前後を切断せよ! そして、誰も立ち入らせない。

ある本で、

「物理学者は、時間という言葉を使わない」

というフレーズを読んだとき、なんだか頭がグラグラしたものでした。

また、「時間が過去から未来へと流れている証拠は、何ひとつない」とも聞いたことがあります。

よく「今、ここに生きる」という言い回しを耳にすることもありますが、きっと、その場所とは、時間がないところなのだと思えてきます。

かつて夏目漱石がイギリス留学時、底知れぬ孤独と鬱病にさいなまれていたとき、自らに向かって、

「前後を切断せよ」

と言って精神を保っていたそうですが、面倒なことはたいがい過去や未来にあるもので、そのあるかどうかもわからないものを切り捨てる瞬間には、ものすごい巨大で人間的な安らぎが控えているのかもしれません。

時間から解放されること、ある意味、哲学的ではあるのですが、かなり効果の高いセラピーであると思うわけです。

※   ※   ※

ベストセラーの『嫌われる勇気』で一躍知られるようになったアドラー心理学ですが、今読んでも、一時の流行りに左右されない真理を突いた理論だなと思うところで、支持されただけの理由がとても明確です。

かいつまんで説明させていただくと、あらゆる悩みは、人間関係にまつわるものであり、その悩みを解決させる方法とは、

「自分の課題と、他者の課題を分離させる」

というもの。

たとえば、会社内で後輩に見下されていることで悩んでいる人がいるとします。

アドラー心理学では、人を見下しているのはその後輩の課題であり、悩んでいる本人とは関係ない、という地点から解決への道を進めていきます。

誰も、他人の課題(や問題)に立ち入ることはできない。

逆に、自分の課題には、誰も立ち入らせない。

人を変えることはできないけれど、他人からの影響を減らせば、自分を変えることは簡単なのです。

人間関係の課題や問題のほとんどが、他者への過干渉が根っこにある気がします。

アドラー心理学を取り入れて、友人がめっきり減って‥‥、という人もいるらしいですが、それこそ、自分を変化させた兆候かもしれません。素晴らしい!

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