その「さ」は、要るの、要らないの? よく分からな「さ」過ぎる「さ入れ言葉」
「見れる」や「来れる」などの「ら抜き言葉」が「ら」が足りない言葉であるのに対して、逆に余分な「さ」が入っているのが「さ入れ言葉」ですね。
たとえば「後ほどメールを送らさせていただきます」や「お先に帰らさせていただきます」、「レポートを読まさせていただきます」などが「さ入れ言葉」です。
ちなみに、ATOKでは「ら抜き言葉」も「さ入れ言葉」も、きちんと注意が表示されますので、なかなかに優秀ですよ。
で、まず、先ほどの「さ入れ言葉」の例を正しく表記すると、いずれも「さ」が不要で、「後ほどメールを送らせていただきます」や「お先に帰らせていただきます」、「レポートを読ませていただきます」となります。
ところがぁっ!
紛らわしい表現がありました。
「ら抜き言葉」で活躍した「見る」です。
「見る」の場合は「見させていただきます」とか「見させない」と「さ」が入るのですよぉぉぉぉ!
もう一つ紛らわしいのが、「根性がなさすぎる」や「しらなさすぎる」、「思いやりがなさすぎる」、「常識がなさ過ぎる」などは「さ」が必要なのです。
なんだ、これは?
で、これらの使い分けの種明かしには、どうしても文法の力を借りなければなりません。
難しいなぁ~。
まず、「さ」を入れてはいけなかった「送らせる」「帰らせる」「読ませる」「造らせる」などは、五段活用の動詞です。
五段活用とは、「あ、い、う、え、お」の五段で活用する動詞ですね。例えば「送る」なら、「送らない(あ)」「送ります(い)」「送る(う)」「送るとき(う)」「送れば(え)」「送れ(え)」「送ろう(お)」ですね。
この五段活用に「使役の助動詞」を付ける場合は、未然形に「せる」を付けることになっています。
ところが「見る」は上一段活用です。
上一段活用とは、五段活用が「あ、い、う、え、お」の五段で活用したのに対し、上一段活用は「い」だけで活用する動詞です。
活用させてみましょう。「見ない」「見ます」「見る」「見れば」「見ろ」ですね。
他にも「居る」や「着る」「起きる」なども上一段です。「起きる」「起きます」「起きる」「起きれば」「起きろ」ってね。
で、上一段活用に「使役の助動詞」を付ける場合には未然形に「させる」が付くんですな、これが。
ですから「見させる」「居させる」「着させる」はOKなのです。
しかしもう一つのタイプの「根性がなさすぎる」や「しらなさすぎる」、「思いやりがなさすぎる」、「常識がなさ過ぎる」はさらに文法上の解釈が異なります。
これらはある状態の度が過ぎることを表しているので、実は形容詞「ない」に接尾語の「さ」が付いて、そこに動詞の「過ぎる」が付いていたのですね。
つまり、「根性が、な、さ、過ぎる」だったのです。使役の助動詞ではありませんでした、テヘっ。
それにしても、日本語って難しい。