったり、親しみを感じていただける記事となっていましたら、望外の喜びでございます。

では、また!夏バテには十分お気をつけくださいませ!
明日も、全員で大谷選手を応援しましょう!


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